32.魔法交流部結成②
マイザー教官殿が割り込んできた。
邪魔をされたキグニスがあからさまに嫌そうな顔をする。
「マイザー、君には関係ないことだ」
「それを決めるのは貴方ではないはずですが」
「チッ、妾腹のくせに生意気な……」
マイザー教官殿の眉がピクリと反応したが、反論はしない。
やっぱり人類同士でもいろいろあるんだなぁ……。
「それで、どうしましたか?」
キグニスでは埒が明かないと思ったのか、マイザー教官殿が話をラウナに振った。
「実は部活を新しく作りたいのですが、平民が多すぎるから貴族を入れるか、顧問が必要と言われてしまって」
「ふむ、これですか」
机の上の申請書を手に取るマイザー教官殿。
「あっ、おい、勝手に――」
「魔法交流部、ですか。わかりました。私が顧問になりましょう。受理します」
「ありがとうございます、マイザー教官!」
マイザー教官殿とラウナの間で無事に話がまとまったみたいだ。
しかし、事の顛末に口をぱくぱくさせていたキグニスが椅子を弾き飛ばす勢いで立ち上がった。
「おい、なんのつもりだ!?」
怒鳴り散らされてもマイザー教官殿は全く意に介さない。
「何か問題でも? 院則に定められたルールと教官権限に基づいて部活の申請を許可しただけですが?」
「だが、平民と貴族のバランスが……」
「院則にはそのようなルールはないはずですが。懇意にしている貴族家の生徒をラウナリース様に売り込むために、貴方が勝手に言っているだけでしょう。相変わらず悪知恵だけは働くことで」
キグニスが机をバンと叩いた。
「マイザー! 学院長のお気に入りだと思ってあまりいい気になるなよ! 私のバックにはノールルド伯爵がいるんだぞ!」
あー、やっぱりそういう繋がり……。
道理で入学試験のときからビビムのご機嫌を取ってると思ったよ。
「……以前にもご忠告申し上げたはずですが。物事を上辺だけで判断して機を見誤ればいずれ痛い目を見ると」
「クソッ……覚えていろよ! このことは問題にしてやるからな!」
キグニスが腹立ちまぎれに教官室から出ていく。
「申し訳ありません。マイザー教官にまでご迷惑を……」
ラウナが心配そうにマイザー教官殿を気遣う。
「いえ、ほんの些事ですから。それより部室はどこがいいですか? 希望があれば私から学院長に伝えておきますよ」
「ありがとうございます!」
笑顔で請け負ってくれるマイザー教官にみんなで礼を言う。
どうやら本格的に部活を開始できそうだ。




