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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

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190/700

190.俺は王の子だ ***SIDE国王

 王の子は王になる。至極当たり前のことで、俺は何も疑問に思わなかった。父が俺の不出来を嘆いたとしても、他に跡を継ぐ息子はいない。外から血を入れれば薄まるため、父上は養子を嫌った。


 用意された側近候補は、真面目で頭が硬い。公爵家出身で、俺より出来がいいなんて不敬だ。それらを遠ざけたら、今度は侯爵家から選ばれた。俺を褒めちぎる一人を残し、また追い払う。勉強しろだの、王子らしくだの。そんな説教は聞きたくなかった。


 耳に優しい言葉をくれる者を周囲に並べれば、居心地がよい。面倒な執務はすべて再従弟(はとこ)に押し付けた。とにかく真面目で顔がいい。父上のお気に入りで、何かと気に食わなかった。俺よりヘンリックがいいと、令嬢達は平然と口にする。


 男は元気過ぎるくらいでちょうどいいだろ。そう思ったが、剣技はヘンリックの方が上だった。年下のくせに生意気だ。学院に通い始めて、同年代と比較されるようになる。王子は次の王で貴族の頂点に立つ存在だぞ。俺より上の成績を取る奴らは不敬だ、と騒いだ。


 俺の評判はよくないらしく、婚約者候補が数人いたが辞退が相次いだ。ようやく俺の婚約者が決まったのは、父上の側近フェアリーガー侯爵が娘を差し出したからだ。王族と縁続きになりたかったのだろう。


 見た目は可愛いし、大人しそうだ。俺より目立つなと言い聞かせ、放っておいた。どうせ大人になれば結婚するのだから、それまで構う必要はない。彼女は最低限、決められたお茶会以外は顔を見せなかった。後で知ったが、王妃教育が膨大な量だったらしい。


 俺と結婚するお陰で、王妃になれるのだ。感謝しながら俺の分まで学べ。そう口にしたら、彼女は何も返事をしなかった。失礼な女だ。しばらくお茶会を中止してやった。それでも謝ってこない。なぜか父上に俺が叱られる羽目になったじゃないか。





 ふと目を覚まし、周囲を見回す。見慣れた王宮より天井が高い離宮は、どこか寂しく感じられた。隣の温もりは、平民の女だ……何といったか。名前は思い出せないが、欲を満たすのに最適だった。大きな胸と尻、高貴な生まれの俺を敬う姿勢が素晴らしい。


 記憶を辿るような夢を思い出し、眉根を寄せた。なぜ俺が退位させられたんだ? 何も失態を犯していないし、子供や妻も養ってやっただろう。何度考えても納得できない。


「朝食のお時間でございます」


 いつもの侍女ではなく、年嵩の女が料理を運んできた。見たような顔だが、思い出せない。丁寧に並べられたテーブルの上には、俺の好物の海老がふんだんに使われたサラダがあった。引き寄せて食べ始める。平民の女には残り物を与えればいい……隣の酒を煽った直後、激痛が走った。


 何が起きた? どうして血が……口、いや鼻からも溢れるのか。視界が赤く染まり、やがて色と明るさが抜けて暗くなった。寒くて痛くて声も出ない。


「私からマルレーネを奪ったくせに、大切にしなかった罰よ。苦しんで死になさい」


 年嵩の女の声……ああ、思い出した。この声は王妃の……。俺の意識はここで途絶える。後悔する間もなかった。

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― 新着の感想 ―
そうだね、毒杯をタマワレテヨカッタネー もう、元王様だしねー きっと、元王様はご病気でご逝去されるんだろう 新国王の即位は国王がご逝去されたなら、仕方ないねー 好きなものを食べた後で良…
王妃の母親か、生きてたんだな。 これは退位後の話なのかな?正式な退位前に死んだら結構問題だよな。
何もしていないのだから、失態を犯しようがない。つまりそれっていなくなってもらっても全く困らないという意味でもあるわけで…
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