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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第一章

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55.漠然とした不安があるみたい

 お昼までお勉強というお絵描きをして、レオンははふっと大きな欠伸をした。お昼寝まで時間があるけれど、先に寝かせちゃおうかしら。


 まだ時間に縛られない生活の許されるレオンは、日当たりのいい絨毯の上に寝転ぶ。うとうとする姿を見守っていると、ぱっと目を開いた。むくりと起き上がり、周囲を見回す。


「どうしたの?」


「……いないくない?」


 痛くないと尋ねられたの? ひとまず「いいえ」と答えて、もう一度言葉を頭の中で確認する。いなくならない? と聞いたのね。


「ここにいるわ」


「……て、ぎゅっとして」


 言われるまま手を握る。何か不安になっているみたい。眠い子供って温かいわね。しっかり手を握り、頬に押し当てた。にこりと笑って、レオンはまた目を閉じる。やっぱり寝ちゃうのかな。


 隣に寝転び、レオンの顔を正面から見つめる。紫の瞳が見えないと、人形みたいだわ。長いまつ毛が頬に落ちて、不思議と大人びて見えた。一般的には目を閉じると幼く見えるんだけど。将来は丸い頬がしゅっとして、赤い唇は少し色が薄くなるのよね。


 あら、絶世の美少年じゃないの。傾国になっちゃいそう。ふふっと笑う私に、レオンの寝息が聞こえてきた。後ろから忍び寄ったリリーが、上掛けをレオンに掛ける。


「奥様、ベッドに移動しましょうか」


「そうね……いえ、このままでいいわ」


 抱き上げたら起こしてしまいそう。ぽかぽかする日差しの柔らかな午後、お腹がいっぱいだと眠気を誘われるわ。レオンと繋いだ手が、ふと気になった。


 ここ最近は落ち着いていたのに、どうして不安になったのかしら。一人でお昼寝したこともあるのに、急に起きてまで手を繋ごうとするなんて。考えてみたものの、特に理由も思いつかない。


 可愛い寝顔をしっかり堪能し、私も少しだけ休んだ。午後からお散歩したいと言っていたし、体力を回復しておかないとね。







「おか、しゃま! おきてぇ」


 ぺちぺちと頬を叩かれ、目を開ける。驚く距離にレオンの顔があって、ぼやけて見えた。


「レオン? もう起きたのね」


「うん。おにわ、いく」


 散歩に行こうと誘うレオンは、まだ手を繋いでいた。しっかり握っていたのが嬉しいようで、その手をゆらゆら左右に揺らす。起きたら、リリーにスカートを直された。結構しっかり寝てしまったようで、肩が痛いわ。


 屋敷の敷地から出ないし、着替えるほどではない。彼女達にそう告げて、一緒に庭へ出た。並んで靴を履くと、また手を繋ぎたがる。快く受け入れ、庭の花を眺めながら木陰まで移動した。


 疲れたようで足取りが重くなったレオンを抱き上げ、少し先の林まで行く。手前で戻る私の首にレオンが手を回した。ぎゅっと抱きつく姿は、年齢以上に幼く感じる。


 変ね、赤ちゃん返りに似た行動の原因は何かしら。考えながらぽんぽんと背中を叩く。きっと漠然とした不安だろうから、聞いても原因がわからないでしょう。


「レオン、お母様はずっとレオンが好きよ。一緒にいるわ」


「……じゅっと?」


「ええ、ずっと」


 不安を和らげるのが先決よね。ゆっくりした口調で言い聞かせながら、歩調も緩めた。レオンは私の髪を一房握り、小さく頷く。伝わったみたいね。

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― 新着の感想 ―
2周目、感想。 きっと『おとしゃま』のせい。まぁ単に今まで関わらなかった人が急に視界に入って来て、しかも当たり前にその空間を共有する事に違和感を覚えて不安になったんだと。
[気になる点] 不安は父親のせい?? 父親に母様が取られる!なんて、絶対!ぜーったいに!あり得ない事を心配してる???
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