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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

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192/700

192.黒い鳥の封筒が一通

 国王陛下は現在、離宮で暮らしている。そう聞いていた。そこに舞い込んだのは、崩御の一報だった。黒い鳥のスタンプが押された封筒は、不幸があったことを示す。夕食後の団欒中に持ち込まれた手紙に、お父様や弟妹も無言になった。


「そう、お亡くなりに……」


 自分勝手で嫌な人でも、亡くなったのに悪く言うのは気が引ける。日本人だった過去が、そうさせるのよね。こちらの世界では、そういった風習はなかった。ヘンリック様はようやく身軽になったと安堵の息を吐く。次代のカールハインツ様を支えるにしても、今までよりやり甲斐がありそう。


「死因は……食中毒だな」


「毒見役の方はご無事なの?」


 もう一人不幸があったのでは? と心配になって問う。すると意外な答えが返ってきた。


「もう退位される身ゆえ、毒見はつけなかったらしい」


 潔いのかしら? でも毒殺じゃなく、食中毒だなんて。まあ、他に犠牲者がいなくてよかったわ。


「カールハインツ様の即位がもうすぐだ。この件は、公爵家までに留める。即位式の後、身内だけで送別を行うとある」


「ヘンリック様はどうなさるの」


 身内という表現なら、再従兄弟は含まれるだろうか。妻の私は行かなくてよさそうだけれど、マルレーネ様の様子も気になる。


「行く必要はないな。マルレーネ様からの追伸が入っていた。お茶会は予定通りに来てほしいと」


 折り畳んだ手紙の一番下に追記された部分を見せられ、読み上げた通りの文章に頷く。きっと気持ちが乱れておいでなのね。友人として、ここはしっかり支えないと!


「わかりました、お伺いしますと返信してください」


「るぅ? ぼく、いけうの?」


 ルイーゼに会いに行けるのかと不安がるレオンに、会いに行くのよと話した。マルレーネ様次第だけど、幼いレオンに不幸を知らせる必要はない。


「我々は聞かなかったことにしよう。いいね? エルヴィン、ユリアン、ユリアーナ」


 一人ずつ念押しするお父様に、三人は神妙な顔で頷いた。うっかり国家機密を知ってしまったみたいに、挙動不審だわ。ピアノやバイオリンを教えてもらうのは、少し先になることも説明した。素直に受け止めるが、ユリアンが表情を曇らせる。


「家で弾くのもダメ?」


「構わないわ。だってあなたは何も知らないんだもの」


 どんな曲を弾こうと自由よ。公爵家からピアノの音が聴こえても、誰かが咎めることはないでしょう。微笑んでそう伝えると、ホッとした様子で胸を撫で下ろした。


 ピアノは、一日弾かないと数日分後退すると言われているから、好きなだけ練習したらいい。最近はそれなりに上手になってきて、両手で器用に旋律を追っているのよね。


「ぼくも、ちんぱる、やる」


 ちんぱる……シンバル。子供の言い間違いを頭の中で訂正し、レオンの黒髪を撫でた。私もリハビリに精を出すとしましょうか。


「ヘンリック様はお仕事ですか?」


「そうだな。机の上にこんなに溜まっていた」


 苦笑いしながら、こんなだぞと手で胸の高さを示すヘンリック様。ユーモアがおありなのね、そんなに書類を溜める王様なんて聞いたことないもの。

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― 新着の感想 ―
小人は、臨時の墓守としてザクザク掘ります。テキトーに穴掘って埋めれば良いのです。棺の顔だけ少し開けといて、油性マジックで【愚王】と額に書いてと……ヘンリックさん一家にはやっと解放された幸せを味わって欲…
王族が食中毒とか普通に考えればありえないですが… 友人(or妻)、子供たちには優しい世界で生きていてほしいという配慮ですね
ちんぱる(*´▽`)♪ 旦那様はおそらく事実を言っている···
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