39.光&闇属性魔法実習①
「さて、本日が春期最後の授業となりました。各々充実した夏期休暇を迎えられるよう取り組んでください」
実習授業ではおなじみとなったマイザー教官殿が生徒たちを感慨深げに見回した。
「皆さんもご存じのとおり、本日の光属性と闇属性の実習はできないことが前提です。使いこなせる者は本当に稀ですので、できなかったとしても減点するようなことはしません。光、闇いずれかの魔法を発動できた人には大幅な加点があると考えてください」
「趣旨としては我々でも届かないものがあることを学ぶ、といったところか」
「そのとおりです、リード様」
「そうだろうな。私にも光属性と闇属性の魔法は使えない」
リードの自嘲気味な告白に「リード様でも使えないのか」「そこまで難しいとは」「じゃあ、わたくしたちに使えるわけが」と生徒たちがざわめき始める。
「リード様。何故、光属性と闇属性を使える者が少ないのか、お答えいただけますか」
最近特に猛勉強しているリードを信頼してか、マイザー教官殿が話を振った。
「術式が不完全であるからだ。教官、私がやってみせてもいいか?」
マイザー教官殿が「どうぞ」と答えると、リードは詠唱を始める。
「ライト!」
リードの手のひらから一瞬だけ光の玉が浮かび上がるが、すぐに消えてしまう。
「見ての通りだ。詠唱を十全にやったところでまともに発動しない。単純に魔法技術の研鑽が足りていない証拠だ」
リードの言うとおり。
光属性の人類術式、つまり現時点の詠唱は不完全だ。
十三節足りず、五節ほど余計なものが混じっている。
「いえ。一瞬とはいえ、発動できただけでも素晴らしい成果です」
「世辞はよせ。あれでは使い物にはならん」
誇るでも気分を害するでもなく、淡々と事実を認めるようにリードが首を横に振った。
「そういうわけで常であれば誰も使えないわけだが……今年は違うかもしれんな?」
リードの揶揄するような視線がこちらに向けられる。
生徒たちも釣られるように俺を見た。
「アイレン。単刀直入に聞くが、お前は使えるのか?」
「使えます」
俺の即答に黙り込む生徒たち。
かつてのように嘲ったりはしてこない。
あるいは俺ならば本当に使えるのではないか。
そんなふうに思われているのかもしれない。
「ならば、やってみせるがいい」
リードの言い方はあたかもできて当然なのだから見せろと言わんばかりだった。




