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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第三章

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279/700

279.破れないスカートを選ぶ

 王宮に降り立った私は、隣を見上げた。手が差し出され、当たり前のようにエスコートされる。


「ありがとうございます、ヘンリック様。本当に……よろしいのですか?」


「もちろんだ。部下にも連絡済みだぞ」


 昨日のお仕事で、ある程度書類の処理を終わらせ、休むと伝えてきたらしい。休めないと言っていたのに、本当に平気かしら。問題が起きれば、お茶会に連絡が来るという。部下の方々を労う差し入れを検討しましょう。


 後ろからレオンが叫ぶ。


「おかぁ、しゃま! ぼくもぉ!」


 降りられないと訴えるけれど、同行したベルントが困ってるわよ。彼の差し出す手を拒み、抱っこを主張する。両手を伸ばす天使は可愛いけれど、執事に迷惑をかけるのはダメね。いけないことだと説明し、レオンを抱き上げた。そのまま抱えようとすれば、降りると言い出す。


 もしかして、イヤイヤ期? でも全部が嫌な感じでもないわ。中途半端な反応に、レオンの好きにさせて様子を見ることにした。しっかり手を握り、空いた片手をヘンリック様へ伸ばす。反射的に掴んだヘンリック様が「これでいいか?」とレオンに尋ねた。


「うん」


 素直に頷く。やっぱりイヤイヤ期とは違うみたい。案内の侍従について、私達は手を繋いだまま歩き出した。他の公爵家が集まる上、王族も参加する。夜会の帰りに渡された招待状には、参加者を申請するよう書かれていた。参加する側の自由度が高い。


 今回はオイゲン様を預かっているので、シュミット伯爵家の皆は残ってもらった。レオンと二人で参加する予定だったけれど、ヘンリック様も参加する。知ったのは朝なので、大急ぎで伝令を出そうとした。そうしたら、自分で前日に手続きしてきたんですって。


「そのドレスも似合う、素敵だ」


 レオンを挟んで歩くヘンリック様に褒められ、頬が赤くなる。ぼそぼそとお礼を言って、緩みそうになる口元を手で隠した。


 若い貴族令嬢が好んで選ぶ、プリンセスラインのドレスは気恥ずかしい。既婚なのにいいのかしら。でも年齢的に、あと五年は着てもいいはず。腰を絞り、その下のスカートを一気に膨らませる。この形なら、レオンを抱っこするためにしゃがんでも、スカートが裂ける心配は不要よ。


 本当の理由と、先日破けちゃった話は、ヘンリック様に秘密だ。さすがに恥ずかしすぎるし、リリーが内密に処理してくれた。焼却しますのでご安心くださいと真剣に囁かれてしまったの。すごく申し訳ないのと有り難いのとで、拝んでしまった。


 膨らんだスカートが嬉しいのか、レオンはぼふっと顔を埋めて笑う。楽しそうでよかった。でも膨らみを抑えたデザインを選んだのに、これでもかなり場所を取るわね。レオンが遠くなっちゃうから、もう少し改良してもらわないと。

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― 新着の感想 ―
ドレス破けただけなのに燃やしちゃうんですね、奥様なら解体して生地で小物作りとかしそうだけど、今は立場的に無理だろうから孤児院とかに寄付とかしたら喜ばれるのでは?とか貧乏性な事を考えてしまいました。
うーん、凄いですね。 子供を育てる上で大事な事、時に子供の目線で見た場合な状況を考えてやることですよね。それも、何年も先な事を考えての事。 大きくなってからの、それも立たされる立場の事も加味されての…
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