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竜に育てられた最強  作者: 原案・監修:すかいふぁーむ 執筆:epina
セレブラント王都学院編

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58.神滅のダンジョン④

「クッ、やはり威力を抑えたブラストショットでは……!」


 二発目の魔法を放ったリードが両手の痺れに歯噛みした。

 クラスメイトの援護のおかげでサイクロプスは思うように動けないでいる。

 おかげで群れ全体にかなりのダメージを与えることができているが、未だに倒れたサイクロプスは一匹もいない。


 ブラストショットはリードが夏期休暇中に編み出した魔法だ。

 炎と水の二属性混合(ダブル)

 互いに打ち消し合うときに発生する力を極限まで高めてぶつけ合い、発生した爆発を巧みな魔力操作で一方向に放つ。


「やはり全開でいくしかないか……!」


 アイレンが評するような自爆魔法とならなかったのはリードの天才的センスに依るものだ。

 それでも意図的に威力を落とさないと使い物にならない。

 そして威力を全開にすれば腕が吹き飛ぶだけでは済まないだろうとリードは正しく分析していた。


 自分はここで死ぬのかもしれない。

 そんな思いが脳裏をよぎった時にふと、後ろにいる生徒たちを思う。


 自分の発破で恐れを振り払い戦うことを決意してくれたクラスメイトたち。

 昔から妹のようにかわいがってきたラウナリース。

 許嫁のいる身でありながら決して許されぬ恋心を抱いてしまった相手であるミィル。


 そしてもうひとり――


「リード!」


 その男に名前を呼ばれたリードの中に様々な感情が渦巻いた。


 こいつには負けたくない。

 建前とはいえ()はどうした。

 いいや、だけどこの男なら――


「アイレン、私の魔法では奴らを倒すことができん! お前のバスターキャノンを撃つんだ!」


 リードの口から飛び出たのは「お前は引っ込んでいろ」でも「平民風情の出る幕ではない」でもなく、そんな言葉だった。

 内心で一番驚いたのはリード自身である。


(ああ、こんな私を笑うがいい)


 追い詰められて、夏期休暇中に必死に修行して、初めてわかった。

 自分は小さな世界でいい気になっていた哀れな道化に過ぎなかったと。


 いっそここで自爆して果てたい想いにも駆られたが、仮にも王家の男が真っ先に死ぬなど許されない。

 窮地を脱するのにアイレンの常識外れな力が必要だと、リードも頭のどこかではとっくにわかっていたのだ。

 

 しかし、アイレンは首を横に振る。


「いいや、もう一度ブラストショットを撃ってくれ! ただし、今度は後先考えず全力で!!」

「なんだとっ!? 貴様、私に死ねと言うのか!?」


 それだけは駄目だと切って捨てた自爆案を採用しろとアイレンは言うのだ。

 リードが怒りに駆られるのも無理はない。

 けれど、アイレンはそんな邪な企みなど一切なさそうな笑みを浮かべている。


「絶対に大丈夫だ! 自爆にはならない。俺を信じてくれ、リード!」


 そのひたむきな眼差しを見てリードがハッとする。


 ブラストショットがどういう魔法なのか、アイレンはとっくに理解している。

 当然だ。この魔法はそもそも、アイレンが使ったバスターキャノンを参考にしているのだから。


「……ハハッ、いいだろう! 貴様の甘言に乗ってやる!」


 アイレンが全開で撃てというからには何か考えがあるに違いない。

 あれほど反目した相手だというのに、いざこうなってみると不思議と信じられる。

 自分の心の動きをはっきり自覚したとき、リードはサイクロプスたちを前に凄絶な笑みを浮かべていた。


「我が修練、我が執念……そして我が半生をいざ見せん! 右の(かいな)紅蓮(ぐれん)を、左の(かいな)紺碧(こんぺき)を!」


 これまでとは比較にならない魔力を両手に込めていく。

 詠唱も威力を抑えたものではなく、リード自身の存在意義すらも込めた全力全開版。

 ひとたび放てば死ぬと脳が訴えてくるのに恐怖心は微塵もなかった。


怯懦慢心(きょうだまんしん)、我が内になし。この生命(いのち)、人々の(いしずえ)とせん!」


 そして、人類史上最大の魔法が一つ目の巨人たちに向けて放たれた。 


「ブラストフレア!」

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