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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第一章

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121.あんなの謝罪ではありません

 侍女を二人とも置いてきてしまったが、イルゼは何も言わなかった。帰宅時間から事情を察した様子のフランクと食堂へ向かう。驚くことに、食事が運ばれてきた。


「ベルントから連絡が入りましたので」


 騎士の一人を伝令にして先行させてくれたらしい。ベルントはヘンリック様と仕事の手伝いに行き、帰りは御者台に乗った。リリーやマーサは、行きに荷物や侍女を乗せた馬車で帰ってくる予定だ。


「帰ったら、明日は休むように伝えてね」


「かしこまりました」


 あの状況で荷物を纏めるのは難しかったから、とても助かるわ。彼女らはしっかり働いたのだから、休みと……追加の臨時給与を出しましょう。前世のボーナスよ。普段の賃金を仕送りしている子も多いから、別支給の方が喜ばれるはず。


 運ばれた料理は、いつもと同じでほっとする。王宮の料理と似ているのに、何かが違うの。一緒に食べる人の違いかも。柔らかな鴨肉を切り分け、レオンの口に運ぶ。ぱくりと食べて、頬を緩めた。


 手にしたフォークを伸ばす仕草をするから、届く距離へお皿を近づけた。


「自分で食べたいのね。偉いわ、レオン。上から……そう、上手よ」


 見様見真似でフォークを肉に刺す。カットされた肉を口まで持っていき、あぐっと噛み付いた。頬を膨らませて、大きな肉を右へ左へ。だんだんと小さくなり、やがてごくりと喉が動いた。


「でちた!」


 喜ぶレオンに近づき、ぎゅっと抱きしめて頬を擦り寄せた。食事中に無作法だけれど、レオンを褒めるのが最優先よ。たくさん褒めて立ち上がると、ヘンリック様が泣きそうだった。


「ヘンリック様?」


「いや……なんでも、ない」


 レオンが何かできるようになって、私が褒める。そのたびにヘンリック様は感情を取り戻していく気がした。フランクは心配そうな顔でこちらを窺っている。それが答えね。イルゼも瞬きの回数が多かった。


 少しだけ迷って、レオンの黒髪を撫でるヘンリック様を抱きしめた。座ったヘンリック様の頭を引き寄せる。綺麗に整えられた頭に、そっと手を置く。髪を乱さないよう、優しく左右に動かした。撫でるより柔らかな動きで。


「ヘンリック様、本日はありがとうございました。晩餐の場にいたくなかったのです」


「……っ、構わない。俺も同じだ」


 あれは謝罪ではなかった。ただ側近が提案した形で行われ、本人はもう許されたつもりで傲慢に振る舞った。それも、王女殿下の我が侭や無礼を増長する形で。親としてなら最悪だし、王としても臣下を馬鹿にした行動だわ。


 あの謝罪は受け入れられない。ヘンリック様もそう判断してくれたことが嬉しい。きっと契約当時なら、私は我慢して受け入れ、ヘンリック様は何も言わなかったでしょう。


「今日は早めに休みましょう」


「ああ……っ、その……」


 あら、いつもの癖が出たわ。何か要望があるのかしら。言いづらそうだから、当てられたらいいけれど。


「レオンと一緒に寝ますか?」


 これだろう、と思って提案したら表情が明るくなる。ぱっと顔を上げたヘンリック様は、すごく喜んでいた。久しぶりに私は独り寝になりそうね。

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― 新着の感想 ―
馬鹿陛下すぎて!この国大丈夫かな??!てか、クーデター起きちゃう…。むしろ起こすべき?? すっかり、打ち解けて…感動…。 ヘンリックさん、家族三人でゆっくりお休みなさ~い。
自分で食べる、でちた!レオン君えらい♡
お昼寝はギリセーフでしたが、本来の契約の「閨(寝室)は共にしない」が守られるか否か!? ワクワクです。
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