31.魔法交流部結成①
セレブラント王都学院では生徒による自主的な部活動が奨励されている。
既存の部活に入るのでもいいかもしれないけど、ラウナは最初から自分の部活を作るつもりでいた。
そんなわけで放課後、俺たちは教官室へと向かっている。
部活動の申請をするためだ。
「ねーねー、そういえばどんな部活にするの?」
ミィルが目をキラキラさせながらラウナに訊ねた。
魔法関連であることは確定として、魔法研究部、などでは既存の部活と重なって新規に立ち上げるには障害があるだろう。
「ずっと考えていたのですが……魔法交流部というのはどうでしょうか」
「んー、なるほど……」
魔法交流、か。
たしかに人類側の魔法を知るのは俺やミィルにとってもいい勉強になる。
授業の内容は一応わかるにはわかるんだけど、やっぱり根本的なところで疑問符が浮かぶし。
竜王族の魔法のほうが高度なのは間違いないんだけど、だからといって人類側の魔法も馬鹿にしたものではないとわかった。
それに『どうして人類の魔法体系はこうなったのか』を知ることは、人類を知る鍵になる気がする。
「あたしはいいよー!」
よし、ミィルは平気みたいだな。
「俺もそれで大丈夫」
「そうですか! よかったです。部室がもらえれば、皆さんの目を気にすることなく活動できるようになりますし……」
ああ、ラウナも気にしてくれてたんだ。
教室だと、どうしても話しにくいもんな。
◇ ◇ ◇
「これは受理できませんな、ラウナリース様」
その教官殿はわざとらしく残念そうに言いながら、机の上の部活申請書を指で叩いた。
「何故ですか、キグニス教官!」
椅子に座ったままの教官に机を挟んでラウナが詰め寄る。
「いやぁ、他でもないラウナリース様の御頼みですから私も受理したいのはやまやまなんですがねぇ、平民ふたりと他国の王女が三人だけで部活というのはどうにも」
「そ、そんな……」
「せめて平民よりも貴族の人数を多くしていただきませんとな。例えばそう、ビビム様などはどうですか? 父上のノールルド伯は国王陛下の補佐役ですし、おすすめですよ」
……なんでここでビビム?
あー、思い出した。
この厭味ったらしいしゃべり方をする人は入学試験のときの教官殿だ。
ビビムと同じイメージだからあんまり関わりたくないけど、そうも言ってられないんだよなあ。
こういう人もいるって平等に見ないといけないから。
「それともどうです? 私が顧問になって差し上げましょうか。そうすれば――」
キグニスがいやらしい目つきでラウナとミィルを交互に見た、そのときだった。
「何の騒ぎです?」




