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竜に育てられた最強  作者: 原案・監修:すかいふぁーむ 執筆:epina
セレブラント王都学院編

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57.神滅のダンジョン③

「えっ、なんで!?」


 ミィルは俺の訴えにこう返してきた。


「アイレンは学院(ここ)に何しに来たの?」


 忘れかけていた現実をいきなり突きつけられて言葉を失いそうになった……けど!


「今はそんなことを言ってる場合じゃない! このままじゃ、みんな殺される!」

「あたしだって、みんなにここで死んでほしいって思ってるわけじゃないよ。入り口に結界を張ったから、ひとまずは安全。それに、こういうときこそ裁定の判断基準が浮かび上がってくるんじゃないかな。ほら、見て」


 ミィルはみんなのことを指差した。


 マイザー教官殿が必死に呼びかけてるけど、入り口に殺到するサイクロプスを前に生徒たちはもはや聞いちゃいない。

 教官殿に責任転嫁をしたり、泣き喚いたりして、立ち向かおうとしてない。

 ラウナですら神眼から血の涙を流して立ち尽くしていた。


「人類裁定はアイレンに任されてる。だから口出しはしないし、アイレンが戦うっていうなら止めはしない。でもよく考えてほしい。彼らはアイレンから見て合格なの?」

「それは……」

「いいよ、別に。アイレンが守りたいっていうならそれでもいいと思う。でも……アイレンが戦ってサイクロプスを倒して……それでどうなると思う?」

「どうなるって……」


 想像する。

 俺がサイクロプスの群れを倒したら、どうなるのか。

 きっとみんなの目には俺が得体の知れないバケモノに映るだろう。


 それ自体は構わない。

 俺が忌避されようがどうなろうが、みんなを助けられるならそれでもいい。


 だけど、俺の使命は。


「アイレンは今まで何を見て、何に気づいて、何をしてきたのか。もう一度思い出してみて。クラスのみんながこのまま怯えたまま終わってしまうのか、あるいは人類裁定の材料となる何かを見せてくれるのか。ほんのちょっとだけみんなに猶予をあげて」


 ミィルが泣きそうな顔でまっすぐに見つめてきた。


「ああ、そうか……」


 俺がやらなきゃいけないのは、力を見せつけることじゃない。

 それならミィルのような竜王族が裁定者でもよかった。


 俺が今、見届けなくてはいけないことは。


「皆の者!」


 すべての慟哭(どうこく)を打ち消すような声が朗々と響いたのは、まさにそのとき。

 それまで自分勝手に喚き散らしていた生徒たちの混乱が一気に鎮まった。

 みんなに呼びかけているのはリードだ。


「何も慌てることはない。私達は学院きっての麗しの才媛(ロイヤルタレント)たちだ。力を合わせれば必ずや地上に帰れる! 今こそ勇気を振り絞れ!」


 皆が皆、リードに注目する。


「……リード様の言うとおりです、みなさん」


 神眼から血涙を流したままのラウナが顔を上げた。

 

「それにわたくしの神眼でしたら地上から漏れてくる魔力を辿れます! 絶望してはいけません!」 


 ラウナの励ましを受けた生徒たちの瞳に光が戻った。

 やがて、ひとりひとり声をあげ始める。


「そ、そうだ。俺たちはずっと学んできたんだ!」

「そうよ、やれるわ! みんな優秀だもの!」

「王賓クラスは学院の誇りだ!」


 リードとラウナが、そして生徒たちが勇気を取り戻した。

 みんな立ち向かおうとしている。


「私が先陣を切る。皆は援護を頼む!」


 リードが宣言通りにサイクロプスの方へと駆け出していく。

 このタイミングでミィルが結界を解いて、サイクロプスの群れが雪崩れ込んできた。

 遂に戦闘が始まる。


「我が修練、我が執念をいざ見せん。右のかいなに赤を、左の(かいな)に青を!」


 あの詠唱……炎属性と水属性の二属性混合(ダブル)


「ブラストショット!」


 バスターキャノンのように両手を合わせた瞬間、炎と水の魔力が打ち消し合う。

 その際に生まれる爆発に指向性(ベクトル)を与えてサイクロプスを攻撃するつもりの魔法のようだ。

 一方向に限定された衝撃波がサイクロプスたちを飲み込んだ。

 その威力でサイクロプスたちを足止めすることには成功したようだが倒すには至らない。


「クッ……!」


 リードが手を抑えながら苦しげに呻いた。

 精霊の加護のないリードは反 動(バックファイア)をモロに食らうことになる。

 あれが腕を失わないギリギリの威力ということか。

 連発も厳しそうだ……。


「みなさん、リード様の援護を!」

「「「「アースバインド!」」」」

「「「「フリージングウィンド!」」」」


 ラウナの号令で生徒たちが一斉に足止めの魔法を発動した。

 砲撃の如き轟音とともにサイクロプスに殺到し、その進撃を食い止める。

 授業で習った通りの見事な連携だった。


「まだだ! まだお前はやれるはずだぞリード! 王家の意地を見せろ!」


 クラスメイトの奮戦を目の当たりにしたリードは、自らを鼓舞しながら再びブラストショットの詠唱に入る。


 ……ああ、そういうことか。

 これが、人類の戦い方。

 これが、立ち向かうことを決意した人類の姿。


「ミィル……この光景を俺に見せたかったのか」

「さっきも言ったけど、あたしは戦わない。みんなのことを守るだけ」


 ミィルの結界はいつの間にかみんなを守るように張り直されていた。

 不可視の結界。これが見えるのはラウナぐらいのものだろう。


「それで、どう? 今のみんなはアイレンから見て合格?」


 ミィルが小首を傾げて訊ねてくる。


「……ああ、もちろんだ!」


 俺が応えると、今度はミィルが悪戯っぽく笑う。

 いつものミィルの笑顔だった。


「いってらっしゃいアイレン。あの人たちを助けてあげて!」

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「お前はサボってばかりいる!」と勇者に追放されたけど、俺のバフ抜きで大丈夫なのかな? ~全部が全部もう遅い。勇者を見限ってついてきた仲間たちは俺の『全自動支援』スキルで世界最強の英雄になれます~
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