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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第一章

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133/700

133.幸せの影法師が伸びる

「お待たせいたしました」


 緊張した面持ちの店員が運んできたのは、お皿に盛られた苺だった。教育のチャンスだと思ったけれど、そうね。せっかくの旅行だもの。楽しい思い出だけで構わないわ。レオンはまだ三歳に届かないんだから、ゆっくり覚えて間に合う。


 急ぎ過ぎていた自分に気づき、天井を仰いでゆっくりと深呼吸した。よし! 気合いを入れ直し、ヘンリック様にお礼を伝えた。


「ありがとうございます、助かりましたわ。ヘンリック様」


「おとちゃま、ありがとぉ」


 満面の笑みでぺこりとしたレオンは、赤い苺を突き刺した。また差し出そうとするので、自分で食べなさいと微笑む。少し考えてぱくりと口に入れた。頬が緩んで嬉しそう。


「君達も食べてくれ」


 ヘンリック様の許可が出て、ユリアンはすぐに動いた。遠慮なく一つ刺して口に入れる。なぜか、隣のユリアーナの口に……。きょとんとしたものの、ユリアーナは「美味しい」としっかり味わった。


 遠慮がちなエルヴィンも一つフォークで突き刺し、ユリアンの口に押し込む。食べさせ合いが流行っていた。これって私達のせいかしらね。


「失礼、一ついただきます」


 お父様は優雅に一つを掬い上げ、エルヴィンの口元へ運ぶ。つんつんとフォークで促され、恥ずかしそうに食べた。お父様は自分の前のケーキを食べ始め、双子とエルヴィンも交換し合う。


「ぼくも!」


 そこに参加したいと声を上げたため、レオンのケーキも皆でつついた。一口ずつもらって、今度は私のブルーベリーケーキを。最後にヘンリック様のチーズケーキも提供された。


 屋敷で待つ使用人へのお土産も兼ねて、ケーキを纏めて注文する。お店のケーキを買い占めると悪いので、明日の配達にしてもらった。明日もケーキがあるとはしゃぐ子供達に、自然と頬が緩む。


 仲良く手を繋いで歩いた。今日の持ち帰り分として詰めてもらった焼き菓子が、レオンと一緒に揺れる。ヘンリック様が持つと言ったら、レオンがお手伝いすると抱えて運び始めたの。


 転ばないよう、片手をヘンリック様と繋いで歩く。もう片方の手はお菓子を抱えていて、ある程度進んだら今度は私と手を繋いだ。


「楽しかった?」


「うん」


「また明日いこう」


 ヘンリック様のお誘いに、レオンが大喜びする。ぴょんぴょん飛び跳ねて、転びかけた。私が支えるのが間に合ってよかったわ。ヘンリック様も腕を出して支えようとした。


 途中で疲れたレオンは眠くなり、お菓子を抱えたままヘンリック様に抱き上げられる。まだ歩くとごねるけれど、お昼寝がなかったから我慢できなかったみたい。


 突然首ががくんと揺れて、すっかり夢の中。危ないのでお菓子の箱を私が受け取り、ヘンリック様が抱え直した。並んで歩く坂道に、細長く影が伸びる。先を走る双子の影もくるくる周り、エルヴィンが追いかけた。


 一番後ろをゆっくり歩くお父様を振り返り、後ろに伸びた影に目を細めた。この光景、すごく幸せで満ち足りた感じがするわ。腕の中で、お菓子が小さな音を立てた。

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― 新着の感想 ―
幸せが溢れている。私も最後の描写がお気に入り。泣けるほどの優しい世界を垣間見た。
最後のお父さんと影の描写が好きです
可愛い…そして尊い! ア~ン!が流行ってしまったw仲が良いからこそ! 苺をあげちゃって、自分の分が無くなってしょんぼり、からの苺にニッコリが可愛すぎ! 幸せいっぱい!
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