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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
第五章

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637.説明したらわかってくれる

 ローズは手の指だけでなく、顔も拭かれた。というのも、口周りから頬にかけて、べったりと肉のソースがついていたの。どうやって食べたら、あれほど汚れるのか不思議だわ。


「あにゃ、ねぇ!」


 ユリアーナが良くお風呂に入れていたから、ローズはいつものつもりで強請った。イヤイヤ期の娘に伝えるには勇気がいるわ。


「ユリアーナは熱があるから、お風呂は入らないの」


「……ねちゅ……」


「そうよ、具合が悪いの」


 心配そうなレオンの顔と私を見比べて、ローズはきゅっと唇を尖らせた。顔のパーツが中央に寄る感じで、くしゃっと歪む。泣き出す予兆のような顔に、泣き喚く姿を想像したけれど……。ローズはぐっと堪えた。ずずっと洟を啜る音が聞こえる。


「ローズ?」


「……ろじぃ、いっちょ、いく」


 お風呂はダメなのよ、と繰り返しかけて気づいた。意味が違う? もしかして、ユリアーナのお見舞いかしら?


「ユリアーナのところ?」


「ん……」


 レオンやランドルフにも、二階へ上がらないよう伝えていた。なのにローズを連れていくのは拙いわ。風邪は万病の元だし、感染する病だから。頭の中であれこれ考えて、絞り出したのは情けない理由だった。


「ユリアーナはいま、人に会いたくないの。オイゲンも断ったわ。だから明日、聞いておくわね」


 じっと見つめるローズには、難しすぎた。こてりと首を傾げて考え「だぇ?」と尋ねる。だから頷いた。ダメなのと伝え直したところ、意外にもすんなりと受け入れる。


「ん」


 いいよの意味の「うん」が返ってきて、驚いてしまう。ヘンリック様の抱っこで移動しながら、ローズは大人しく侍女とお風呂に入った。レオン達はもう少し後なのだけれど、早く寝ると言い出し部屋に戻っていく。気を遣わせたのかしら?


 ヘンリック様にも同行を断った。理由を聞かれて、ローズみたいと笑う。レオンもそうだったわ。やっぱり親子ね……私もそう思われる部分があるのかも。擽ったく思いながら「未婚令嬢の見舞いで、整えていない姿を見るのはどうかしら」と話す。


 ヘンリック様がぴんときていない様子なので、付け加えた。


「家族であっても、尊重してほしいときはあります。ユリアーナは淑女を目指して努力する貴族令嬢です。未婚の令嬢が、夫でもない男性に()()()()を見られるのは恥ずかしいことですわ」


「恥ずかしい……そうか、それは遠慮しよう。ところで「すっぴん」とは何だ?」


 化粧をしていない顔と答えそうになり、口紅くらいでほぼ化粧をしていない若いユリアーナを思い浮かべる。どう説明したらいいか迷うわね。そうだわ!


「髪型もぼさぼさで、顔も洗っていない。薄い部屋着で、きちんと整えていない。そんな状態で女の子が人前に出るのは、あり得ないでしょう? 成人女性なら化粧前の顔が該当しますわ」


 ヘンリック様の顔が、ざっと青ざめた。とんでもない質問をしたと詫び、いそいそと自室へ引き揚げていく。さあ、ユリアーナの様子を見てきましょうか。階段を前に気合いを入れて、やや駆け足で階段を登る。


「奥様! いけません」


 イルゼに駆け足を見つかり、叱られた。公爵夫人は急いでいてもゆったりと、優雅に行動する……肝に銘じるわ。

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― 新着の感想 ―
イヤイヤ期だった姪甥もしっかり周り見てる。 周りに辛い顔してる人がいたら(演技は見抜きます。)しぶしぶな顔しても「つらいのやーよね」と言っておとなしくなります。 それがまた愛おしい。
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