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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

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253.ティール侯爵家のお詫び

 そろそろレオンと合流して……と振り返ったところに、声がけがあった。貴族同士、爵位が二つ以上離れたら、自由に声がけはできない。私達は公爵家だから、話しかけるのは伯爵家以上となる。くだらないルールに思えるが、夜会で見知らぬ人に次々話しかけられる可能性は減るわね。


 すでに親しい場合や親族なら、このルールは適用されなかった。こういったルールやマナーは複雑すぎて、学ぶだけで何年も掛かる。それこそが貴族社会を複雑にして、同時に特権意識を植え付けた。自分達が選ばれた存在と、勘違いしてしまう。


「ケンプフェルト公爵閣下、公爵夫人。お詫びをさせていただきたく、お時間をいただけますでしょうか」


 一人の男性が静かに頭を下げた。声がやや震えている。ヘンリック様の腕が私を引き寄せた。


「ティール侯爵か」


 聞き覚えがある家名だった。バルシュミューデ公爵家のお茶会で、レオンを揶揄った少年の家だ。取り巻きを連れ、同じく公爵家令息のランドルフ様にも無礼を働いた。


 ただ、あの件はいい教訓となった一面もある。幼子を守るために動いたランドルフ様やエルヴィン、取り巻きの無礼を咎めたユリアン。一番幼く言い返せないレオンを庇ってくれた。勉強や礼儀作法の授業では覚えられない、貴重な体験だろう。


 あの子は、オイゲンという名前だったかしら。ティール侯爵夫人と参加して、すぐに彼女が連れ帰ったはず。はっとした。夜会の場で謝罪を申し出た侯爵が、夫人を伴っていない。夜会は基本的に夫婦同伴なのに。


「ティール侯爵夫人は、どうなさったのですか」


 何かあったのか。それとも他の家に挨拶しているだけか。この世界で女性の地位は高くないから、嫌な予感がした。公爵家への無礼の罰として、必要以上に辛い目に遭っていたら? 腕を絡めるヘンリック様の袖を強く握った。


「妻は会わせる顔がないと言って、今日は休んでいます」


 屋敷にいると聞いて、ほっとした。掴んでいた袖が緩む。ヘンリック様は私の肩に手を回し、優しく撫でた。


「ティール侯爵は実直で、愛妻家としても有名な文官だ。安心していい」


 文官ということは、ヘンリック様の部下になるのね。よく知っている人と聞いて、体から力が抜ける。情けなくへたり込まずに済んだのは、ヘンリック様の腕のお陰だ。厳しい貴族の話も知っているから、すごく怖かったわ。


「おかぁ、しゃま……」


 とてとてと走るレオンは、左手をランドルフ様と繋いでいる。駆け寄って私の手を握り、ティール侯爵を睨んだ。


「ぼく、の……おかぁしゃま! めっ、なの」


「ありがとう、レオン。頼もしいわ」


 いじめないで。そんな言い方をされたら、嬉しくて泣いてしまいそう。ヘンリック様が腕を緩めたタイミングで、レオンを抱き締めた。抱き上げたいけれど、ドレス姿だと難しいのよ。特に今はショールもなく、肩や胸元が開いている。


 うっかり色々見えちゃったら、大事件だった。ぎゅっとして、レオンは私の前に立とうとする。


「まずは……壁際に移動しよう」


 周囲の注目が集まり始めたことに、ヘンリック様が提案した。衆目の前でティール侯爵を辱める気はないので、私も同意して歩き出す。腰に腕を回して歩くヘンリック様は、歩幅を小さくしてレオンにも配慮した。


 シュミット伯爵家が食事を楽しむ一角で、ティール侯爵は緊張した面持ちで切り出す。


「この度は、次男オイゲンがご迷惑をお掛けし……誠に申し訳ございませんでした」

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― 新着の感想 ―
レオン君!立派な騎士様! 愛妻家…なら、奥さんが理不尽な目にあう事は無いか~。ちょっと安心!酷い家だと、全部奥さんのせいにして、理不尽な事するようだし(汗)
紳士レオンくんかっこいい!
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