620.ユリアーナには素直なのね
しばらくすると、ローズも泣き出した。大好きな兄レオンが泣いているし、さっきの料理を拾って食べたのも衝撃だったのでしょう。大泣きする二人を抱きしめたところへ、顔色の悪いユリアーナが入ってきた。体調不良でゆっくりさせていたのだけれど。
「ユリアーナ、もう平気そう?」
「……まだ……辛いわ」
仕方ないわね。定期的にやって来るけれど、その期間は腹痛や貧血で大変だもの。私はやや貧血になる程度で、腹痛は軽い。ユリアーナは両方とも重くて、お母様もそうだったと聞いている。嫌なところが似ちゃったわね。
「スープだけ食べたら、また寝るわ……それで、何があったの?」
怠そうに話すユリアーナが席に着くと、侍女がスープ皿を引き寄せる。今の話を聞いて気を利かせてくれたみたい。女性同士だから、辛さがわかるもの。礼を言ったユリアーナが、ゆっくり口を付ける。薬を飲むには、どうしても空腹は避けてほしいから食事をする妹を見守った。
「ローズがね、難しい時期に入ったの」
「あれ?」
「そう、あれ」
二人で通じる間も、ローズは大泣きしている。レオンはしゃくり上げているものの、少し落ち着いたみたいね。がっちり両手で私を掴んでいるけれど、涙は止まってきた様子。赤い目元が痛そうね。ちゅっと音を立ててキスを降らせた。額に触れた唇に、レオンの表情が明るくなる。
「私はまた休むわ。……ローズちゃん、一緒に寝る?」
「やぁ、っ!」
しゃっくりが始まり、ローズはびくっと大きく揺れた。嫌だと断ったのに、立ち上がるユリアーナを目で追う。
「いやぁあああ! ひっく……」
泣き叫ぶのも、しゃっくりに邪魔されてしまった。ユリアーナの背中へ手を伸ばすので、そっと下ろす。ローズはとてとてと揺れながら走って、ユリアーナの後ろをついて行った。静かになった食堂に、レオンが洟を啜る音が響く。
「おか、ぁ……さま」
「なぁに、レオン」
「ろじぃ……」
「ええ、行っちゃったわね。ローズはね、思い通りにいかなくてイライラしてしまうの。自分のやりたいことや言いたいことを、上手に伝えられないのよ。だから嫌いにならないで、許してあげて」
こくんとレオンの首が縦に揺れた。向かい側のランドルフも頷く。ヘンリック様にはもう少し説明が必要だと思うわ。フランク達にも話しておきましょう。
ローズのイヤイヤがただの我が儘ではなくて、成長の証なのだと。知っているかどうかで、今後の対応が変わってくる。慣れた様子で食事を終えたエルヴィンが、私に尋ねた。
「姉上、説明は僕が引き受けましょうか?」
「そうね。任せるわ」
頼もしくなったこと。成長したエルヴィンの申し出だから、任せてみましょう。




