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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

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256.王太后陛下のお誘い

 ティール侯爵は早々に夜会を辞した。というのも、奥様と次男が心配らしい。社交重視の貴族社会では珍しいけれど、妻子を優先する人は好印象だった。家族の支えがあるから、外で働いて結果を出せるんだもの。蔑ろにしないでほしいわ。


 会場内では小さな人の群れができていた。派閥ごとに集まる場合もあれば、話題の人物を取り囲んでいることもある。お父様達を探せば、さほど離れていない場所で囲まれていた。ケンプフェルト公爵家への繋がりを求めている人が半分、残りはフォンの称号持ちとの繋がり欲しさだろう。


 危なそうなら助けに行く、とヘンリック様が口にした。安心してお任せできる。私の肩か腰にずっと触れている夫は、近づこうとする貴族を威圧する。睨むので、遠巻きに人の輪ができた。


「おかぁ、しゃま……おとちゃま、いたいたい?」


 痛いたい? ああ、痛い痛いなのか尋ねたのね。


「違うわ。アナやユンもこちらへ」


 夜会の広間なのに、屋敷の応接室のように寛ぐ。このソファーセット、普通は置いていないわよね。ヘンリック様の指示かしら。


「アマーリア夫人、楽しんでらっしゃる?」


 マルレーネ様だわ。さっと立ち上がり、丁寧にゆっくりと一礼する。王太后陛下が微笑んで親しげに呼びかける。それだけで周囲の目の色が変わった。


「はい、お料理も音楽も、この会場の飾り付けも素敵です。マルレーネ様のお人柄でしょうね」


 いつもの調子で呼びかけ、慌てて言い直そうとした。王太后陛下なのに、人前でお名前を呼んでしまうなんて。不敬になる大変な失礼だわ。


「あのっ」


「とても嬉しいわ。私の大切なお友達に褒めてもらえるなんて」


 意味ありげに微笑み、訂正しなくていいと伝えてくる。貴族達は見た光景を手土産に、あちこちの群れへ合流していった。半数ほどに減った見物人を見回し、ヘンリック様が眉を寄せる。


「あなた、厳しくし過ぎないでください」


「わかっている」


 機嫌よく応じ、駆け寄ったレオンを抱き上げる。ランドルフ様が私の左隣に座ったため、レオンが手を伸ばして私の膝に移動した。抱き上げたのに逃げられてしまい、ヘンリック様の眉尻が下がる。


 向かいにマルレーネ様が腰を下ろし、双子は緊張の面持ちで大人しく両手を揃えて座った。ユリアン、左足も揃えて。合図を送れば、慌てて姿勢を正す。


「先ほどバルシュミューデ公爵夫人やリースフェルト公爵夫人と、お茶会の予定を決めてきましたの。明後日はいかが?」


 早くないですか? 思わず即答しそうになり、視線を彷徨わせる。予定は大丈夫だし、ドレスもあるわ。ちらりと視線を向ければ、ヘンリック様は驚いた顔のまま、こくんと縦に首を振った。


「ええ。どちらにお伺いすればよろしいでしょうか」


「温室にしようと思っているの。招待状を送るわね」


 膝の上のレオンは、ランドルフ様とお菓子を半分こにしている。緊張する双子はお菓子どころではなく、ちらちらと周囲に目を配っていた。人目を気にするユリアンなんて、珍しいものを見たわ。


「承知いたしました」


「本日は楽しんでらして」


 小さな子供がいるから早く帰るけれど、そう言ってもらえるのは嬉しい。笑顔で会釈し、別の集団に入っていくマルレーネ様の軽やかな足取りを見送った。


「明後日か。俺は仕事だ」


 肩を落とす夫が大きな犬のようで、私は頭を撫でたくなる。人前なので我慢だけど、後でたくさん褒めて撫でようと決めた。

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― 新着の感想 ―
ヘンリックさん、まだ大きな犬ポジションが!w可愛らしいって事ですよねwちゃんと父親だし、夫としても見て貰えてるし!でも大型犬w お茶会で、マルレーネさん以外とも友好が深まりそうですね! レオン君とラン…
首謀者親子は、初めから悪い子はいない理論なら、家庭環境に何かありそうですねえ。というか、子供が悪くなるのは家庭的に何かあるという自論です。人付き合いでも確かに悪くなりますけど、そもそも家庭・親子の関わ…
次回のお茶会が(o^・^o)めっちゃ楽しみ♪ 頑張れ!ママさん達! ストーリーがトントンと更新され《早く読みたい病》が癒して下さる作者様に心からの感謝を!
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