表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

219/701

219.狭くて小さな世界の中で

 夕食時に、お父様から同行すればよかったなと謝られた。絨毯の部屋にユリアーナが来なかったのは、着替えがてらお父様に説明していたのね。気にしないよう伝え、すべては明日以降にしましょうと話を打ち切った。


 誰かが謝り始めると、全員が交互に謝る事態になるんですもの。キリがないわ。今回の事態は誰か一人が悪いのではなく、ある意味、予想済みの洗礼みたいなものだった。人間同士が集まれば、派閥ができて対立する可能性がある。それが子供なら、好き嫌いを表に出すので衝突しやすかった。


 多少の喧嘩は予想していたのよ。それでぶつかって、最終的に仲直りして友人になれたら問題なし。軽く考えたのは、前世の記憶が大きい。でも、爵位がない世界とは違うわよね。ユリアン達が平民と仲良く遊んでいたから、私の中で地位は重要視されなかった。


 甘かったわ。立場や爵位を振り翳して、周囲を巻き込むパターンもあるのね。子供の喧嘩なのに、家同士の問題に発展する恐怖は大きかった。ティール侯爵家の奥様、悩みすぎないといいけれど。早めにご連絡して会う手配をしなくちゃね。


 お風呂に入る時も、その後の就寝までの時間も、レオンは私にべったりだった。離れそうになると、必死で掴む。その手を振り解くことができなくて、ついにおトイレまで。手を繋いだまま、扉を半分閉めて入ることになった。ヘンリック様が代わろうと申し出たけれど、レオンが嫌がる。


 このままになると困るが、数日なら構わないわ。まだ甘えて泣いてぐずる年齢だもの。怖い夢を見たり、恐ろしい思いをしたり、その度に甘えればいい。手を繋いでベッドに横になり、普段はそれでいいのに……もぞもぞと上掛けの中を移動してくる。


 無言で見上げて訴えてくるから、いいわよと微笑んで抱きしめた。胸元に顔を埋め、レオンはようやく目を閉じる。向かいでこちら向きに寝転がったヘンリック様が、へにゃりと眉尻を下げた。


「よほど怖かったのだな」


「ええ。子供の世界は狭くて小さいですから。知らない子がずかずか入り込んで壊したら、心がヒビ割れてしまいます」


 レオンが特別に繊細なのではなく、子供は誰もが敏感で臆病なのだ。周囲の変化に怯え、平和で居心地の良い環境を守ろうとする。防衛本能は、知らないものを拒絶することもあった。人見知りもその一例ね。成長すれば徐々に緩和され、変化を受け入れて楽しむようになるけれど。今はまだ早い。


 小声でそんな話をする。ヘンリック様は「そういうものか」と受け止めた。本当に素直でいい子なんだから……ふふっと笑い、私はレオンの黒髪を何度も撫でる。羨ましそうな視線に気付き、手を伸ばした。素直に頭を差し出され、よく似た髪質のヘンリック様も撫でる。


「今日はありがとうございました、ヘンリック様」


「おやすみ、アマーリア」


 おやすみなさいと返しながら、目が閉じていく。やだ、自分で思うより疲れていたみたい。完全に意識が落ちる前、額に触れた柔らかな温もりに心がざわついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
素直でいい子…ヘンリックさんが?やっぱり子供枠wたまに大型犬!でも、最後のは、アマーリアさん稀に恋愛的な意識をしてる??? レオン君、早く落ち着くと良いですが…。段位があると、面倒いですね(汗)
おやおや? ヘンリックさん勇み足では?w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ