24.水属性魔法実習①
「ほええ。それで保留してきちゃったの?」
放課後の帰り道。
俺から事情を聞いたミィルが目をぱちくりさせた。
「うん、まあね。ミィルもいっしょにって話だったから」
「えー、あたしはいいよー。面白そうだし。それともまだ何か不安なことでもあるの?」
「なんか人類裁定のことバレちゃわないかなって」
「へーきでしょー。あたしが竜王族だって言わなきゃバレるわけないってー!」
ミィルがいつもみたく気軽そうに請け負う。
「それに部活って、アイレンのやりたがってた学院らしい生活っていうのじゃないかなー?」
「うっ、それは確かにそうなんだよな……」
「あはは。そっか、だから保留なんだね。アイレンらしー」
きゃっきゃと笑っていたミィルの雰囲気が、少し真面目なものに変わった。
「あたしはむしろ人類裁定としても、やったほうがいいと思うよ」
「それはなんでだ?」
「ラウナと仲良くなったアイレンに、みんながどうするのか……見てみたほうがいいんじゃない?」
「え? でもそれは……」
王賓クラスの中で、俺はただでさえ腫物のように扱われている。
そこにラウナリースが加わったりしたら確実にクラスメイトを刺激することになるだろう。
「それこそ人類の本質みたいなのが見られると思うよ。森を侵す人類の側面みたいなのがさー」
「むむ……」
でも、確かにミィルの言うことも一理ある。
中立的な立場から見ようと事なかれ主義を貫いていたけど……最近は無視されるばっかりだし、リードも突っかかってこなくなった。
これで人類裁定ができているかって言われると、正直微妙かもしれない。
「うーん。いいのかな。怒るだろうなってことをわざとこっちから仕向けるのはおかしくないか?」
「別にわざと怒らせようっていうんじゃないんだよ? ただ単に、ラウナと仲良くするだけ。やっかむのは仕方ないにしても、嫌がらせとかしてくるのは違うよね。なにより人類のいいところばかり見ようとするのは、めーだよ? ちゃんと悪いところも引き出して、きっちり裁定しなきゃ。ねーさまたちもきっとそう言うよ?」
「それもそうか」
人類が自分にとって面白くないことに直面したときに、どんなことをするのか。
即座に滅ぼすべしみたいなのはないにしても、材料のひとつとして揃えておくべきかも……。
「わかった。じゃあ、やるって方向で返事しとくよ」
「やたーっ! 部活部活、ぶっかつ~♪」
俺の返事を聞いたら飛び跳ねて喜び始めた。
……やっぱりミィルがやりたかっただけじゃね?




