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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

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270/701

270.額に入れる出来の良さだわ

 お父様の前なので、叱るのはやめる。孫から貰ったと喜ぶお父様を悲しませたくないわ。一回目だから見逃すけれど、二度目をやったら叱りますからね。レオンは、もじもじと手を動かして目を逸らした。悪いと思っているなら、注意したら直りそう。


「おかぁ、しゃま。え!」


 誤魔化す気かしら。気を逸らそうとする所作に、ぷっと吹き出してしまった。今回は見逃すと決めたから、何も言わずに微笑む。お絵描きの道具を、一緒に引っ張り出した。棚から出したクレヨンを、レオンは机の上に並べる。


 マーサの用意した紙に、お礼を言ってクレヨンを握った。ご機嫌で棒線を引き、歪んだ丸を描く。ふと気になったのだけれど、絵の上手下手って遺伝かしら。もし遺伝なら、ヘンリック様も……不思議な絵を描くのかも。


 想像したら頬が緩んだ。レオンの隣へ紙を置いて、私も色鉛筆を手に取る。前世の記憶から鉛筆と表現したけれど、実際は細いクレヨンね。手につきにくいので助かるわ。ささっと輪郭を取って、耳や特徴的な鼻を描く。確か、体は灰色だった。


 鉛筆を斜めにして、薄く色を付ける。うん、よくできたわ。これなら誰が見ても、わかると思う。猫の時は微妙な反応されたもの。額に入れて飾るほどの出来の良さだわ。


「どうかしら」


「……ドラゴン、でしょうか」


「え? 違うのではありませんか。鼻が長い犬では?」


 ベルントが首を傾げ、リリーが笑顔で間違う。お父様が覗き込み、うーんと唸った。


「なぜ犬だと?」


「だって四つ足です」


「たいていの動物は四つ足です」


 リリーとお父様が失礼な会話を繰り広げる。むっとして答えを口にした。


「ゾウですわ」


「……言われてみれば、耳? らしき部分が大きい……でしょうか」


 なんとか類似点を見つけようと頑張るベルントは、過去に絵本で見た生き物を思い浮かべた。マーサは我関せず、レオンのクレヨンを整理したり、交換の手伝いをしている。


「もういいわ」


 きちんと描けたと思うのよ。少なくとも猫より特徴を捉えている。両側に数字の三に似た耳をつけ、長い鼻には皺まで描いた。顔も目がキラキラで、可愛いと思う。牙をつけたのがいけなかったかしら。


 頭の部分を強調し、体を小さく後付けしたのがいけなかったかも。きっと大きな象のイメージじゃなかったのよ。理由に思い至り、納得した。仕方ないわね。


「おか、しゃま。ぼくも」


 描けた! ご機嫌でレオンが絵を示す。色がたくさん踊っていた。この四つの丸は何だろう。花? でも大きいわよね。人の可能性もある。


「すごく楽しそうだわ」


 色が多いので、そう表現して説明を引きだす方向にする。紫で描かれた丸を指差した。四つあるから、まずは左上から。


「お母様に教えて、これは誰?」


「おとちゃま」


 ほっとする。やっぱり人だった。以前は棒人間を量産したけれど、最近は丸で人の顔を表現する絵も出てきたの。勘が当たったのが嬉しくて、陰で拳を握る。


「これ、おかぁちゃま」


 右隣に私、それならやや小さい丸は、レオン? 尋ねたら大喜びで手を叩いた。当たったわ! 最後の一個は誰かしら。


「じゃあ、これは?」


「これ!」


 まだ解いていなかった腕のスカーフを引っ張って、悲鳴のように甲高い「きゃぁあ」を発した。子供って突然叫ぶのを忘れていたわ。耳がツンとしちゃう。お仕事を任せられたのが、よほど嬉しかったみたい。


 よくできましたと褒めて、お絵描きの道具を片付けた。

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― 新着の感想 ―
うん?……(*≧∀≦)笑♪ さすが母子(*≧∀≦)笑♪ 遺伝で無くとも画才ゎソックリですね! いつも素敵なお話をありがとうございます 心からの感謝を込めて
お母様は画伯でしたか。ヘンリック様が額に飾って無条件で褒めて、それを周りが合わせたことで、評論家が「制作者が知らない」作者の意図を汲んで、抽象画的な人気作品になったりして。 そして王家のお茶会の時にで…
バレバレで誤魔化す天使♪じぃじが喜んでるならいっか~(*´▽`) なかなか伝わらないおかしゃまの自信作絵画(笑)
感想一覧
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