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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
一葉落ちて天下の秋を知る

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ひそむのは(2)

 スナイプフランカーをアンロックして筒先を振るルオー。しかしながら、戦列を揃えたままの敵部隊はここが緩そうだというスポットを見せてくれない。


(まさか敗退させられるとは思ってなかったから、今度は締めてきたねぇ)

 全体的に緊張感が漂っている。


「どう見る、ルオー君?」

 記章の付いたルイーゾンが寄せてきた。

「手堅いです、タリオン様。もう少し油断してもらいたいものです」

「君が決定打を喰らわしたからだろう? 一気に五分に近い状態に持ち込まれるとは思ってなかったはず」

「そう言われましても、戦力差が歴然なまま正面からやり合いません。負けに来たつもりじゃないです」


 そのルイーゾンのパイロットはタリオン・ロワウスである。ミアンドラの一番上の兄で、ゲムデクスの第一戦闘隊長でもある。中心に位置する旗艦の部隊が彼の後ろに控えていた。


「仕方ないのでブレイクショットを入れますか。コスパ悪いんですけど」

 スナイプフランカーをロックして背中のスクイーズブレイザーに手を伸ばす。

「崩してくれればいい。頼まれてくれたまえ」

「噛みつかないと両翼の歴々がうるさそうですし」

「心配せずとも切り崩してみせよう。君が流してくれたリフレクタカラマイダの戦闘データを皆が目を皿にして見入っていた」


 砲身が伸長してチャージが始まると専用照星(レティクル)がコクピットのモニタに点灯する。機体システムのアナウンスとともにレティクルの色が変わった。

 敵戦列(ライン)の真ん中を照準。前面は全てカラマイダのリフレクタが埋め尽くしているのでスクイーズブレイザーでも通らないのは撃つ前からわかっている。なのでコスパが悪いと言ったのだ。


「効いてくんないかね」

「偶然に頼るしかないです」


 細く伸びた高収束(スクイーズ)ショットは先頭のカラマイダのリフレクタに命中する。敵機は反動で大質量をぶつけられたかと思えるほどに弾け飛ぶが、ビームも紫色の派手な干渉光を閃かせただけで拡散してしまった。

 ただし、スクイーズブレイザーに含まれるラジカル分子や質量弾体成分が消えるでもない。その横にいた機体は真横からプラズマや蒸発した弾液(リキッド)を浴びる。部品を吹き飛ばされて大破した。運悪く、部品が突き刺さった敵機もいるが誘爆には至らない。


「この程度です」

「十分だろう。固まってもいられなくなる」

 タリオンは満足そうだ。


 スクイーズブレイザーキャノンはチャージタイムに入っている。照星(レティクル)内部にカウントダウン表示が現れた。少なくなる数字を踏まえつつ次に照準を移す。

 密集陣形の問題に気づいた敵陣は離隔距離を取りはじめる。結果として全体が膨張したかのように見えた。並行して行われた応射は友軍を脅かすに足りない精度でしかない。


「無駄弾って嫌いなんですよね」

「あん、いけんのか?」

 右手のスクイーズブレイザーに併せ、左手にスナイプフランカーを握らせたクアン・ザを見てパトリックが言う。


 反動調整を強めに掛けてスクイーズブレイザーを放つ。結果はさっきと変わらない。しかし、弾き飛ばされてロールするカラマイダにルオーはフランカーショットを命中させて爆散。


「できんじゃん」

「一遍に何度もは無理です。右腕、軋んでます」

 負荷が感覚としてフィードバックされている。


 同じことをもう二度くり返して終わりにする。スクイーズブレイザーキャノンに新しい弾倉(カートリッジ)を装填して格納した。常にどんな場面にも対応できるようにしておくのはガンシューターの基本である。

 そのタイミングになると自陣も前進を開始している。通りすがりに「グッジョブ」の声を掛けながら抜かしていく友軍機を見送る。ゆったりとスナイプフランカーでの援護準備を整えながらフィンアームを操作してクアン・ザも加速させた。


(地味な立ち上がり。消極的になるほど数的不利はないのに。なにを狙ってる?)


 厄介な味方も気になるが、危険な敵も無視できない。ゼオルダイゼはエース級を軌道艦隊に配置しているはず。


(食いついてくれればやりやすい。そのためのライジングサン)


 パトリックのベルトルデやゼフィーリアのヘヴィーファングは目立つカラーリングをしている。だから、最前列に持ってきた。敵トップエースが彼らこそ要と狙ってきてくれれば僚機を援護する、いつものフォーメーションでいい。


「速い。来るよ、ゼフィちゃん」

「ええ、見えてる」


 クアン・ザからも一際猛スピードで飛び出してくる敵機を確認する。カラマイダだが、リフレクタタイプではない。しかし、ベース機でもなく、背中の重力波(グラビティ)フィンが増設されているように見える。


「一閃のビクトル」

 白いカラーの敵機を見てパトリックが二つ名を呼ぶ。

「あんなのもいるんですね」

「バリエーション豊富じゃん」

「きっと、そういう設計思想なのよ、元々」

 ゼフィーリアが締めくくる。


 それだけならばまだ余裕があった。しかし、世の中そんなに甘くないらしい。


「ゾル・カーン。バラーダブラザーズも来るかしら」

 美女はため息混じりになっている。

「奴らもいたの忘れてたぜ」

「ビクトルを頼まれてくれるか? バラーダの二人には我らで当たろう」

「タリオン様が?」

 申し出がありがたい。

「私もいる。危険な敵を全部背負おうとするな」

「エスメリア様もいましたか。では、こちらの担当を確実に」


 ルオーはビクトル撃破に集中して構わないようだった。

次回『ひそむのは(3)』 「貴官は違うか?」

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更新有り難うございます。 実は相手も粒揃い。
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