6.人類裁定①
「すっげー! なんだこの部屋! キラキラしたものがいっぱいだー!」
学院長に案内された部屋は、なんだかとにかくすごかった。
まるで、宝の山だ。
ついついいつもの癖で蒐集めたくなってしまう。
「トロフィーも随分たくさんありますね!」
戸棚にいくつも飾ってある小さな金色の像や杯が、学院の栄光を物語っている。
いいなぁ、これ欲しい。
一個ぐらい分けてもらえないかな~。
などと思っているとリリスルがこほん、と咳払いをひとつした。
「アイレン。ここには面談で来ているのです。礼節を忘れてはなりません」
「あ、そうだった! すいません!」
「い、いえいえ。気にすることはありませんよ。好きなだけ見ていってください……」
学院長はそう言いながら額から流れる水滴を頻繁にふき取っていた。
この人はきっと汗っかきで暑がりなんだな。
満足するまで見せてもらった後、俺とリリスルは豪華そうな応接用ソファーへの着席を勧められた。フカフカで座り心地抜群だ。
隣にリリスル、対面に机をひとつ挟んで学院長。
とっても高そうなお茶まで出してくれた。
ああ、なんだか緊張してきたなぁ。
「ひとまずアイレン君には、これを授与します」
学院長が引き出しから、少し白っぽいキラキラしたものを取り出した。
「おー、すごい綺麗ですね。なんですこれ」
「プラチナバッジです。さあ、そんなのは外していただいて結構ですから。どうぞどうぞ」
あー、そういえば入り口で渡されたのは俺のだけボロボロのバッジだったな。
早速お言葉に甘えて付け替える。
「おおー、なんだか合格したって実感が湧いてくるなー!」
「とてもよく似合っていますよ、アイレン」
リリスルの笑顔に俺は満更でもない気分になった。
学院長も笑っているけど、なんだかぎこちない。
「ええと、それでですね。今後のカリキュラムの説明をさせていただこうと思うのですが」
「お心遣いありがとうございます。ですが不要です」
学院長の提案をリリスルがきっぱりと断った。
「既にわたしが把握していますので、アイレンには伝えておきましょう。それよりも……あなたも知りたいのではないですか? なんの目的でアイレンが学院を訪れたのか」
「そ、それはもちろんです。是非お聞かせ願いたいと……」
どうやら俺は黙って聞いていればいいみたいだ。
大人しくしてよう。
「一言でいえば、わたしたちは人類を試しに来ました」
「じ、人類をですか? 王都学院を、ではなく?」
「ええ。皆さんには試金石になっていただきます。すなわち――」
一呼吸を置いてから、リリスルはおごそかに宣言した。
「人という種を生かすべきか、それとも殺すべきかの」




