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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第一章

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50.夕食を家族で ***SIDE公爵

 こんなに早く帰宅するのは、どのくらい振りか。思い出せないが、日が沈む前に馬車に乗り込んだ。目頭を押さえた文官達が俺を見送る。揃って頭痛でもするのか? 馬車の外の景色を見るともなしに眺めた。考えてみたら、ずっと働き詰めだった。


 早く帰るために内容を精査して気づいたが、半分は俺の決裁が必要ない。箔付けに紛れ込ませた書類だろう。命じて分類させ、今後は持ち込ませないよう指示を徹底した。これで決裁書類が半分に減る。さらに不備を手直しすることをやめ、すべて突っ返した。


 机の上にある書類箱は三つだ。一つは未処理、隣が決裁済み、一番右に不備・返却がある。今まで左の二つしか使わなかった。不備を突っ返して直させるより、自分で修正した方が早いからだ。それをやめたことで、仕事量はさらに二割は減る。


「あれほど不備が多いと思わなかったな」


 何を提出してもきちんと修正されて通過する。そう考えれば、手抜きをする輩も増えるはず。分類作業の合間に、文官から聞いた。彼らにも負担を掛けていたのなら、それぞれの職責をきちんと果たすよう各部署に通達するか。月に一回は徹夜作業が発生したが、今の分類を徹底すれば防げそうだ。


 仕事の効率化で文官の態度が変わった。家族の元へ早く帰って食事を一緒に摂れるのは、今後のためにも大事らしい。素敵な奥様を得られたのですね、と言われたが……意味がよくわからん。


 馬車が屋敷に到着し、玄関ホールで家令フランクに迎えられる。当たり前の光景に、思わぬ人物が加わった。息子レオンを連れた妻だ。アマーリアは疲れたでしょうと労った。その一言に胸がざわつく。落ち着きなく騒がしい感情に混乱しながら、レオンの幼い挨拶を見つめた。


 何を言えばいい? 分からない。こんな時、父は母に何か声を掛けていただろうか。いや、そもそもこんな場面を見た記憶がない。妻は夫を出迎えるものらしい。


「夕食は家族で摂ろう」


「家族、ですか?」


「ああ」


 なぜ聞き返されたのか。家族とは同じ家名を持ち、同じ屋敷に住む者を示す単語だろう。問い返さずとも、俺と妻、息子しかいない。もしかしたら、離れに住まわせた実家の家族を思い浮かべた可能性もあるが。連れて来たいならそう言えばいい。拒むつもりはなかった。


 玄関の正面にある階段ホールは、装飾された手摺りと赤い絨毯に彩られている。華やかな貴族の邸宅になくてはならない場所だった。登り切れば領地の屋敷を描いた絵画があり、左右に分かれて通路がある。その階段の中ほど、踊り場で立ち止まった。


 足音がない。当主や妻子の私室は見晴らしの良い二階にあるはずだが……振り返っても彼女は見上げるばかりだ。首を傾げたが、後で部屋に戻るだろうと放置した。


 執事ベルントに聞くまで知らなかった。アマーリアとレオンの私室が、一階に変更されたことを……。今月の報告に記載予定らしい。客間のいくつかを改造して整えた。部屋はたくさんあるので構わないが、胸の奥でもやもやした。

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― 新着の感想 ―
2周目、感想。 『素敵な奥様を得られたのですね、と言われたが……意味がよくわからん。』→コレがある日突然、遠からずに、井戸のポンプの水を理解するヘレン・ケラー状態になるんですよねー……。
[一言] 公爵には悪いが主人公からしたらどこまでいってもはた迷惑な話でしかない
[一言] 息子に嫉妬ってドン引き
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