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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第一章

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122/701

122.部屋に戻ります、が?

 お風呂に入れたレオンを抱いて、ヘンリック様のお部屋に向かう。一階へ移動した私室は、落ち着いた濃色の家具が多かった。絨毯や壁はアイボリーで柔らかく、西側の棚にはびっしりと書籍が並んでいる。背表紙に統一感がないので、飾りではなく実用書かしら。


「待っていた、さあ」


 ベッドの上を示すので、回り込んでレオンを下ろす。はしゃいで転がるレオンを止めて、額にキスをした。それから身を起こす。


「ではお任せしますわ。おやすみなさ……」


「待て! ああ、その……アマーリアはどう、するのだ?」


「部屋に戻ります」


 何を仰っているのかしら。もしかして、レオンが眠るまで絵本を読んであげてほしい、とか。


「レオンが眠るまで絵本を読みましょうか」


 口下手なヘンリック様に提案すると、すごい勢いで首を縦に振った。読み聞かせに自信がないのね。仕方ないわ、まだ新米パパだもの。ふふっと笑って、ベッドの端に腰掛ける。上に一枚羽織ってきてよかった。


 部屋の中で手を組んで祈る姿勢のフランクに、絵本を一冊持ってきてもらう。本来はベルントの仕事だけれど、彼はリリー達を迎えに行ってくれたのよ。もう直ぐ帰ってくると思うから、出迎えて労ってあげなくては。


 運ばれた絵本は、まだレオンに読んだことのない新作だった。定期的に購入するよう手配した中の一冊らしい。表紙は大きな牛が描かれていた。寝転んだレオンに見えるよう開いて、絵本を読み始める。


 牛は小さな友達がいた。注意しないと踏み潰してしまいそうな、綺麗な赤いてんとう虫だ。鼻先に止まる姿に、すぐ仲良くなった。だがある日、近くにいた羊に葉っぱと一緒に食べられてしまう。悔しくて悲しくて、泣きながら過ごした。


「いちゃい、いちゃい」


 泣きそうな顔で胸を押さえるレオンのために、少し早めに続きを読む。


 数日後、てんとう虫が飛んできた。ぐるりと牛の周りを飛び、鼻先に降り立つ。食べられていなかった! 牛は喜び、てんとう虫を愛おしそうに見つめる。羊が近づき、こないだはすまなかったと謝った。牛はその謝罪を受け入れる。


 大した事件は起きない、子供向けの優しいお話だ。めでたし、めでたしで終わる。レオンは「よかったぁ」と微笑んだ。ヘンリック様は無言で聞き入り、何か考えている。


「では、失礼しますね。おやすみなさい、レオン。ヘンリックさ……まぁ?!」


 最後まで挨拶し終える前に、ヘンリック様に引っ張られた。転がるようにベッドに倒れ込むと、上掛けが被せられる。


「ヘンリック様?」


「ああ、その……レオンが寂しがるから、一緒に……」


「添い寝ですか?」


 小さく頷くヘンリック様の隣で、レオンがあふっと欠伸をした。その手で、私の袖を掴む。


「おかしゃま、いっちょ」


 一緒は言えていたのに、誰かさんの悪影響で崩れている。許すまじ! と眉を寄せたものの……現時点で悩むことでもない。


「わかりました、でも一度お部屋に戻ってから来るわね」


「うん」


 驚いた顔をするヘンリック様に微笑み、するりとベッドから出た。私がまた戻ると約束したので、レオンは素直に手を振って見送る。


 そろそろ王宮からリリーやマーサが帰ってくる頃だわ。急がないとね。

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