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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

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209/700

209.順番が逆ですわ

「ヘンリック様、それなら順番が逆ですわ」


 私が切り出したことで、ユリアンから話を聞くと勘違いしたらしい。眉を寄せるから、この人の政での公平さを改めて認識する。こういう正しさは、とても好ましいわ。


「まず、ユリアンが危害を加えた三人のうち、一番爵位が低い者から話を聞くべきです。なぜなら上位者が先に話せば、下位の者はそれに合わせた話しか出来ませんから」


 忖度というやつよ。前世で一時期流行った言葉だった。(おもね)るも近いわ。伯爵家の三男が言えば、子爵家や男爵家の子は合わせるしかないの。笑顔できっちり逃げ道を絶った。先に男爵家から、その意見にユーリア様が賛成する。


「私はアマーリア様の方法を支持するわ」


 穏やかに微笑みながら、ユーリア様が追い詰める。異論は認めないと厳しく伝えた。表面上は平和なのに……これが貴族夫人の社交なのかしら。ちょっと怖いわ。いえ、ユーリア様は優しさと私の味方だから、驚いたくらいの表現がいいかも。


「では、シラー男爵家から聞こうか」


 ヘンリック様はあっさりと方針転換した。人の意見を撥ね除けないところが好きよ。


 シラー男爵家の少年は、次男だという。寄親である上位貴族の側近として、ティール侯爵家の次男に仕えた。頷くユーリア様が補足する。


「さきほど無礼を働いてお帰りになった方々ね」


 なるほどと頷いた。あの侯爵家の次男が騒動を起こし、この子達は巻き込まれたのかもしれないわ。側近なら諌めるのも仕事だけれど、自分より立場が上の人間に意見するのは勇気がいる。まだ子供だし……。


「オイゲン様は……その……坊ちゃんが公爵家の人だと知らなかったと思う。だって見下した発言をしたんだ」


 そこまで話して、うわっと怯える様子を見せた。睨んでいたヘルダー伯爵の三男を遠ざける。


「まだ立場が理解できていないようね。誰の屋敷で、私の邪魔をしているのか……」


 ユーリア様は意味ありげに言葉を止め、扇を広げた。顔の下半分を隠し、目をすぅと細める。お美しいだけに、怖さも倍増だわ。そういえば、ケンプフェルト家は筆頭公爵でも夫人がいなかった。社交界を牛耳る公爵夫人の噂って、ユーリア様のこと?


 王妃マルレーネ様との会話を思い出しながら、私はシラー男爵令息に下がってもいいと伝えた。壁際へ張り付く形で震える息子を、同行した父親が引き寄せる。きちんと証言した息子を誇らしげに、強く抱きしめた。その姿に、あの親子は大丈夫と安心する。


 次は子爵家ね。こちらは何を話すのか。ある意味、楽しみになってきたわ。

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― 新着の感想 ―
格上の貴族相手に問題行動を起こして謝罪もせず帰るとは… 公爵2家に対して無礼すぎだと思います 面白いので何回か読み返していたせいで、少々気になったことが 92話だと6歳の子息がいるのはリースフェルト…
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