表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/700

142.そういえば契約だったのよ

 レオンを間に挟んで眠るのも、朝目覚めて化粧もなしに挨拶するのも、毎日一緒に食事を摂るのも。緊張したのは数日で、すぐに慣れてしまった。弟妹の面倒を見るのが普通だった私の生活は、結婚を機に大きく変化している。


 幼い継子レオンと出会って、その可愛さに心を奪われた。留守で稼ぐ夫は、いつの間にか日常に食い込んでいる。家族の悲惨な生活も改善され、私は幸せを実感した。


「恵まれ過ぎているわ」


「一般的な意見を申し上げても?」


 化粧を施すリリーが口を挟み、私は大きく頷いた。ヘンリック様は自室で支度を整えているし、レオンはマーサと積み木で遊んでいる。いまは私の身支度にリリーが奮闘中だった。


「結婚式で奥様を放置した旦那様に対し、奥様は甘過ぎます。私でしたら、絶対に許しません」


「ふふっ、そうね」


 笑ってしまう。契約結婚だと知らなければ、リリーのように怒ったわ。でも家族の窮状を救ってくれる人がいて、私が少し我慢すれば話は終わり。嫁いでみたら、想像より幸せな生活と可愛いレオンが待っていた。何も不満はないのよ。


 契約結婚の部分を除いて、リリーに説明した。彼女はうーんと唸る。その間も手を止めないのは、見事だわ。くるくると髪を巻いて、コテで熱をかけていく。


「確かに若君の母親になるのは、素敵です」


「そうでしょう? あんなに可愛いんだもの。愛さずにいられないわ。それにヘンリック様も、未来のレオンだと思ったら可愛いでしょう?」


「……奥様の最後の意見には賛成致しかねます」


 あら、伝わらないみたい。巻き終えた髪を一箇所で纏め、後ろ髪をふわふわに仕上げてもらった。初めての髪型なので、何度も鏡で確認してしまう。


「いかがでしょう」


「素敵ね、リリーは手先が器用だわ。ありがとう」


 一瞬目を見開いたが、何も言わずにリリーは頭を下げた。立ち上がり、スカートの皺がないか確認する。夫婦の私室の真ん中にある寝室へ戻れば、レオンが駆け寄った。


「おかぁ、しゃま! ここ、くるん」


 髪を指さし、後ろに回り込んで確認しようとする。屈んだら、両手でそっと触れていた。


「抱っこするわよ」


「あい!」


 巻き髪が近くなり、レオンは大喜びだった。首に抱きつき、髪に触れている。こんなに喜ぶなら、こまめに髪型を変えてみようかしらね。マーサも合流したところへ、ヘンリック様が現れた。執事ベルントが同行し、食堂へ向かう。


 すでに待っていた家族と朝食を摂り、午前中はレオンのお勉強に費やした。急いで帰る可能性は消えたので、予定を元に戻したの。レオンは温泉や街で買い物をした出来事を絵に描いた。


「これ、ならちゅ」


 ななつ……いいえ、らが入っているわ。絵から判断も難しい。じっくり悩んで、ガラスと読み解いた。描いた絵を説明するレオンは、ご機嫌だ。話を聞いてもらえるだけで、人ってこんなに喜ぶのね。笑顔の幼子の黒髪を撫でて、私は幸せのお裾分けをもらった。


「俺も描いたんだが」


 褒めて欲しいと主張するヘンリック様の絵も確認する。温泉……滝? 説明を求めたところ、前世でいう打たせ湯があったらしい。おそらく高いところから流したら変化があっていいのでは? 程度の感覚で作られたのだろう。それでも興味が湧いた。


「私も見てみたいわ」


「なら、一緒に……じゃなかった。すまない」


 謝られて少し考えて、頬が赤くなる。一緒に……は無理ね。契約夫婦だもの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
子供が二人w大きい子供(ヘンリックさん)と小さい子供(レオン君)wでも、幸せな家庭ですね! 契約から恋愛にシフトして良さそうなのにw アマーリアさんのお陰で皆幸せいっぱい! 休暇も問題ないし!マルレー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ