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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

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164.小さな疑問の棘と猫の真似

 一日のうち、二時間ほど。ヘンリック様は仕事で書斎に閉じこもる。王宮の仕事を休んでも、領地の仕事があるのかと思った。でも違うみたい。そう感じた理由は、王宮から届く手紙よ。こっそりと王宮から仕事が回されているのでは? と疑うほどの頻度だった。


 ベルントにそれとなく確認したけれど、言葉を濁すのよ。ヘンリック様に口止めされているのかも。


「おかぁしゃま。どうじょ」


 居間のソファに座るレオンが、小さな手でカップを差し出す。中身は入っておらず、豪華な食器を使ったおままごとだった。


「美味しそうね、いただくわ」


 カップを手に取り、飲むフリをする。レオンは満面の笑みで、今度はお皿を押した。


「これも、どうじょ」


「まあ、こちらもいいの? 嬉しいわ」


 お皿を引き寄せて、こてりと首を傾げる。レオンが手を動かして摘む仕草をしたので、茶菓子だろうと当たりをつけて宙を摘んで口に運ぶ。向かいでは、ユリアーナが花を並べていた。おままごとに使うのではなく、押し花を作るらしいわ。


「あにゃ、なぁに? ぼくも」


 何をしてるの、僕も! 子供らしい好奇心で、すぐに別の遊びに飛びつく。おままごとは終わりみたい。手招きして、リリーに片付けてもらった。陶器なので重いし、割ると危ないわ。


 うにゃぁ……。濁点がつく一歩手前、微妙な声でミアが鳴いた。リリーの開けた隙間を利用し、入り込んだのね。寝室に侵入したあの日から、我が物顔で別邸を闊歩している。


「あ、にあだ」


 ミア……にあ。うん、似ているわ。ご機嫌のレオンは、押し花の準備をするユリアーナから興味が逸れた。そのまま猫に向かって一直線だ。茶トラの大きな猫は、すぐにレオンに追いつかれた。のっしのしと歩くミアの背中から、お腹へと腕を回す。


「レオン、ミアが嫌がったら離すのよ」


「うん」


 まあ、ミアは大人しいから我慢してくれると思うけれど。一応動物だから、怒ったら爪を立てるかもしれないわ。軽い引っ掻き傷程度なら、勉強と思うべきよね。こういう時に、すぐ動けない状態は辛かった。足の骨、すぐに治ればいいのに。


 ミアは抱き上げようとするレオンに、抵抗せずに従った。でもやっぱり大きくて持ち上がらない。べろんと伸びた状態で、不満そうな顔をした。表情豊かな猫だわ。尻尾が大きく左右に揺れ始めるが、爪や牙は出ない。


「レオン、ミアが疲れちゃうわよ」


「ちかれた? にあ」


 話しかけられても、猫は無言だ。ただ尻尾は雄弁だった。そろそろ下ろせと訴えている。


「お? また捕まったのか、どんくさい奴」


 ユリアンがミアを揶揄うが、近づいた途端にシャーと威嚇された。どうやら寛容に振る舞うのはレオン相手だけみたい。おかしくて笑うと、ユリアンがぷくっと頬を膨らませた。


「さきほどの言葉遣いはダメよ。もしレオンが覚えたらどうするの」


 不貞腐れても拗ねてもダメよ。言い聞かされたユリアンは、渋々だけれど「ごめんなさい」をしたので許した。同時に、重さに耐えかねたレオンから、ミアも解放される。


 ぶにゃぁ。礼か、挨拶? レオンを振り返ったミアは濁声で鳴いて、暖炉前の暖かな一角で丸くなる。追いかけたレオンが「にゃぁ」と小声で鳴き真似をして、同じように転がった。可愛すぎて、鼻血が出るかと思ったわ。

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― 新着の感想 ―
レオンの教育上よろしくないから、そろそろ双子ちゃんもこれまでより厳しく教育したほうが良いんじゃないかな?(;・∀・) 特にユリアンの言葉遣いは拙すぎるでしょ(;・∀・)
ミアとレオン君、天使が二人いる!一人と一匹?とにかく、可愛い! ヘンリックさんのお仕事…馬鹿を落とした後の根回し?馬鹿をどっかに押し込める準備?順調に進むと良いな…。アマーリアさん達に問題が降りかから…
おままごとからお花に猫と戯れる天使···かわいい。シャーされちゃったユリアン(笑)
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