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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
一葉落ちて天下の秋を知る

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野火の狭間に(2)

「以前に、誰も得をしない戦争はないって言いましたよね? だから、ずっと考えてたんです。この戦争で誰が得をするのか」

 ルオーは前置きする。

「ストレートにいけば兵器産業だな。だが、今回の特需に関してはキャパオーバーは明白だ」

「そのとおりです。重力波(グラビティ)フィン搭載機にイオン駆動機、新たな波が訪れています。星間銀河の各国は戦争なんかなくとも機体更新に躍起です」

「わざわざ煽る必要もないな。だから、黒幕はそこにいないってか」

 パトリックが結論を先に出す。

「その証拠に、大手メーカーは売り込みに入ってきてません。なので、各国は自国生産で賄っている状況です」

「ままならん部分を強いて挙げるとすればイオンスリーブか。そっちも星間管理局に大枚はたいてでもライセンス購入して、国家事業として生産に踏み切ってるもんな」

「そうでなければ、勝敗に直結してしまう機体更新が間に合いません。ゆえに、アームドスキン産業界は除外できます」


 彼自身も推論を消去法で組み立てていった。それをおさらいしている格好である。


「真っ当にいくとゼオルダイゼの親分が権力欲に駆られてっていう子供向けコンテンツ的な発想になるんだが、それも正直ないなと思ってる」

 色男も政治のこととなると素地がある。

「そうなんです。言い方は悪いですが、覇権を競おうと踏み出すにはルビアーノ・デルウォークはあまりに小物です」

「小物がゆえの暴挙ってのもありがちだが、それだったらこんな有り様になる前に破綻してる。どこの為政者もそこまで間抜けじゃない。隙あらば、すぐに足をさらいにいく」

「彼に意外と胆力があったってのはないかしら?」

 ゼフィーリアが前提に疑問を挟む。

「それなら話はシンプルだったんですけどね。どうにもお粗末です」

「考えられなくて?」

「真剣に覇を唱えようというなら、絶対に選んではならない選択肢を拾いに行ってます。典型的な例がガンゴスリ挑発です」


 ゼオルダイゼ同盟を確固たるものにしようと思うなら宙区をまたいでの拡大はまだまだ時期尚早である。それなのにルビアーノは土壇場で意地を見せたと説明する。


「その決断の裏にあるのはなんなのでしょう。僕は、いざとなれば黒幕のサポートがあるからとルビアーノが打算を働かせたからだと思ってます」

 皮算用なのではないかと考えた。

「これまでもなんらかの関与があった。ゼオルダイゼ同盟を拡大させればオイナッセン宙区の派遣を握れると囁かれたのかもしれません。実質的な力添えもあったとしたら、彼が勘違いの度を深めたとしてもおかしくないんじゃないです?」

「確かにな。ありゃ、自分の器をわきまえず、上昇志向だけを肥大させるタイプだもんな」

「ところが、ハシゴを外された状態です。一番困惑しているのはルビアーノな気もしてます」

 困惑しつつももう止まれないくらい加速している。

「ハシゴを外されたっていうより、君の横槍のほうが強力だったって思考には至らないのかしら?」

「僕のしたことなんて大したものじゃ……、いえ、多少は影響があったのも否定しません」

「素直でよろしい」


 ゼフィーリアの視線の圧力に負けてしまった。美女の迫力というのは、ルオーのそれなんかよりよほど影響力があると舌を巻く。


「あと挙げるならば、不自然な技術流入です」

 ビビりつつも連ねる。

「現実として新技術が星間銀河圏を席巻しつつあるのは事実ですが、なによりオイナッセン宙区やパルミット宙区は十分に辺境に位置します。メルケーシンのクロスファイトを起点にした新技術がここまで届くにはまだ時間が掛かったはずなんです」

「まあ、情報平均化の現代でも距離にはまだ意味があるな。まず、有名どころのアームドスキンメーカーなんかは全然中央に集中してる。輸送コストを割かなくても近場に市場があるうちは積極的な投資はしないな」

「そんな中での技術更新です。そんなのは、こんな突発的な紛争地帯でなく、常在的な紛争地帯で起こるものです」

 ゼフィーリアの視線が再び鋭さを増したが続ける。

「常在的な戦場って、お前、この周辺でいえばベスティア宙区しかないじゃん」

「ええ、紛れもなく」

「だがよ……」


 技術革新や更新拡大はどうしても戦場付近が進みやすい。データ量が桁違いなので当然である。当事者も積極的に取り入れようとする。

 そして、ベスティア宙区は星間銀河圏外縁宙域に当たる。いわゆる『ベスティア外縁』という宙域だ。そこには星間銀河圏と同じ始祖人類から発展しながら、星間管理局の統制を良しとしなかった文明圏が小規模ながら存在し、小競り合いをくり返している。


(オンマ)が危ないって言ったとこぉ?」

 レジット薬局が店舗を置かなかった宙区でもある。

「あそこは少し前のオイナッセン宙区以上に強権がまかり通る場所でしたからね。管理局もある程度は見過ごさざるを得ない環境でもありますし」

「お前の言うとおり、あそこなら兎にも角にも重力波(グラビティ)フィンだのイオン駆動機だのは可及的速やかに導入したがるな。すぐにフィードバックも利くんじゃね?」

「応用能力も高いでしょう」

 メーカーも率先して投入したがる傾向にある。


 ルオーはそこに危険性を垣間見ていた。

次回『野火の狭間に(3)』 「情けないことながら」

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 ⋯⋯アレ? 意外と得する組織が少ないの?
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