13.竜少女ミィル②
「ていうか、ミィルはどうして来たんだ? やっぱリリスルみたく『人類裁定』絡みか?」
「んー? たしかにアイレンを補佐してあげなさいとは言われたけど、正直そっちはついでかなー。一番の理由はね、外の世界がおもしろそうだったから!」
「つまり、俺と似たようなモンか」
それほど意外な答えでもなかった。
ミィルは竜王族の中では一番最初に物心のついた俺と仲良くしてくれた友人でもある。
人間に一切偏見がなくて自分が興味のあるものにまっすぐ向かっていくミィルには、俺も助けられた。
まあ、いろんなところに引っ張りまわされるのは大変だったけど……。
俺が人類裁定で学院に通うって話になったときに、一番いっしょに行きたがっていたのもミィルだ。
粘りに粘って人類裁定は俺ひとりでやれることになったけど、俺とは別口で入ってきちゃったってわけだな。
「それにしても人間が怖いから全部滅ぼしちゃうって、ねーさまたちも極端だよねー」
「え? ああ、うん。まあ、それは俺も思うところはあるけど……」
比較的ではあるけど、ミィルは俺と価値観が近い。
人間そのものとは言わないまでも、物の見方が竜王族らしくないのだ。
個人主義というか、実際に会話してひとりひとりを見極めるみたいなスタンスを貫いている。
だからといって人間に理想を見ているわけじゃないし、竜王族全体の決定に逆らったりするほど人類の肩を持っているわけでもない。
正直言って孤立してしまった俺の話し相手としては、これ以上ないほど理想的な姉だった。
「ミィルが来てくれて、正直少し気が楽になったよ。俺ひとりじゃ荷がかちすぎたみたいだ」
「え、そーなの? やたっ! あたし、ちょっとでもアイレンの役に立てたらなって思ってたんだー!」
心の底から嬉しそうなミィルを見てると胸がホカホカしてくる。
「な、なんて可憐なんだ……!」
「素晴らしい。妾として……いや、正妻として迎えたい……」
打算なんてこれっぽっちもない笑顔に、遠巻きにこっちを見ていた男子の何人かが魅了されていた。
「あちゃー……気をつけろよ。普通の人間の心理防壁は薄いから、愛想振りまき過ぎると大変なことになるぞ」
「それもそーだね。たしかにアイレンが素の人類を見られなくなっちゃうし、気をつけなきゃ!」
竜王族の放つカリスマや美貌は一種の魔法のようなものだ。
俺はきちんと精神修養の訓練を受けてるからへっちゃらだけど、普通の人間には刺激が強すぎる。
王賓クラスだからか、さすがに卒倒する人まではいなかったけど。
下手をすると国際問題になっちゃうからなー。




