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竜に育てられた最強  作者: 原案・監修:すかいふぁーむ 執筆:epina
セレブラント王都学院編

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72/117

72.交換留学

 俺とミィルは森でしばしの休暇を楽しんだ後、再び王都にやってきた。

 正式にフルドレクス魔法国に向かう手続きをするためだ。

 学院長に詳しい話を聞くことになったんだけど……。


「えっ、ビビムが退学に?」


 学院長から思わぬ話題が上がった。

 さんざん俺たちに嫌がらせをしてきたビビムが、もう学院にいないというのだ。


「うむ……土塊のダンジョンの入り口を封鎖して王賓クラスを神滅のダンジョンへと誘導したのは彼だったのです」

「あいつ……」


 どうしてそんな馬鹿なことを仕出かしたんだろう?

 ミィルがなんか口笛を吹いてるけど。


「それどころかノールルド家は諸々の悪行が露見して御取潰しとなり、財産も没収、無一文で追放されました。伯爵の妻はとっくの昔に愛想を尽かして実家に帰っていますし、使用人たちも他の働き場所が紹介されたので、実害を被ったのは父親と息子ということになりますが」


 なるほど。

 気の毒だけど、まあ自業自得なのかな……?


「国外追放される折にも親子揃って『こんなことは間違っている』と言い張っていたそうで。まあ、彼らの中ではそうなんでしょうが」

「本当に、いろいろいるんですね。人類といっても」

「そうですね。あれがすべてとは思わないでいただけると幸いです」


 学院長がため息を吐いてから、コホンと咳払いした。 


「さて、今回はフルドレクス魔法国への留学ということですが、あちらの国立魔法学校との交換留学を行ないます。そういうわけで王賓クラスから四名、フルドレクスに向かっていただくことになりますね」

「四名ですか?」

「ええ。さあ、お入りください」


 学院長の合図とともに入室してきたのは……。


「失礼します。アイレンさん、ミィルさん。お元気でしたか」

「ラウナだー! やっほー!」


 ラウナがミィルと女の子同士で再会をキャッキャと喜び合う。

 まあ、ラウナはフルドレクスの第二王女だからわかるんだけど……。

 

「えっ、リード?」

「フン……」


 リードが顔をそむける。


「まずは交流の架け橋としてラウナリース様。そして、王太子のリード様は世代代表の名目で立候補されました」

「余計なことは言うな、学院長。私は私で事情があるのだ」

「事情って?」

「それは訊くな、アイレン。とにかく私のことは気にしないでいい」

「まあ、そういうことなら」


 訊かれたくないことみたいだし。


「そういうわけで、こちらの四名での留学となるわけですが……」

「待て、学院長。その前に聞きたいことがある。そもそも何故にフルドレクスと交換留学などという話が持ち上がったのだ? それに何故アイレンとミィルさんまで?」

「それはですな……」


 学院長が言葉を濁しながら、俺に視線を向けてきた。

 あ、サンサルーナが同行者に人類裁定のことを明かしていいって言ってたのはそういうことなのか。


「実を言うと俺は――」


 俺はラウナとリードに自分の正体を明かした。


「お前が竜王国の使者だと……?」


 リードが驚きに目を見開く。

 ラウナに至っては悲痛そうな表情を浮かべていた。


「人類裁定だなんて……竜王族から見て人類が不合格だったらすべて滅ぼすというのですか」

「うん。申し訳ないけど、竜王族はそれぐらい怒ってるんだ。というか、俺がいなかったら裁定自体がなかったと思う」

「やめてください……とアイレンさんに頼んでもダメなのですね。そしてミィルさんが竜王族……」

「うん、そだよー。隠しててごめんね」


 てへっと笑うミィル。

 あたふたするラウナを尻目にリードが突然笑い出した。


「フッ……ハハハ! なるほど。只者ではないと思ったが、道理でな。試していたつもりが試されていたのは我々だったということか」

「リード様! どうして笑っていられるのですか!?」

「落ち着け、ラウナリース。我々に正体を明かしたということは、少なくとも私とラウナは合格したということでいいんだな?」


 ハッとするラウナ。

 リードの確認に俺は頷き返す。


「そうだね。神滅のダンジョンでのことが決め手になった感じ」

「それで次の人類裁定の舞台がフルドレクス魔法国というわけか」

「そ、そんな! 今度はわたくしの祖国を見定めるというのですか……」

「うん。当然だけど、口外しちゃ駄目だよ。その時点で裁定が終わって、人類鏖殺が始まっちゃうから」


 愕然とするラウナに、リードが改めて声をかけた。


「ラウナリース、君も王族ならば竜王族が如何なるものかぐらい学んでいるだろう。アイレンが人類に価値なしと判断した場合、彼らは本当に人類を滅ぼすだろう。竜王族は敵と定めた者に対しては極めて苛烈だ。盟約がなくなったのなら情に訴えたところで無駄であろう。ならば、大人しく故郷を裁定されるしかあるまい」

「リード様……」

「希望はある。裁定者が竜王族ではなく、あくまで人間のアイレンだということだ」

「……納得はできませんが受け入れるしかないのですね」


 てっきりラウナよりリードの方が難色を示すと思ってたけど、実際は逆だったな。

 リードは俺を認めてるっていうのが結構大きいのかも。


「ちなみにフルドレクスに行くのは人類裁定のためだけじゃなくて、神について調べるためでもあるよ」

「神だと? 神学でも学ぼうというのか」

「ううん。実は神滅のダンジョンでこんなことがあってね」


 今度は魔神の心臓から聞いた話を話した。


「神々が侵略者だっただと。到底信じられんが……」

「そうですね。天魔大戦の話はともかく、人類を操ろうとしてるなんて、あまりにも冒涜的なお話かと……」

「ううむ、儂もにわかには受け入れがたいですな」


 こればかりはラウナや学院長ばかりでなく、リードもはいそうですかとは言えないようだ。


「竜王族も魔神と同じ見解だったよ。俺には何とも言えないから、実際に神が人類を操ろうとしてるのかどうかを確かめたいんだ。調べるのにフルドレクスがいいだろうって言うのも竜王族の意見だよ」

「そういうことか。納得したよ。いろいろとな……」


 リードがため息交じりに首を振る。


「わかりました! そういうことでしたら、竜王族の皆さんの心配が杞憂だと証明してみせます! 人類は神に操られてないし、滅ぼされるような酷い種族じゃないってことを!」


 ラウナも覚悟を決めてくれたようだ。


「だといいんだけどねー」

「ミィルさん! それはあんまりです!」


 などというやりとりがありつつも、問題なく話は進んでいく。

 人類裁定は次の舞台……フルドレクス魔法国へと移ることになるのだった。

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