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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

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249.不安で孤独な友人が愛おしい

 マルレーネ様の侍女が迎えに来たので、私はさっと身なりを確認して付き従った。さすがに侍女を連れていくのは失礼なので、私だけ。ヘンリック様は心配そうだけれど、夜会まで休んでいてほしいわ。私だけでは到底、あの貴族の群れを捌けないもの。


 レオンもよく眠っているので、マーサに任せた。侍女は途中で扉を二つくぐり、絨毯の色が違うエリアに入っていく。壁紙もよく見たら違うんだわ。同じ白だけれど、奥のスペースは乳白色だった。柔らかな印象を与える壁紙や絨毯は、どこか新しさを感じる。


「こちらでございます」


 示された扉が開き、中から誘う声が聞こえた。


「アマーリア夫人、どうぞ」


「失礼いたします」


 乳白色の柔らかな白が中心の部屋は、私的なスペースなのだろう。家具は白木が中心で、飾り金具は艶消しの金色だった。絨毯は深緑でカーテンは薄緑、濃淡で変化を生み出している。薄いオレンジのクッションが並ぶソファーは、白木と臙脂色の座面だ。そこへ腰掛けるマルレーネ様は、髪を結い直していた。


 緑とクリーム色が中心の部屋に置かれた臙脂のソファーは、目立つのに不思議な調和をみせる。センスがいいのね。感心しながら、丁寧に挨拶をしてお祝いの言葉を述べた。二度目の促しに、ようやく腰を下ろす。


「レオンはどうしたの?」


「控え室に用意したベッドでお昼寝を」


「あら、ルイーゼと同じね。実はローレンツも疲れて眠ってしまったのよ」


 おほほと笑いながら明かすマルレーネ様は、以前より顔色がよくなられた。血色がいいのはもちろん、肌艶も増している。ご子息が王位を継がれたんだもの、前陛下の不幸が陰を落とさなくてよかったわ。


「マルレーネ様がお忙しいのではと心配しておりましたが、元気そうなお顔を拝見して安心しました」


 少し砕けた口調で話しかける。この方は本来、もっと自由な性質なのだろう。堅苦しい王妃や王太后の地位より、どこかの貴族夫人として好きに振る舞うほうが向いている。でもご自分の責務や立場を理解して、律しているのは見事だった。


 友人という立場を許され、アマーリア夫人として親しくする私が「王太后陛下」なんて堅苦しい呼び方をしたら、泣いてしまいそうね。不敬にもそんな思いが過った。


「あら、堅苦しい言い方をして。自由にして頂戴。私とあなたの間で、不敬なんて存在しないのよ」


「では、そのように」

 

 ふふっと笑い合い、子供達を含めた近状を交換し合う。ルイーゼ様はレオンと遊びたいようで、王宮に呼べないなら自分が出掛けると騒いだらしい。もうすぐ公爵家にも温室が出来るので、完成披露がてらお招きする約束をした。


 バルシュミューデ公爵家のランドルフ様と仲の良いローレンツ様は、ユリアンの話を聞いて会ってみたいと口にしたとか。初めての友人エルヴィンに距離を取られるのではないかと、カールハインツ陛下が心配しているとか。


 小さな悩みなのに、地位や立場が絡むと大きな問題に思える。それを母親同士で紐解いて、単純な出来事に戻していく。


 ローレンツ様はユリアンやランドルフ様と遊んだらいいわ。ランドルフ様はレオンも誘いたいそうだから、ルイーゼ様もご一緒したらどうかしら。カールハインツ様に関しては、もう……エルヴィンと二人っきりにしてみましょう。きっと誤解も消えるから。


 他愛のない話を終え、マルレーネ様は泣きそうな顔で尋ねた。


「私達、ずっとお友達でいられるわよね?」


 当たり前なのに声に出して確かめたいくらい、この方は不安で孤独なのだわ。お気の毒に思いながら強気な言葉を選んだ。


「もちろんです。マルレーネ様が嫌と仰っても離れてあげませんからね」

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― 新着の感想 ―
アマーリアさんとの友情はずっとずっと!不滅です!立場のせいで、孤独だったんですね…。子供達も交流出来そうで色々楽しみです!
マルレーネ様。王妃の立場的に疎遠になった以外にも、人柱になったせいで失った人間関係がたくさんあったのでしょうね。そもそも、ただでさえ公爵令嬢で幼い頃から人柱教育でまともな人間関係が少なかったでしょうに…
女の友情は色褪せない厚い友情です。猫作者さんとワンツーマンで小人は猫ダンスの練習をします。
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