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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第三章

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287/700

287.伝播する「あーん」

 パウリーネ様は何があったのかしら。リースフェルト公爵がきちんとご挨拶していたが、理由は侍従経由で伝えられた。お散歩を切り上げて、私と話したいと訴えたが、公爵閣下に「迷惑になる」と止められた。それが気に入らないのですって。


「おほほっ、あの方らしいわ」


 笑ったユーリア様が教えてくれたのは、以前にマルレーネ様に執着した時のお話だった。やはり同じように周囲をうろうろして、他の方との会話に割り込んだとか。さすがに外交問題になりそうな事態に慌て、リースフェルト公爵が止めた。その際も、機嫌を悪くして帰ってしまったらしい。


「自由な方ですのね」


「正直に言ってもよくてよ、自分勝手なの」


 マルレーネ様はからりと明るく言い放った。有難いけれど、夫である公爵様との仲が拗れたりしないかしら。ぽろりと溢した呟きに、ユーリア様が答えをくれた。


「問題ないわ。明日の朝になれば忘れて、けろりとしているのよ。大抵のことはどうでもよくなるみたいね」


「ある意味、才能ですね。少し羨ましいです」


 私よりさらに頓着しないご夫人がいるなんて。驚く私の皿に、ヘンリック様がせっせと切り分けた食事を載せる。レオンは目を輝かせ、ぱくりと口を開けた。


「ごめんなさいね、待たせてしまったわ」


 レオンに詫びて、ヘンリック様にお礼を伝える。開いた口に見合う大きさに切り分けた魚を、そっと食べさせた。嬉しそうに頬に両手を添えて「おいち」と笑う天使は、ゆらゆらと体を揺らす。美味しさが言葉以上に溢れちゃったのね。もう少し大きくなったら、説明してやめさせるけれど……。


「アマーリア」


 呼ばれて振り向くと、口を開けて待つ夫。迷うと負けよ。当たり前のように普通に振る舞わないと……突き刺さる二人の視線を無視し、私はヘンリック様の口に魚を入れた。そのまま何もなかったように、残った一口を自分で食べる。


「っ、ご覧になりまして?」


「もちろんよ。大胆ね」


 食べさせたことかと思ったら、間接キスのこと? マルレーネ様とユーリア様は嬉しそうだった。聞かないふりで、今度はレオンのお皿に載った肉を切り分ける。全員分を私が切って食べさせる姿に、お二人の笑みは深まっていく一方だった。


「お母様、俺もあれ……やってみたい」


 ランドルフ様が、ユーリア様の袖を遠慮がちに引く。摘まんで、笑顔を向けた。一瞬固まった後、私の方を見て息子に視線を落とす。次男はぱくりと口を開けた。


「……そう、ね。この場だけなら……」


 言い訳しながら、手元のお皿から選んだ野菜を食べさせた。口に入ったのが野菜だと気付き、複雑そうな顔をしたものの……ランドルフ様はきちんと食べた。咀嚼して飲み込み、笑顔を向ける。


「ありがとう、お母様」


「この方法なら野菜も食べるのかしら」


 うーんと悩むユーリア様の袖を、さらに長い指が摘まんで引いた。


「母上、その……」


「まさか、あなたもなの? ローラント」


 次男はよくて長男はダメなんて言えない。でも成人間近で、他国に留学する大人に近い息子……迷った時間は長く、ローラント様が俯いた。


「口を開けなさい、ローラント」


 絆されたようで、ユーリア様は立派に成長したローラント様へ、大きめのブロッコリーを押し込んだ。

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― 新着の感想 ―
みんな上位貴族で教育も厳しくて、早く大人にならないといけなかったから、ローラントくんもまだ小さいうちから甘えることを我慢してきたところがあるんでしょうね。 ローラント君は年齢なら中学生から高校生くら…
お兄ちゃんには大きめブロッコリー(笑)
野菜嫌いが野菜を食べる画期的な方法wホノボノなア~ン、と間接キスw家族の絆が深まりますね!
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