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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

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143/700

143.ようやく自覚した ***SIDE公爵

 髪を巻いたアマーリアに見惚れる。いつも綺麗な彼女だが、今日は格別だった。素直に手を伸ばすレオンが羨ましい。だが淑女の装いに、勝手に触れるのはマナー違反だろう。グッと堪えた。


 レオンに付き合って絵を描き、屋敷の風呂にはない湯の滝を説明する。興味があるようなので、誘ってしまった。あれは失敗だ、アマーリアも恥ずかしがっている。なぜ一緒に入ろうなどと……ああ、そうか。俺はレオンが触れたように、アマーリアに触れたい。


 髪も肌も、気高い心まで。すべて俺のものだと主張したいのだ。今さら気づいたとて、もう遅いのに。だが契約は状況の変化によって更新や変更もあり得る。国同士の外交や不戦協定ですら、変更が多々あった。ならば、申し出てみるか。


 そわそわしながら、相談役のフランクの不在を恨めしく思う。本邸を離れられない職務なのは理解するが、いまは居てほしかった。ベルントに相談するか? ちらりと視線を送り、一緒に部屋を出た。もちろんアマーリアとレオンに挨拶は忘れない。


 アマーリアは礼儀正しい人を好むようだ。義父上も同じだった。それに加えてお人好しなところも、そっくり同じだ。シュミット伯爵家が没落寸前だった理由が、ここにある。伯爵家に収入がないのは、領地が少ないから。男爵家並みの狭い領地しかなかった。


 義父上か、その上の代で誰かに掠め取られたのだろう。残った領地に派遣した管理人は驚いていた。伯爵家があれほど困窮した生活をしているのに、民は潤っていると。取るべき税を減らし、民の生活の安定を図るのは優しさではない。


 領主に金がなければ、災害の復旧や道路の整備の資金をどこから捻出するのか。その点が考慮されていない。シュミット伯爵家のお人好しは悪い方へ働いていた。本来、人としては美徳であるのだが。


 ああ、考えが逸れた。まずは契約書の変更……いや、そのためには使用人達に、契約結婚の事実を話さなくてはならない。考えながら自室へ入り、扉を閉めたベルントと向き直った。


 己の過ちを認めたら、すぐに是正すべきだ。政の判断で当たり前に行なってきたのに、私的なことになると口が重い。アマーリアは使用人達の信頼を得ており、人気が高かった。軽蔑されるか、怒られるか。


 緊張しながら、乾いた唇を湿らせた。


「実は……だな、その……」


 言い淀んで、無駄に咳払いをする。軽蔑の眼差しがなんだ! それだけのことをしたのだから、覚悟を決めろ。自分に言い聞かせ、待っているベルントに視線を合わせた。大切な話をするのに、目を見ずに話すなど失礼だ。そんなことも忘れていた余裕のなさに、口元が歪んだ。


「アマーリアとの結婚は、契約に基づく……偽装夫婦だった、んだ」


 怖いが目を逸らさず、最後まで言い切った。ベルントは激昂するでも呆れるでもなく、静かに頷く。


「存じておりました」


「は? え、あ……いつ、から」


「結婚式まで、奥様との交流の話が一切ございません。当日も仕事を優先なさいました。家令も侍女長も、悲しんでおられましたよ」


 両親の代わりに話しかけ、使用人の範疇内で愛情を注いでくれた。あの二人を……俺は悲しませたのか。胸にじくじくとした痛みが広がった。

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― 新着の感想 ―
契約変更ですかー…。 偽装結婚から恋を自覚しての契約変更モノが多くて辟易してまして。こちらは『本気の溺愛や恋愛はお断り』と書かれていたので、旦那様が後悔しようが契約変更はないと思っていたんですが…。 …
使用人の範疇内『最大値』で愛情を与えてくれた方々だからね そりゃ見抜いてるよ 喜ばせてあげないとね
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