表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

191/700

191.手を汚すのは私よ ***前侯爵夫人

 私の可愛い娘、マルレーネ。フェアリーガー侯爵令嬢として生まれたばかりに、苦労を背負わせてしまった。夫に逆らって娘を逃がせばよかったと、何度後悔しただろう。


 貴族令嬢は家のために、より高位の家に嫁ぐことを義務付けられる。稀に利害関係と恋愛が一致する幸運な女性もいるが、そんなのは物語になるほど限られた人だけ。事実、私も夫に嫁いだのは家同士の繋がりだった。


 可もなく不可もない。そんな夫との間に息子と娘を授かり、ある日運命が狂った。将来、フェアリーガー家が繁栄するため? 貴族女性最高位である王妃になれるから? 後付けの理由など要らない。王の唯一の息子、あの考え足らずを支えるための犠牲にされるだけじゃないの。


 何度も抗議した。王に陳情もしたし、実家であるシントラー侯爵家からも申し入れをした。バルシュミューデ公爵家は王に苦言を呈したが、決定が覆ることはなかったわ。理由が、他に王妃になれる女性がいないから、よ。


 リースフェルト公爵家は、ご令嬢を他国の貴族へ嫁がせる手配をした。王太子の資質に不安を感じ、国の犠牲にされるくらいならと他国へ送り出したの。バルシュミューデ公爵家に釣り合う年齢のご令嬢はいない。筆頭公爵であるケンプフェルト家は、跡取りである一人息子が王の側近とされた。


 自国の公爵家に王妃候補がいないなら、他国は……と思ったがすでに断られたらしい。噂は他国にも広まり、娘を犠牲にする気はないとどの国も首を横に振った。そうなれば、自国内で探すしかなく……先代王が白羽の矢を立てたのが、フェアリーガー侯爵家だったわ。


 跡取りとなる息子がいて、その下の妹は王家に差し出せるだろう、と。賢かったのも、外見が整って愛らしかったのも、すべてが裏目に出た。自慢の娘が王妃候補として召し上げられると決まったとき、お茶会で顔を合わせる友人から慰めの言葉をもらった。


 誰もが「お気の毒に」と告げる。そんな婚約に縛られ、娘マルレーネの笑顔は消えた。ぎこちなく大丈夫と告げる彼女が、可哀想で仕方ない。逃がす方法はないかと模索し、誰か代わりを探そうと努力し、それでも間に合わず結婚してしまった。


 案の定、あの子は苦労している。外交をすべて王の代理として請け負い、内政の執務はケンプフェルト公爵に押し付け、自分は好き勝手している。王族とはそれほどまでに偉いのか! 義務を果たさず、権利を貪るほど?


 夫に抗議するため執務室へ向かい、偶然聞いた浮気話に愕然とする。王子二人、王女一人を設けた娘を蔑ろにする行為を、夫が斡旋した? 平民の女を宛がい……そこで涙が溢れる。息子は宰相として働き、娘も王妃という肩書で奪われた。それでもさらに貶めようというのか。


 王宮へ乗り込み、元凶であるあの男を始末しよう。娘マルレーネも孫達も、まだ未来がある。カールハインツの治世に影を落とす存在は不要だった。ローレンツやルイーゼを苦しめる男など許せない。


 平民の女性が先に食べないよう、あの男の好物である海老に毒を仕込んだ。酒と合わされば助からない毒をたっぷりと塗し、王宮へ向かう。手足が痺れて動かなくなり、言語も発せられない。けれど即死できないよう調合させた毒で倒れる離宮の主を放置して。表から堂々と入り、正面から前侯爵夫人として退出した。


 見上げる先の空は青く、どこまでも高く遠い。それが私の行為を祝福していると感じ、頬が緩んだ。待たせた馬車に乗り込み、王宮を後にする。マルレーネ、思うまま幸せに生きなさい。あなたの手を汚す価値のない男は私が片付けたから、綺麗な手で新王カールハインツを導くの。


 ああ、なんて素敵な日かしら。もっと早く処分すればよかったわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
素敵すぎるお母様です!なんで、あんな駄目な男の元に嫁ぐ事に…。貴族だからしょうが無い…のか?まあ、それで息子さんや娘さんが産まれたんですけど。酒に毒だと思ってたら、海老の方ですか!なんにせよ、良かった…
無能王様で暗殺されたら、反省のため息子の守護霊にとかで反省編も、、、ないかあ。クリスマスキャロルなみに改心編も読みたいような(笑)
 国の実権を握っているのはマルレーネ様とヘンリック様なので、王の死因は死因は毒殺ではなく、心不全、で片付けられてしまう訳ですね…。  王としての仕事をしないから、こういうことになるわけですよね。秦の二…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ