表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/700

135.立派な旦那様を演じる裏側

 ヘンリック様の祖母、王家から降嫁なさった姫君は姿も心も美しい方だった。繊細で子育てはとても無理、乳母に任せっきりにしたとか。我が侭放題に育った息子の姿に後悔し、自分を罰するように閉じこもった。


 愛する妻のそんな姿に、先先代は彼女を守る別宅を建てた……なんとも無責任な話だわ。管理人夫妻から聞き出した話に、私は眉根を寄せた。ちょうど差し出されたお茶が熱かったフリで誤魔化す。


 昨夜のヘンリック様の様子が気になり、早朝から彼らの部屋に押しかけた。それなのに管理人夫妻は快く受け入れる。理由は、私がヘンリック様を変えたから、だそうよ。先代ヨーナス様があまりに自分勝手で、使用人達は公爵家の行く末を案じた。


 ヘンリック様は厳しい家庭教師からよく学び、面倒を見る上級使用人を守るために鍛えた。その結果が実の父から爵位を奪う行動に繋がったのだけれど、管理人夫妻は彼の心を心配した。優しい子なのに可哀想だと。


 親戚でもない使用人の立場では、フランクを含め誰も動けなかった。そんな中、突然現れた妻の私にヘンリック様が甘えている。幼いレオンも懐いて、一緒に過ごそうとする。家族の形をみて、私に隠し事はしないと決めたらしい。


 管理人夫妻の使用する部屋は丁寧に掃除がされ、居心地がよかった。このままお茶を楽しめる心境ならよかったけれど。


「戻るわ、話を聞かせてくれてありがとう」


「いいえ。こちらこそ……その、坊ちゃんをよろしくお願いいたします」


「甘え方を知らん人じゃから」


 夫妻に頭を下げられ、廊下まで見送られる。二階から階段を降りていると、ヘンリック様が待っていた。不安そうな顔で、私を見上げてくる。二、三段駆け上るが、そこで足を止めた。


 この表情、最初の頃のレオンにそっくりだわ。本当に……変なところでそっくりな親子ね。足早に降りて、ヘンリック様の手を取った。


「起きたらいなかったから……」


「心配させてごめんなさいね。この家の管理について聞きたかったの。ほら、昼間はレオンと出かけるでしょう?」


 昨日消化しきれなかった予定がある。温泉に入ること、ケーキ屋以外の店に寄ること、街をゆっくり散策すること。指折り数えて、微笑みかける。


「おか、しゃま! おとちゃまも!」


 ぷんぷんと怒りも露わに駆けてくる幼子を受け止める。後ろにベルントが付き添っていた。どうやら目が覚めて拗ねたレオンを誘導してくれたみたい。


「おはよう、レオン」


「おはよ、ごじゃます!」


 挨拶は大事と教えたので、きちんと返してくれる。ヘンリック様もしゃがみ、レオンの目線で「おはよう」と挨拶をした。飛びついたレオンを抱き上げ、身を起こす。目線が近くなったレオンは私に両手を伸ばした。


「あらあら」


 受け止めて、そのままヘンリック様から預かる。すると不満げな声が聞こえた。


「俺ではダメか」


「旦那様、母親と争っても父親は負けるものです」


 経験者は語る。家庭を持つベルントの言葉に、私達の口元が緩んだ。こんな会話をする日がくるなんて、想像もしなかったわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今の仲良し家族! 昔の辛い過去!ヘンリックさん、アマーリアさんにいっぱい甘えてください! 温泉やら探索やら!楽しいイベント盛りだくさん! アマーリアさんのお陰でヘンリックさん良い方に変わりましたね!
起きたらおかしゃまいない…で不安気になる大きなお子様兼旦那様( ´∀` )ぷんぷんレオンくん可愛い♡
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ