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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第一章

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99/699

99.秘密の共有は仲良しの証

 夕食の時間に判明したのは、双子の荷造りが終わらなかったこと。結局、明日の昼間まで延期となった。夕食後に絨毯の部屋で寛ぎ、実家の家族だけ先に退室する。待っていたように、レオンがヘンリック様の手を引いた。


「ここ」


 来てと訴える幼子に首を傾げながら、ヘンリック様が続く。窓辺のカーテンの陰に連れてきて、ちらりと私を見た。大丈夫よ、隠れてるわ……レオンはね。ヘンリック様が大きくはみ出しているけれど、そこは見ないフリをする。


 部屋にいるリリーとフランクも、さりげなく視線を逸らした。フランクはポットを磨き始めるし、リリーは壁際の棚を片付ける。二人ともわざとらしいけれど、レオンは満足そうだった。ごろんと寝転び、同じことをしてと促す。


「こう、か?」


 素直に寝転んだヘンリック様は、体のほとんどがはみ出していた。頭と肩のあたりだけ、すっぽりとカーテンの内側だ。


「あのね、ここ……ひみちゅなの。きれぇ」


 空を指さしたのか、ヘンリック様が窓の外へ向く。首だけ動かしてもいいのに、全身で動いたので私も窓の外へ目を向けた。今日は星が輝く明るい夜だ。さきほどレオンはそのことに気づいて大喜びだった。


 魔女の絵本に、星は願い事を聞いてくれるとあったから、余計にはしゃいでいるのだろう。迷信もまだ真実になる幼い頃の、温かな思い出になるはず。


「本当に綺麗だ。ありがとう」


 見せてくれたことにお礼を口にした。驚いた私の手からカップが落ちそうになり、リリーがそっと支える。が、彼女も驚き過ぎてカーテンを凝視していた。


「リリー、バレちゃうわ」


 こそっと小声で注意し、二人でひっそり笑い合った。ワゴンのある壁際に戻るリリーを目で追えば、フランクがハンカチで目元を覆っていた。軽く添えて拭く程度じゃなく、両目をがっちり覆う形だ。よほど嬉しかったのね。


 親子の交流がこんなに目と心に刺さると思わなかったわ。微笑ましい気持ちで見守り、ヘンリック様が戻ろうと動く所作で向きを変える。見ていなかったと示すため、近くにあった本を広げた。


「おかしゃま。ぼくに、よんで」


 だいぶ言葉が上達してきたレオンは、無邪気に強請る。その言葉で気づかされた。誤魔化すために手に取ったのは、昼間の絵本だ。悪い魔女が改心して良い魔女になるお話。しかも私ったら、焦って逆さまに開いていたみたい。


 軽く咳払いをして、本を畳む。それからくるりと回して開き直した。一番最初のページからよ。


 慣れた読み聞かせを始めると、レオンは絨毯に寝転がって楽しむ。ページを捲ったら、絵を覗くために近づいた。半分も読む頃には、膝の上に頭を乗せて聞いている。横向きに膝へ寝転がるから、絵本が見えるよう向きを直した。


 後ろに座ったヘンリック様が、無言だった。ちらりと視線を向ければ、真剣な顔で絵本を見つめる。ご両親の話はほとんど話さないヘンリック様。でも絵本を読んでもらえる環境じゃなかったのは、私も知っていた。


 幼い頃のヘンリック様にも届くように。そう願いながら、最後まで丁寧に読んだ。

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― 新着の感想 ―
小人も猫作者さんに【太陽を破壊した小人王】の絵本を読み聞かせます。人間が作った人工太陽を命と引き替えに破壊した小人王の英雄譚ですきゅ。あっ、猫作者さん鼻提灯付けて寝てました(>д<*)
丸見えヘンリック様とレオン君の可愛いひみちゅ(*´ω`*)♡
父子のホノボノ…感動…。 頭さえ隠れていれば大丈夫w! 二人に絵本の読み聞かせ…なんか尊い!
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