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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第一章

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60.なぜ正座?

 旦那様が王宮に詰めていた頃は、夕食後に絨毯の部屋で寛いだ。侍女達の目があるから、寝転んだりはしないけれど。靴を脱いだ状態で、足を伸ばして座ったわね。


 迷ったのは一瞬だけ。旦那様は絨毯の部屋で靴を脱ぐのも平気だったし、誘ってみよう。ダメならそう言ってくれると思う。冷たい人と思っていたけれど、話をすればきちんと聞いてくれた。何も知らない子供みたいに、新しいことに興味も持つ。普通の人なのよ、ただ人との接し方が不器用なだけ。


「旦那様、夕食後は絨毯のお部屋で寛ぎますの。ご一緒にいかがでしょう?」


「……いいのか」


「ええ、旦那様をお誘いしましたのよ」


 他でもないあなたに声をかけた。そう伝えたら、僅かに口元が緩んだ。喜んでもらえたみたい。言動も不器用だけれど、この整ったお顔も不器用なのね。表情を作って不機嫌そうにしているより、今のぎこちない笑顔の方がずっと素敵だわ。


「だん、にゃ……ちゃま」


「レオンのお父様よ」


 私の言葉を真似ようと、自分で頬を摘みながら頑張る幼子に、あなたの父親よと教える。


「おとちゃま!」


「ちゃんと覚えたのね、えらいわ」


 褒めるたびに、レオンは嬉しそうに笑う。この子は褒めると頑張れるタイプだから、たくさん褒めてあげたいわ。エルヴィンと同じタイプなのよ。逆に双子は叱らないと動かない。


「旦那様、絨毯のお部屋に移動しますわ」


 同行を躊躇う父達も一緒にと促して、立ち上がった。絨毯の部屋で、順番に靴を脱ぐ。伯爵家では、脱いだ靴は自分で整える。部屋を出る時に履きやすいよう、逆向きに並べた。私も同じように靴の向きを直す。


 きょとんとした旦那様も、見様見真似で靴を並べた。あたふたする侍女をよそに、フランクは満足げだ。いつもは家計や管理の書類に追われる家令も、今日は旦那様の付き添いに専念するようね。


 お茶の用意を頼み、私はやや奥の方へ座った。窓が近いため、抱っこから降りたレオンは窓へ走っていく。頭が大きいから不安定だけれど、転ばずに窓へ手をついた。ぺたりと手のひらを当てて、じっと外を眺める。


 ここは団欒用の部屋として用意されたため、庭を眺めるには最高の位置だった。水瓶を持つ乙女の像があり、下の噴水池に水が落ちる。手前に花壇があり、色とりどりの花が揺れていた。庭師渾身の眺めね。


「いつも通りでいいわよ」


 なぜか正座して座るエルヴィンと、真似て足の痺れた双子が転がっている。お父様も胡座をかかずに正座だった。畏まらなくていいと伝え、旦那様を見ると……。


「なぜ……正座?」


「せいざ……と言うのか。疲れる格好だ」


 皆がしたから真似したのでしょうけれど、正座ができなかった。普段しない姿勢で、前屈みに手をついて堪えている。私の崩した座り方は、スカートに阻まれて見えなかったのね。こうですよとスカートの足を上から押さえて、形を確認してもらった。


 横に崩して座ったが、まだ転がりそう。私が足を伸ばして座り、侍女にクッションを運んでもらった。その姿を確認し、旦那様は壁際に移動する。受け取ったクッションを壁に立て掛け、手前に座った。


 応用力がすごいわ。教えていないのに、転ばないよう壁を利用するなんて。勉強ができる人は違うわね。感心しながら、運ばれたお茶をいただいた。

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― 新着の感想 ―
知り合いの友人に 育児も家事(洗い物掃除など)率先してやってくれる旦那様がいて お宅にお邪魔した時も子供はみてるからゆっくりしなよって言ってくれたらしく 良い旦那さんだねと言ったら その友人 褒めて伸…
旦那様!w完全に子供扱い!あ、でも、正しいのかも…。健全な子供時代を、送れなかったみたいだし。仕事は出来るけど私生活、というか、子供時代が欠けてるから、今から育て直しを…。有りかも?そして、将来は、旦…
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