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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第一章

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47.呼び方を相談してみた

 あふっと大きな欠伸をしたレオンに気付き、帰る準備を始めた。昼食を終えて、お祭り会場は売り尽くしを始めている。商人達は在庫を持ち帰るより、多少安くしても売り切りたいのね。


 安売り、バーゲン、セール……これらの言葉に弱い私だけれど、今回は我慢した。レオンをベッドで休ませてあげたいわ。


「もう帰るの?」


 残念だとユリアンが唇を尖らせるので、きちんと「おしまい」を言い聞かせた。楽しいことはいつまでも続いてほしいが、終わる時も来る。理解して我慢できるのが、大人だった。まだ早い年齢だけれど、この一言は効くと思うの。


「あら、ユリアンはお兄ちゃんになったのに我慢できないのね」


「私は我慢できるわ」


 双子のユリアーナが味方についた。こうなると、ユリアンは弱い。まだ心残りだらけでも、ぐっと堪えて平気なフリをした。


「来年もお祭りはあるわ。それに……収穫祭もあるでしょう?」


 お楽しみは先にある。聞き分けのいいエルヴィンは、苦笑いしながら双子を馬車に押し込んだ。


「いい思い出になっただろう。ありがとう……アマーリア様」


「あっ……」


 お父様は人目を気にして、敬称付きで話しかけた。すっかり忘れていたわ。フランクに相談して、呼び方を考えようと思っていたのに! ぎこちなく微笑んで、馬車に引き上げる。この時点でレオンはうとうとし始めていた。


「ん、んぅ……も、と!」


 もっとお祭りを楽しむと駄々を捏ねながらも、ほとんど寝ている。ワンピースの胸元に顔を押し付け、やだと横に振った。馬車の揺れに合わせて、ぽんぽんと背中を叩く。徐々に動きが止まり、愛らしい寝息が聞こえてきた。首筋で擽ったいけれど、縦に抱っこした状態なので我慢だ。


「奥様、交代いたしましょうか」


「起きてしまうわ」


 向かいに腰掛けた執事ベルントに、大丈夫と告げる。ふと気になって、彼に尋ねた。


「私は公爵夫人よね、でも実父が伯爵の場合……なんて呼んでもらうのが正しいかしら」


「そうですね。外部に対しては公爵夫人とお呼びいただくのが普通かと存じます。お屋敷の中であれば、お任せいたします」


「え? そうなの」


「ご家族の問題に、使用人は口出し致しません。ご不安でしたら、家令や侍女長にご相談ください」


 意外だったわ。でも、家の中なら愛称で呼ぶ人もいると思うし。納得しながら、屋敷の門をくぐる。今回は何もなく帰宅できてよかった。


 馬車が停まった途端、レオンはびくりと体を揺らした。ゆっくり私を見上げて、ほにゃんと笑み崩れる。そのまま、もう一度眠ってしまった。


「……っ、このまま運んでしまいましょう」


 抱き上げて運び、ベッドに下ろそうとして……がっちり掴まれたワンピースに気づく。小さな指を擽ったり、優しく隙間から解こうとしたり。苦戦した結果、全敗で諦めた。


「奥様、このままお休みになる方がよろしいかと」


 リリーの進言に頷き、私もベッドに横たわった。上質なワンピースが皺になってしまうわね。そう呟いたら、リリーはふふっと笑った。


「奥様達がお仕事を作ってくださらないと、使用人が減らされてしまいます」


 だから皺を伸ばす心配はするな? 大きなお家には、貧乏貴族家にないルールがあるみたい。横になると、不思議に眠くなった。原因は、抱きしめたレオンの温もりかしら。

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― 新着の感想 ―
[一言] イギリスに娘さんを留学させてた人から聞いたのですが、デビュタントのときに燕尾服を着ていた男性が裾を気にせずに座っていて驚いたそうです。 座るときにちょっと気にすればクシャクシャにならないのに…
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