25.水属性魔法実習②
果たして、ミィルが予言したとおりの状況になった。
「それじゃあラウナ、よろしくねー!」
「はい! ミィルさん、よろしくお願いします!」
このときの授業は三人以上の班で水属性魔法を使った作品を作る、というものだった。
「ははは、あいつと班を組もうなどという者はいまい」「それでもミィル嬢と一緒なのは羨ましくはあるが」「本当にそれな」などと言われていたのだが、蓋を開けてみればミィルとラウナリースが俺の班に加わっていた。
ラウナリースは言うまでもなく王賓クラスの中で王太子リードに並ぶトップカーストだ。
なにしろ最重要同盟国の第二王女なのだから、当然と言えば当然。
「ラウナリース様がどうして、あんなネズミの班に……」
「平民なんかより公爵令嬢たるわたくしのほうが……」
「美少女ばかりに囲まれてあんなの絶対にずるい……」
彼女を班に招待しようとしていた生徒たちの誰もが目を剥き、歯噛みしていた。
例によって恨みがましい視線が向けられてくるけど、気にしない気にしない。
「よろしくお願いします、ラウナリース様」
「そんな他人行儀はやめて、アイレンさん。どうぞラウナとお呼びになって」
「えっと、じゃあラウナ。よろしく」
「ええ!」
花のように笑うラウナは、とっても嬉しそうだ。
このやりとりに耳をそばだてていた侯爵家の息子がこの世の終わりのような顔をしている。
リードに至っては、もはや無表情だ。
「班分けは終わったようですので、各々の班は提出する課題に取り掛かってください」
マイザー教官殿が仕切り直しに手を叩くと、それぞれの班が作品づくりに取り掛かった。
課題は水属性魔法のアクアコントロールで何かしらの作品を作ること。
水を自在に操る魔法ではあるけど、緻密で細かいものを創ろうとするのは難しい。
操作が雑だと、すぐに水がバシャッと崩れてしまう。
「なにつくるー?」
「そうですね。お花などはどうでしょうか?」
「あ、いいかも!」
うんうん、女の子同士仲良くやれそうで何よりだ。
水の操作ならミィルの独壇場だし、ここはひとつ見守って――
「アイレン!」
おっ、リードが絡んできた。
狙い通りといえばそうだけど、さっきの様子を見る限りちょっと意外。
「なんでしょう、リード様」
「私の班と勝負しろ」
誰も予想してなかった展開に、教室内がざわめく。
……うん、特に断る理由はないかな。
「わかりました。ルールはどうします?」
確実に勝ちに来るつもりなら生徒からの多数決票とかかな?
それだと、正直勝ち目は薄いけど……。
だけど、リードの出してきた条件は意外なものだった。
「ラウナリース王女の評価が高かった方の勝ちというのはどうだ?」




