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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

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263.リア姉のパクリだけど ***SIDE末弟

「なあ、この辺の部屋って使っていいか?」


「……ああ、客間だから誰もいないと思う」


 育ちのいい貴族のお子様って感じだな。本当に危険な状況や怖さを知らない。粋がって悪ぶったって、平民に揉まれて育った俺が見る限りフリに過ぎない。


 俺は普段エル兄のお下がりを着るが、新品のシャツを貰ったことがあった。浮かれて街へ着ていけば、攫われそうになるんだぞ。路地へ引きずり込まれた恐怖と、逃げ延びるのに足掻いた記憶は消えない。コイツはそんな怖さは知らないんだろう。


 手近な部屋の扉を開け、カーテンが閉まった薄暗い部屋に入る。勝手にカーテンを開け、ソファーに座った。


「名乗っておく。俺はシュミット伯爵家のユリアンだ。お前……母親に構ってほしくてやらかしたんだろ」


 ずばり本題から入った。


 リア姉は甘い。いや、厳しい面もあるけど、根本的に優しかった。バルシュミューデ公爵家の茶会で騒動を起こしたら、実家が何か責任を負う。そんなこと、貴族の子供なら知ってるはずだ。レオン様ぐらい小さけりゃ、仕方ねぇが。


 ティール侯爵家の次男坊、名前はオイゲンだったか。俺と同じか年上だろ? やたら体デカいし、この年齢なら知らないはずないさ。それなのにやらかした。あれって、拗ねたときのユリアーナと似てる。構ってくれと訴えるアピールだ。


 母親が同行するお茶会なんだから、ターゲットはレオン様じゃなくて母親だった。リア姉がレオンを可愛がる姿に嫉妬して、絡んだんだろ。それで母親にこっぴどく叱られた。


 ここまで話すと、オイゲンは驚いた顔で何度も瞬いた。言い当てられてびっくり、か?


「母親になんて言われた? お前なんか知らないとか、その程度だろ」


「その程度なんて言うなっ!」


 まだ噛みついてくる元気はあるようで安心した。こないだお茶会で見た時より、すげぇ痩せてる。頬とか、骨がゴツゴツした感じだった。


「いいじゃん、母親がいるんだろ。恵まれてるじゃん」


 鼻の奥がツンとした。やべぇ、説教垂れながら泣きそう。


「……え?」


「母親、生きてて罵ってくれるんだろ。羨ましいって言ったんだ。俺のうちはもう亡くなってるから、さ」


 深呼吸して気持ちを落ち着ける。大丈夫、俺にはしっかりした兄も優しい姉もいる。父や妹もいて、不幸じゃない。でも……時々思う。どんなに姉が愛してくれても、母親に憧れるんだよ。ぎゅっとしてほしいんだ。


「困らせるなよ。俺も直接は知らねぇけど、母親は、見返り求めずに愛してくれる存在らしいぜ」


「でも……お前なんか私の子じゃないって……だから、俺……もう要らないのかと、って」


 食事を拒んで部屋に閉じ籠ったら、許してもらえると期待した。もういいわと苦笑いして……なのに来なかったんだ、オイゲンは一気に吐き出した。ふんぞり返ったソファーから身を起こし、入り口付近でぐじぐじ並べるオイゲンの頭を、拳でぐりぐりと挟んだ。


「いてっ」


 デケェ図体してるくせに、簡単に弱音吐きやがって。崩れるように座ったオイゲンに合わせ、俺も絨毯の上に腰を下ろした。


「痛いだろ。体の傷がこんなに痛いなら、心の傷はもっと痛いんだ。まあ、これはリア姉のパクリだけど」


 ぽりぽりと頬を指で掻いて、俺はごろりと寝転ぶ。下から覗いたオイゲンの顔はくしゃくしゃで、涙に濡れていた。

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― 新着の感想 ―
ユリアンさん…攫われそうに!?その時はどうなって無事だったのか、気になりますが、無事で良かった!!怪我してたかもだけど!てか、怖!!この世界の治安、舐めてた(汗) ユリアンさんは、オイゲンさんの気持ち…
シュミット伯爵家の子供たちはみんなしっかりしてる。 この子たちと一緒に大きくなるんならレオンくんも将来安泰ですね。 ユリアンくんは、今回仕出かした子供たちと、なんだかんだ言いつつ仲良くなっていきそう…
オイゲン君は骨が浮いてるのはかなりまずくないか? ごはんたべなさい ユリアン君は本音と拳で語るいい子
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