37.春期終了、夏期休暇前
部活動を始めてラウナといろいろ話したことで、ひとつわかったことがある。
竜王族の魔法は過程重視。
対して、人類の魔法は結果重視だ。
竜王族の魔法は自然との合一をはかって自らを高める手段の一つに過ぎない。
だけど人類の魔法は武器であり開拓の手段であり自然を克服するための道具だ。
みんなで敵と戦うための力なんだから、学んだものが同じ結果にならなきゃ困るってわけ。
俺と価値観の近いミィルでも人類の魔法の在り方については理解できないっぽいから、他の竜王族にもわからないと思う。
そのあたりうまく翻訳して伝えるのは俺の役目になるはずだ。
だからというわけじゃないけど俺は真面目に学院の授業に取り組むことにした。
敢えて竜王族からすると効率の悪い人類術式を学んで、人類と竜王族との橋渡しになろうと思う。
まあ、王賓クラスでは相変わらず相手にされない日々が続いてるけどね……。
ただ、ちょっと変わったこともある。
風属性魔法実習で嵐を巻き起こしたあたりから王賓クラスで悪口を言われることがめっきり減ったのだ。
これは予想だけど、俺がきちんと詠唱してコントロールウェザーを発動したからだと思う。
みんなにもはっきり理解できる形の成果を見せた途端「あいつ、すごいな」「ひょっとして今までも俺たちの理解が追い付かなかっただけかも」という評価が増えてきた。
ラウナの神眼が俺の魔法に太鼓判を押したことで不正だと騒がれることもなくなったし。
クラスの雰囲気も俺なんかに負けるもんか! とばかりにみんなすごく必死に勉強するようになった。
特にリードは授業以外では図書館に篭もり切りの時間が増えて、こちらに話しかけてくることもほとんどなくなっていった。
マイザー教官殿も「今年の王賓クラスは素晴らしい。誰一人として自分の血統にあぐらをかかない。こんなことは初めてかもしれません」と言っていた。
それと、これは変化と言うべきか迷うけど。
「あのへんな人、今日も来てるねー」
「いったい何がしたいんだろう……?」
王賓クラスの授業風景を覗いたり、魔法交流部の部室の近くでこちらを見張ったりする人物がいる。
ビビム・ノールルドだ。
彼については授業をサボってまで何をしたいのかさっぱりわからない。
今のところは害はないけどミィルが「ちょっと気をつけたほうがいいかも」と言ってるので、油断はしない。
そんなこんなで、入学から三か月。
学院生活始まって最初の夏が来た。




