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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
捨てる神あれば拾う神あり

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恩讐の道(1)

 一直線に飛んでくる戦闘艇ライジングサンをゼオルダイゼの軌道部隊左翼戦列は迎撃する余裕はない。ガンゴスリ部隊の猛攻を受けているからだ。


「……迎撃しな!」

 一瞬迷ってイルメアは指示する。


 距離のあるうちは無駄だからだ。小さいとはいえ戦闘艇は防御フィールドを備えている。遠距離からのビームでは効果がない。十分に引き付けてフィールド内に入れば丸裸も同然だが。


「このスピード!」


 機動力でアームドスキンと五分、直進速度だけなら勝っているかに見える。取り付く行為そのものが難しいように感じた。


(進路上に入り込んで撃沈する)


 撥ねられるくらいの度胸で突っ込めば一撃は入れられるだろう。それを何機かでやれば沈められる。


「げぇっ!」

「こんなの!」


 装甲が開き、ライジングサンの樽型の艦砲が顔を出す。一基に四つの切れ込みが入っており、そこからビームが放たれた。その艦砲が左右と船底(ボトム)斜め下に二基、合計四基で弾幕を張ってくる。しかも、全てがスナイピングビームだった。


「んがががっ!」

「耐えられるか!」


 カラマイダがアタッチメントで前面全体にリフレクタを展開して前に出ようとしても表面を叩かれて押し戻される。とても、スナイピングショットの密度ではない。さらには照準精度も比較にならないもの。


(まさか、これ、あいつが全部コントロールしてるんじゃないよね)


 イルメアは反動で跳ねる機体が姿勢を崩さないよう抑えるので精一杯だった。


   ◇      ◇      ◇


 二段目、要塞所属のリフレクタカラマイダが進路を妨害する動きを見せたがライジングサンのビームで叩いて押し込む。おそらく、中にイルメア・ホーシーが混ざっているはず。今は彼女に関わっていられない。


(この状態を長時間維持したくないなぁ。ほぼ、ぶっつけ本番の試行だから、クゥにどれだけの負荷掛かってるか確認できてないからねぇ)

 ルオーは動き出す敵機をモグラ叩きの要領で押し下げている。


「つらくないです?」

「だいじょうびぃ」

「問題なさそうですね」


 操舵室(ステアハウス)のクーファは余裕がある。ティムニがレジット人(レジトリアン)の体解析をして、脳構造の小さな違いから処理能力は人類種(サピエンテクス)より格段高いと評価されている。


(話だと、レジット人(レジトリアン)の元となるラギータ種はティムニたちの創造主であるネローメ種と道祖。かなり能力の高い人類だったみたいだし)


 いきなり特殊感覚を丸ごと飲み込んでも平気とは恐れ入る。彼でさえ、自身の能力に気づいて使いこなすに至るには、頭痛に悩む時期を越えてのことだというのに。


「もう抜けます。少し耐えてください」

「ルオと一緒で嬉しいからいいのぉ」


 阻止しようと努力していた要塞所属部隊も妨害できないまま眼下を行き過ぎる。最後はライジングサンの八基全三十二門のスナイピングビームで弾かれて上がれないままだった。中には姿勢を崩して、そのまま弾幕に飲み込まれて爆散した機体もいる。


「十分です。感覚共有はカットして普通のリンクに」

「一つになって気持ちよくなってきたとこぉ」

 表現を間違わないでほしい。

「お前ら、イチャついてるんじゃない。こっからが本命だろ」

「いいです? このスピードのまま放り出されますからね。ベクトル間違うとロウザンガラクに衝突です」

「なかなかにヘビーかしら」


 搭載の三機は巡航速度のまま発進する。要塞に真正面から突っ込むコースだ。放出後、即座に転進しないと分厚い装甲板にアームドスキンでキスすることになる。


「同時に行ってぇ」

「パットの下品な発言が感染ってるじゃないですか。クゥは上ですからね」

「はいなのぉ」


 左舷に放出されたベルトルデとヘヴィーファングが左に転身旋回する。ライジングサンは船首を上げて上昇に転じた。クアン・ザは最大減速でロウザンガラク表面に向かう。


「おおお、こいつはクるな」

「痺れ……るわ……ね」

 それぞれが旋回慣性力()で押しつぶされている。

「っくぅ」

「なあにぃ?」

「ただの……悲鳴です。君は……大丈夫です?」


 船体内は反重力端子(グラビノッツ)重力端子(グラビッツ)が複層に効いているので猫耳娘に問題は出ていないのだろう。対してアームドスキンはあまりパイロットに優しくできていない。無駄を削ぎ落とした構造になっているので仕方がない点だ。


「離れて警戒しててください」

 息を整えながらお願いしておく。

「取り付きます。出番ですよ、ティムニ」

『はいはーい』

「有線接続アンカー」


 非常用のワイヤーアンカーは全てのアームドスキンに装備されている。通信も可能なものだ。それをロウザンガラクの装甲板に発射した。マグネットキャッチがピッタリと張り付き、回線状態のチェックが始まる。


『回線スキャン開始ぃー』

 要塞のベクトル制御系に直接アクセスしないといけない。

「これだけ苦労したんですからハズレはやめてほしいもんです」

『必ずあるはずー。任せてー』


 ベクトル制御するには外部情報も必須になるとティムニは主張する。制御システムそのものは通信によるアクセスが不可能でも、装甲面に配置されているセンサー類に繋がっている部分は露出しているのだそうだ。そのラインから入って電子攻撃をするのだ。


(さて、僕はとにかくこの状態を維持できればいいわけですが)


 取り付いた敵機を排除に掛かってくるだろう。それを動かず迎撃しなくてはならない。


 ルオーは周囲に目を光らせた。

次回『恩讐の道(2)』 「君もそこまで万能ではないでしょうし」

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更新有り難うございます。 ⋯⋯クゥ最強だった!?
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