294.妹想いの報酬選び
毎日よく歩くからか、レオンのお昼寝が捗る。すぐに寝て、きちんと目が覚めるようになった。レオンも運動不足だったみたい。夜も早く寝てくれたら助かるけれど、そこまでの効果はなかった。
「ユリアン、こちらへ来て」
手を繋いだレオンと一緒に、業者を待たせた部屋に入る。貴族令嬢が身につける装飾品を扱う商人が待っていた。フランクに呼んでもらったの。金額に上限を設けて、商品を用意してもらった。八歳の伯爵令嬢にプレゼントする、そう伝えてある。
豪華すぎず、見栄える品が並ぶ。金額的には、下女の月給の半分くらいかしら。高額ではないが、安物でもない。そう伝えて、ユリアンに選ばせた。
「この中なら、どれでもいいのか?」
「ええ、構わないわ」
じっくり眺めて考え込む。ユリアーナ自身に選ばせてもいいけれど、ここはプレゼントだから。ユリアンが、妹に似合う物を探すべきよ。いくつか手に取り、唸って悩む。商人は微笑ましそうに、あれこれと品物についてアドバイスを行った。
首飾り、髪飾り、腕輪……レースのヴェールや絹のベルトなど。品物は幅広い。ユリアンは長く悩んで、二つに絞った。一つは貝殻の裏側を削って作られた、虹色のブローチ。もう一つは美しいレースのショールだった。
「どっちも似合うけど……」
より喜ぶのはどちらだろう。あの時のドレスを華やかにして、見栄えるのはどちらか。シンプルなドレスだから、両方とも似合いそうね。
「誰かの意見を聞く?」
侍女だったり、商人だったり。参考になる意見がもらえると思う。迷いながら、ユリアンはレオンに意見を求めた。
「レオン様、ユリアーナにはどっちがいいかな」
「こっち」
まったく迷う様子なく、レオンはショールを選んだ。絹の糸で作られたレース細工のショールは繊細で、色は柔らかなピンク。黒に近い紺のレースが重ねられていた。どの服にも似合うし、今後も幅広く使えそうだ。虹色のブローチはそうね、ショールを留めるのに使えそう。
「じゃあ、俺はショールにする」
「わかったわ。レオン、よかったわね」
「うん!」
自分が意見を求められ、その結果、ユリアーナのプレゼントが決まった。レオンは嬉しそうに頷いた。私は商人へ包むよう指示を出し、一緒にブローチも中に入れさせた。
「リア姉様、二つは無理だから」
「何を言ってるの。タダでなんてあげないわ。先払い分よ」
この後もレオンと私の運動不足解消に、働いてもらうの。笑顔でそう伝え、商人が包装したプレゼントをユリアンに持たせた。
「お茶会は明日よ、渡してきなさい。きちんと自分の気持ちも伝えなさいね」
ぎくしゃくしているのは、お父様から聞いている。謝るいいチャンスだわ。今日の仕事は終わりと背中を叩き、彼を送り出した。
「ありがとう、リア姉様。レオン様も!」
「……ゆん、どちたの?」
「ユリアーナと仲良しするんですって。レオンは一緒にお絵描きしましょうね」
「あい」
商人には礼を伝え、フランク経由で追加の買い物を伝える。先日、うっかり部屋の花瓶を割ってしまったの。代わりを購入したら、ちょうどいい埋め合わせになるわ。




