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竜に育てられた最強  作者: 原案・監修:すかいふぁーむ 執筆:epina
フルドレクス魔法学会編

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112/117

112.エルテリーゼ救出作戦④

 ガルナドールの巨体がかき消えた瞬間、アイレンの眼前に拳圧が迫っていた。

 パワーもスピードも先ほどまでの比ではない。

 反応できる人間なんて、絶対にいないはずだった。


 だがしかし――


「ぬおおおおっ!!」


 打ち下ろしの拳が床を木っ端微塵に砕く。

 振り抜いた裏拳が壁に人間大の風穴をあける。

 ガルナドールの連撃は轟音とともにフルドレクス城内を揺らし続けた。

 それはつまり、アイレンへの命中打がないことを意味する。 

 

「何故だ! 何故当たらん!?」


 ガルナドールの苛立ちは頂点に達しつつあった。

 無類無敵の自分が、たったひとりの子供に翻弄されている。

 すべての攻撃をアイレンに躱され続け、付け焼き刃のフェイントを仕掛けても見切られてしまう。

 それは最強の肉体を誇りとしているガルナドールにとって受け入れがたい現実だった。


 しかし、頭に疑問符が浮かんでいるのはアイレンも同じだ。


(この人、どうしてまだ動けるんだろう? カウンターは全部急所に当ててるのに……)


 実を言うとアイレンは攻撃を躱すたびに反撃を繰り出していた。

 最初のうちは手加減していたが、効いている様子がない。

 だから今では本気で打ち込んでいるのだが……。


(呼吸も練気も問題ないな。俺が不調ってわけじゃない。むしろ絶好調! どっちかというと対人竜技の効きが良くないような……?)


 アイレンは最も効果的なタイミングで急所に打撃を加えている。

 拳を振り抜いた硬直を狙ったり、姿勢の低くなったタイミングで顎に掌底をぶち当てたり。

 それなのにガルナドールはこれっぽっちも痛痒を感じていないようなのだ。

 普通の人間ならとっくに意識を刈り取れているはずなのに……。


「そういうことなら仕方ない!」


 アイレンが構えを変える。

 呼吸(ブレス)練気(オーラ)咆哮(ハウル)

 ガルナドールの拳を掻い潜って震脚を踏み、必殺の正拳突きを繰り出した。


竜の爪(ドラゴンクロー)!」


 人間の急所、正中線のど真ん中を山をも砕く一撃でもって打ち抜く。

 さすがのガルナドールもたまらず吹っ飛んでいった。

 受け身もとれずに床を何度か跳ねて、ごろごろと転がってから、ようやく止まる。

 アイレンはしばらく待ってみたが、ぴくりとも動かない。

 

「こ、殺しちゃったかな……ラウナのお兄さんなのに」


 竜の爪(ドラゴンクロー)はひとたび放てば、どんな敵も木っ端微塵になること請け合いの技だ。

 さすがのアイレンも人間相手に使ったことはない。

 ガルナドールは五体こそ四散しなかったが、これで生きているようでは人間とは言えないだろう。


(ガルナドール王子なら耐えられるような気がして使ってみたんだけど、失敗だったかな……)


 アイレンの胸に罪悪感がこみあげてきたとき。


「……いいだろう。作戦変更だ」


 ガルナドールがゆらりと立ち上がる。

 アイレンは思わずホッと息を吐いた。


「認めるぜ。力任せの稚拙な技じゃ、お前を倒すことはできんということらしい」

「なんかすいません」

「謝るな。余計にイラつく」


 反射的に謝ったアイレンに毒づきながらもニヤリと笑うガルナドール。


「だが、挑発には乗らん。この肉体の性能に浮かれていたのは事実だからな」


 アイレンは気配の変化に気づいてハッとした。


(あ、まずい。ガルナドールさんは怒ってるときより冷静になったときのほうがヤバそう!)


 どうやらさっきの竜の爪(ドラゴンクロー)がガルナドールの頭を冷やしてしまったらしい。

 アイレンは自分の失敗を反省しつつ、思考を巡らせる。


(それにしても竜の爪(ドラゴンクロー)でもノーダメージだなんて、いよいよもって人間じゃないな。いや、ひょっとして――)

「オレも本気を出そう! 今までやったことはないから、どうなるか知らんがな!!」


 アイレンがひとつの可能性に思い至ったとき、ガルナドールが吠えた。


「ぬおおおっ!」


 ガルナドールの上半身が隆起して、ところどころに突起状の角が生える。

 背中からは白い翼が展開し、ただでさえ巨大だった肉体が数倍に膨れ上がった。


「その姿は……!」

「そうとも……オレは神の肉体を手に入れた! パワーも! スピードも! 先までの比ではないぞ!」


 ガルナドールが得意げに自らの肉体を誇示した。

 全身の肌の色も薄紫色に変わっていて、両目も謎の輝きを帯びている。

 竜王族の言い伝えを思い出したアイレンは、その正体に気づいた。


(対人竜技が通用しなくて当たり前だ……ガルナドール王子は人間じゃない! ()()だ!)

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「お前はサボってばかりいる!」と勇者に追放されたけど、俺のバフ抜きで大丈夫なのかな? ~全部が全部もう遅い。勇者を見限ってついてきた仲間たちは俺の『全自動支援』スキルで世界最強の英雄になれます~
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