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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
二度あることは三度ある

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見つめる先は(3)

「さあ、準々決勝第三試合にはいよいよチーム『エシュメール』が登場です」

 リングアナは次の試合に向けてアイドリングを始める。

「解説のロバートさん、前回リミテッドクラスのチーム『ベリフォード』をトーナメントから敗退させる番狂わせを演出した彼らは今日の試合でどんな戦い方をすると予想されますか?」

「これまでも多種多様な作戦を用いて勝ち抜いてきたチームです。作戦と問われても予想はできませんな」

「そうですね。なにをしてくるかわからないチームです」


 ぽっと出のチームである。しかも、民間軍事会社(PMSC)に助っ人を頼む、異質な編成だ。前例がなさすぎて誰もが困惑していることだろう。


「ですが、先週末のときも話しましたが、彼らの作戦のベースになる思考プロセスは判明しました。戦闘単位として様々なフォーメーションを用いるのではなく、各機が有機的に連動して勝ち筋を作るというものです」

 解説者のロバート・ゲッツが看破したエシュメールの戦法はどこのチームにも伝わっているはず。

「やはり攻略してきますでしょうか?」

「トップチームは分析力も高いです。いえ、分析力が高いからこそトップチームでいられるのです。エシュメールの軍事的作戦立案力も加味した対策が練られていることでしょう」

「逆にいえば、彼らは単機で、最大でも二機程度で動く場合が想定できますね? これまでも傾向としては多いと思われます」

 新メンバーでの試合数から傾向が出てきている。

「それゆえについ各個撃破を狙いたくなるものですが、逆手に取られているのも事実ですな」

「つまり、エシュメールの作戦意図をいち早く看破すれば攻略も難しくはないという結論に至ります」

「その方向性でいくのが濃厚でしょう」


 一つとして同じ作戦を使ってきていない。そろそろネタ切れだろうと考えるのは甘すぎる。臨機応変にあしらいつつ分析を進めるのが確実に思える。


「どうやらロバートさんの予想でもお互いに読み合いになる公算です」

 リングアナは今回も実況の難しい試合になりそうだと感じる。

「実況泣かせの複雑な作戦展開。コアなファンからすれば見応えのあることでしょう。これもクロスファイトと頑張ります」

「できるだけお助けしましょう。私も自身があるとは申せませんがね」

「どうかよろしくお願いいたします。さて、チーム『ゼクセローネ』もローネック社自慢のアームドスキン『プラトー』を並べてきました。ジャッジがカウントダウンを始めております。勝つのは古参の強豪チームか、新参の異色チームか?」

 ボルテージを上げていく。

「では、試合開始時間です。ゴースタンバイ? エントリ! ファイト!」


 どう動くか見逃さないよう集中していたリングアナだったが、意外にも静かな立ち上がりとなる。両チームとも力場盾(リフレクタ)をしっかりとかざし、砲撃戦に備えるが撃ちはしない。


「静まり返るリング。すでに読み合いは始まっている。いえ、それがゆえに動けなくなっているのか?」

 なんとも形容しがたい空気に染まる。

「そうですな。先手を取らねばペースは握れない。しかし、不用意に動けば利用されかねない。そんな思いが渦巻いているかのようにも感じられます」

「なにが正解なのか誰にもわかりません。一つわかっているのは、エシュメールが視界の悪くなるスティープル内を徹底的に利用してきたという点です。いかにして誘い込むか。そこが駆け引きの焦点ではないでしょうか?」

「ええ、こうも観察されると難しいでしょう。スナイパーがどこへひそもうとしているかさえ見られてしまいます。ただ、あの体勢がなにを意味しているのか……?」

 解説者が困惑している。


 というのも、狙撃を得意とするダブルビームランチャーのスナイパーが一歩も動いていない。あまつさえ、唯一リフレクタで備えもせずに立ち尽くしている。右手のランチャーは隙間を縫ってゼクセローネのプラトーを照準しているが左手のランチャーは自然に垂らしていた。


「アリーナの観客も息を呑んで見守る。緊張感が伝わっているのでしょう」

 両者を繋ぐ糸がピンと張り詰めている様子。

「なにをする。なにを思う。お互いに腹の中を探る戦いは表に現れた静けさに反し、激しさを増すばかりかと思われます」

「動いたほうが負け。そんな雰囲気も漂ってきましたな。まるで格闘技の試合を観ているようです」

「だからといって積極性で減点があるわけではありません。ただし、このままなにも起こらなかったとすればエシュメールの敗戦が決まります。いつもながらのことにはなりますが、彼らは四機なのですから」


 空気が重い。動きがないと実況しにくい。早く動けという気持ちは強いものの、彼の立場で促すわけにもいかない。頭はどう繋ぐかでフル回転する。


「エシュメールにとって時間は値千金。しかし、相手に勝利を焦らせる戦術を用いてきたのも本当です。ゼクセローネも判断に困るところでしょう」

「ちょっとした隙が命取り。そんな試合も見せてきましたからな」


 リングアナが次の台詞に繋ごうとした瞬間、ルイン・ザが微動だにしなかった姿勢から一撃を投じる。そのビームがリフレクタを叩いた。


「初手はエシュメールだぁー! なにを思っての一撃でしょうかー!」

「足は動いていないのが不気味ですな」


 その一射に意味があるのかないのか理解しかねるリングアナだった。

次回『見つめる先は(4)』 「見事な牽制となっております」

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