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竜に育てられた最強  作者: 原案・監修:すかいふぁーむ 執筆:epina
セレブラント王都学院編

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54.ダンジョン課外実習

 今日は初の課外実習だ。

 王賓クラス全員が校庭でマイザー教官と合流してから学院所有のダンジョンに向かう。

 

 学院所有のダンジョンは五つある。


 火炎獄のダンジョン。

 神滅のダンジョン。

 滅龍のダンジョン。

 宵闇のダンジョン。

 土塊のダンジョン。


 俺たちが向かうのは全二十階層の土塊のダンジョンだ。

 なんでもここだけは初心者向けで、学院の生徒たちは卒業までにここをクリアする必要がある。

 あとの四つは王国が管理しないと危険な特別警戒ダンジョンらしい。

 だから学院が一応所有しているような状況だってマイザー教官殿が解説してくれた。


「世界各地にはこのようなダンジョンが無数にあります。ダンジョンには階層ごとにボスの部屋があり、ボスを倒すと一定の報酬を手に入れることができます。ダンジョン内の魔力を元に魔物や財宝が現れるので、冒険者たちはこれらの宝を目当てにダンジョンアタックをかけるのです」


 この話を聞いて、俺とミィルはなんで森に冒険者が来るのか納得していた。

 彼らは俺たちが蓄えた宝だけじゃなくて、ダンジョン内に発生する宝も目当てで来ていたんだ。


 課外授業と言っても学院の敷地内なので、それほど歩かずに土塊のダンジョンの入り口に到着した。

 だけど、そこで待っていたのは。


「お待ちしていましたよ、王賓クラスの皆さん」

「キグニス教官? ここで何を」


 マイザー教官殿がニコニコ笑っているキグニスを見て、不審げに眉をひそめた。


「いやあ、実は土塊のダンジョンが先日の大雨の影響で入り口が塞がってしまいましてねえ」

「……私は聞いていませんが?」

「ええ、ですからここで私が伝えてる次第でして」


 確かに入り口は土砂で埋まっている。

 それを見たミィルが「ふぅん?」と首を傾げた。


「……そうですか。でしたら、今日のダンジョン実習は中止で――」

「いえいえ、今回特別に神滅のダンジョンの使用許可を取りましてね。ほら、このとおり」


 マイザー教官殿が渡された書類に目を通す。


「三階層までの使用許可。確かに学院長の押印ですね」

「ええ、そういうことです。何も問題はないですよねぇ?」

「そうですね」


 キグニスのわざとらしい挑発をマイザー教官殿はさらっと受け流した。


「では、皆さん。神滅のダンジョンまで移動しましょうか」


 マイザー教官殿の態度が癪に障ったのかキグニスが小さく舌打ちする。

 だけどこれっぽっちも意に介さずにマイザー教官殿が先導し始めたので、生徒たちは大人しくついていった。




 ◇ ◇ ◇




 アイレンたちが移動した後、土塊のダンジョンにビビムが現れた。

 キグニス教官が揉み手をしながら近づく。


「ビビム様。これで本当に私を学院長にしてくださるのですよね?」

「ああ、もちろん。父上は僕の頼みなら聞いてくれる。お前を学院長にするぐらい簡単なことだ」

「しかし、わかりません。彼らを神滅のダンジョンに送り込むことにどのような何の意味が?」

「フッ、簡単なことだ。あの田舎者が未だに学院にいるのは、その無力さがバレていないからだ。特別警戒ダンジョンで王賓クラスの皆さんが力を見せつければ化けの皮が剥がれるという寸法さ」


 得意げに髪をかき上げるビビムを見て、キグニス教官が首をかしげる。


「神滅のダンジョンは三階層までは魔物も出ずに安全なんですが……」

「えっ、そうだったのか?」

「まあ、四階層以降は危険なんですがね。学院長が許可したのも三階層までですし、マイザーの小娘も生徒たちを危険な階層には連れて行かないでしょう」

「ちぇっ。せっかくこのダンジョンの入り口を塞いだのにな……」

 

 土塊のダンジョンの入り口はビビムがたいした考えもなしに土魔法で塞いでいた。

 そして、キグニス教官を言いくるめて学院長に許可を取ってこさせて神滅のダンジョンに誘導したのである。


「ええとそれで、お父上への推挙の件は……」

「次の機会を待て。なあに、あの田舎者を追い出す機会はいくらでもある。それまでは僕にせいぜい尽くすことだ」

「流石はビビム様、深謀遠慮ですな、このキグニス感服いたしました」

「うむ、今後も頼んだぞ。キグニス次期学院長」


 ふたりは互いに笑い合った。

 すでに作戦の失敗から目を逸らし、それぞれ邪なる望みを抱きつつ次なる一手に思いを馳せている。


 片やアイレンを追い出しラウナとミィルを傍らに侍らすという望み。

 片や学院長の地位をモノにして自分を蔑むマイザーを辱しめるという望み。


 不相応な願望は得てして人を破滅に追いやるが、彼らは自己評価が異様に高いので気づかない。


 そして、この件はうっかりでは済まされない一大事に発展する。

 己の浅慮が自分だけではなく父親をも破滅させることに、まだこのときのビビムは気づいていなかった。

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