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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

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254.生まれついての悪人はいない

 お父様はエルヴィンと一緒に、社交に出かけた。苦手な社交を理由に離れるのは、ティール侯爵に気を遣ったのね。双子も一緒にどうかと誘われたが、ユリアーナは足が疲れたと断る。ユリアンは彼女への付き添いと、レオンを理由に首を横に振った。


 レオンはランドルフ様と並んで座り、私の指先をちょんと掴む。おそらくティール侯爵が私をいじめに来たと思ったのね。お菓子にも手を伸ばさず、じっと私を見つめた。


「大丈夫よ、レオン。私は強いんだから!」


 笑顔でそう伝え、安心していいと頭を撫でる。ヘンリック様は侯爵に頭を上げるよう伝えた。ここからは当主同士のお話……と思ったが、手を離してくれる気はないようで。


「アマーリアの意見も聞きたい」


「はい」


 言葉に出して強請られたら、断れないわ。ヘンリック様がソファーに座り、腰に回した腕で私が隣に引き寄せられる。命じるように着座を勧められ、ティール侯爵は恐縮しながら腰を下ろした。


 言い訳はしない主義のようで、ティール侯爵は淡々と息子の罪を詫びる。謝罪の場に妻子が同席しないことも重ねて頭を下げた。ふと気になる。


「あなた、少しよろしくて?」


 ヘンリック様と呼びかけて、あなたと呼び変える。嬉しそうに頷く夫の単純さに、あらやだ可愛いと心の中で呟いた。さすがに口に出せないけれど。


「オイゲン様はどう仰っていましたか」


 言い訳を口にしたのか、レオンを悪者にしたか。または素直に認めたのか。ここで彼の性格や性根が判断できる、と思った。ところが返答は予想外だった。


「帰宅後、部屋に閉じこもって一切反応しません」


「お食事は?」


「かろうじて、少量ですが」


 言いづらそうな様子から、無理やり食べさせている可能性もあると感じた。いじめた側なのに、まるでいじめられた側のような反応だ。


「侯爵夫人のご様子は……」


「多少取り乱しておりますが、大事ございません」


 躊躇いなく言い切られたことで、逆に確信してしまった。何かあるのね。


「謝罪を受け入れるか決めるのは、レオン自身です。当事者ですから、権利があります」


 幼子だろうと、未来の公爵家当主だ。そう伝えれば、ティール侯爵は神妙な顔で頷いた。


「不当な罰は与えない。これは約束する」


 心配になったのか、ヘンリック様が付け加える。ほっとした表情になった侯爵に、私の言葉が厳しく聞こえたのだと気づいた。レオンのことだから、少し神経質になっているのかも。


 深呼吸して感情を落ち着け、できるだけ柔らかな口調で切り出した。


「侯爵夫人とご子息のオイゲン様にお会いしたいと思います。時間を作ってください」


「承知いたしました」


 今度はきちんと真意が伝わったかしら。私に侯爵家の皆様を罰する気はなくて、心配しているのだと。ちらりと隣を見上げれば、ヘンリック様は微笑んで頷いた。


 お茶会の日、騒動を大きくしないため、息子を守るため。侯爵夫人は咎められるのを承知で中座していた。変に思い詰めていないといいけれど。


「これ、うまいぞ」


「ん……おいちっ」


 ランドルフ様が見つけたお菓子を、レオンと分け合っている。ユリアンも美味いと菓子を頬張り、呆れ顔のユリアーナがハンカチで頬の欠片を拭いた。仲睦まじい姿に口元が緩んだ。


 どんな子でも、生まれついての悪人はいない。きちんと話してみましょう。それでダメなら、そのとき考えて対処すればいいわ。

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― 新着の感想 ―
2周目、感想。 この時点では問題児扱いしかされてなかった次男坊君が少し後にはゴニョゴニョ〜……だもんなぁ。うん、スゴいですわ。
オイゲン君は正念場 会う前にはきちんと身だしなみを整えてね 礼節、わかるかな?
本人達から意見を聞いて、公平に対応して判断する。分かっているんですけど、自分の子供や関係者がいじめられてってなったら、正直難しいと思いますねぇ。というか出来なかったですねぇ。 前世分の経験や、ヘンリッ…
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