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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
捨てる神あれば拾う神あり

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きざはし踏むは(4)

 ミッションブリーフィングまであと十五分というタイミングでライジングサンメンバーが作戦室にやってくる。いつもの四人なのだが、クーファは違う雰囲気なのにミアンドラは気がついた。


「どうしたの、それ?」

「ティムニに作ってもらったぁ」


 大きなキツネ耳が前向きから横向きにと変わったり、前に少し寝たりする。なかなかに凝ったアクセサリなのかと思ったら、どうもσ(シグマ)・ルーンの一部である様子だ。


「おかしなの」

「なんでぇ。可愛いでしょぉ?」


 隣に腰掛けると自慢げに見せてくる。意識スイッチで自在に動かせるのはσ・ルーンなのだから普通だとしても、全体に妙に凝った構造をしている。


「今からパイロットでも目指す?」

「ううん、どっちかっていったらナビかなぁ」


 どうやら、一応は意味のあるものらしい。新しい装具(ギア)でひとしきり盛り上がった。わりと器用に動くので、予想外に面白いし可愛い。


(本当は落ち着いてる場合じゃないんだけど)


 彼女とて作戦の失敗に頭を悩ませていなくてはならない折りである。そうなってないのは、作戦中止の判断をした時点でルオーから方針転換でなく再チャレンジが提示されていたからである。その作戦をこれから打ち合わせるのだ。


「脳波連動型のオモチャって昔っからあるけど、σ・ルーンに組み込むとかなかなかに酔狂で笑えるじゃん」

「確かに愉快ですな」

 パトリックが弄り倒してるのをソギド艦長は父親のような目で見ている。


 艦長にも事前にルオーの意思は伝えてあった。ルオーの有能さに開戦当初から触れてきた彼を説得する必要はないので話が早い。


「で、どうするの、ルオー? やっぱり工作班を組織して部隊化する?」

「いえ、大筋はほとんど変えないんです。より先鋭化しようと思ってまして」

「先鋭化?」

「あの特殊なカラマイダにはまいりました。あとで皆と一緒に説明します」


 眠そうなだけで特に困っている様子はない。作戦中には珍しく焦った様子が感じられたが、いつまでも引っ張るタイプでもない。


「それじゃ、始めるね」

 時間になったのでオンラインブリーフィングの仮想会議室に接続する。

「全員いる? 時間どおりね。ありがとう」

「ヘレン副司令、お願いいたします」

「ええ。では、ブリーフィングを始めます」


 メンバーは変わらずだ。それぞれの艦隊の司令官とウクエリ、デトロ・ゴースの両軍監、傭兵(ソルジャーズ)のリーダーのバロムと取り巻きの二人。プラスして軍事コーディネータのライジングサンメンバー。


「よく面出せたもんだな。早々にケツ捲った民間軍事会社(PMSC)風情が」

 取り巻きのバッチナ・ドルマンが訳知り顔でいきなり挑発してくる。

「てめぇが偉そうに、英雄バロム様に小間使いみたいな陽動なんてさせるから失敗したんだろ? 頭下げて頼めよ。『突入するするにはバロム様のお力が必要です。申し訳ありませんでした』ってな」

「そうよそうよ」

「下げてもいいですけど、もし謝罪して頼めば確実に僕を無傷でロウザンガラクまで送り届けてくれるんです?」

 青年なら怒ったり尻込みしないと知っているので少女も黙っていた。

「できるに決まって……んだろ?」

「剛気ですね。三千はいるアームドスキンの中を突っ切ってです? しかも、シールド専用カラマイダなんて代物までいるんですけど」

「当然、英雄バロムなら……」


 バッチナは隣のバロムを窺う。男は黙って腕組みしていたが、一拍置いて首を横に振った。


「どうしたところで、真正面から敵中突破なんて無理なんです。ある程度、陽動を仕掛けて注意が逸れたところを狙うしか」

 ルオーは淡々と説明する。

「ならば、どうする?」

「それでも、戦力の半分強を陽動に振り分ければ可能だと思ったんですけどね。失敗しちゃいました。あれはスナイピングで突っ付いたくらいじゃ崩れてくれません」

「リフレクタアタッチメント装備のカラマイダか。遠距離では揺らぐまいな」

 バロムも現実を認めなかったりはしない。

「誤算なんですよね。あんなものが急に出てきたりすると。情報ありませんでした、デヴォーさん?」

「ごめんなさいね。残念ながら、まったく把握してなかったわ」

傭兵(ソルジャーズ)でも?」

 男は再び首を振る。


 メンバー内では誰も情報を持っていなかった。よほど、秘匿されていた様子である。


「まあ、いるもんはいるでしょうがない。どうにかできんのか、ルオー?」

 ラウネスト司令が水を向ける。

「あー、あれは無理です。スナイパーの天敵みたいなアームドスキンですよ。遠間ではまず墜とせません」

「だったら、役割変更を申し出れば? あんたが無理ならどうかお願いしますって、突破力のあるバロムに頼むのが筋でしょ?」

「ですが、バロムさんがロウザンガラクに取り付いたところでなにもできないんじゃないです?」

 場が白けて、取り巻きのコレット・クラニーは失言に気づいた。

「そ、そんなんわかんないじゃない。つまりは要塞を飛べなくしちゃえばいいんでしょ。うちのバロムなら……」

「お前たちを連れていったところで無理だな。電子戦は苦手だろう?」

「う……」


(クレーム付けて貶めたいだけの顔触れ入れたって議論が進むわけじゃないのに。次から締め出してやろうかしら)


 ミアンドラは一向に進まない議論に辟易した。

次回『きざはし踏むは(5)』 「余計に矛盾するようなこと言わないで」

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 取り巻きはアレだけど、バロム氏は現状が見えてますね。
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