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そのガーゴイルは地上でも危険です ~翼を失くした最強ガーゴイルの放浪記~   作者: 大地の怒り
メナルドの街編

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閑話 ベリア2

 魔王ランヌとの戦争が終了して、半月以上が経過した。


 現地でできる大まかな仕事を終えたので、残った戦後処理を部下に任せ、私は一足先にランヌ城のずっと北にある、本拠地のアスタニア城に戻っていた。


 結局、あの出鱈目な戦闘力を持つガーゴイルはまだ発見できていない。

 あれだけの強さを持つ者だ。

 欲を言えば部下に欲しかったのだけど……


 あのガーゴイルが部下に入れば、私はこれまでより自由に動けるようになる。


 この世界では個人の戦力がモノを言う。

 故に、最高戦力である私はこれまであまり自由には動けなかったが、あのガーゴイルが部下に入れば話は変わってくる。



 念のため、もしガーゴイルと遭遇しても、手を出さないように傘下の魔王二人には伝えておいた。


 味方にならなくても敵対は避けたい。


 二人とも『わかりました』と言ってくれたが、訝し気な表情をしていた。

 半信半疑といった様子だった。


 まぁ、あの場にいなかった二人が信じられないのも理解できる。

 あれ(ガーゴイル)はこの目で直接見ないと納得ができない存在だ。


 全力で呪魔法を背中に叩き込んだので翼が再生することはない筈。

 となると、徒歩での移動になるのでそう遠くまでは行ってないと思う。


 もしかしたら山脈を越えて、ファラの街の方まで移動したのかもしれない。


 あの辺りはハイエルフの魔王、クライフが統治している。


 魔王クライフは過去に一度会った事がある。

 穏やかな物腰で、知性を感じ、好感のもてる男だった。


 以前彼を私の派閥に誘ったことがある、断られてしまったが……

 あの頃とは状況が変わってきているのでもう一度誘ってみてもいいかもしれない。


 さて…何はともあれ、三年間に渡る長い戦争も終結。

 まだ細かい後始末は残っているが、とりあえずこれで一段落。


 戻ったら戻ったで仕事はあるのだけど。

 でも一段落、少しくらいは羽を伸ばさせてもらうとしよう。








 そうなるはず……だった。







 異変に気づいたのはアスタニア城に帰ってきた翌日のこと。


 一日の疲れを癒そうと、お風呂に入ろうとした時のことである。

 黒のドレスを脱いで、続き下着を脱ぐと、ある事に気づいた。




「ん?」



 脱いだ下着の中に、銀色の曲線が見えた。

 つまり、その……下の毛が抜けていた。


 私は吸血鬼、体は老化などしない。


 故にその……毛が抜けることなんて、めったにないはずなんだけど。

 もちろん外から強い力で引っ張ったりとかすれば抜けるけど。


 でも……わずか一本。

 そういうこともあるのかもしれない。


 とりあえず見つかったら恥ずかしいので、掃除役のメイドが来る前に燃やして処分しておこう。

 

 



―――――――――――翌日―――――――――――



「んん?」



 昨日同様に、お風呂に入ろうとしたら……

 下着の中で、昨日と同じ光景が確認された。


 今日も同じ場所の毛が抜けていた。

 昨日より一本増えて二本抜けていた。


(偶……然?)


 そういうこともあるの……かな。



 少し疑問に思いながらも、この時の私は危機感を感じてはいなかった。


 抜けたと言ってもたったの二本と……

 自分の身に起きていることを軽く考えていたのだ。



―――――――――三日後―――――――――


 抜けるのが止まらない……


 昨日より抜けた本数が増えた。

 今日は四本確認した。


 睡眠不足? 食生活の乱れ? ストレス?

 否定はできないが、千五百年近く生きてきてこんなことは初めてだ。


(何故?)


 別に四本抜けたってどうってことはないんだけど。


 もしかしたら、体がもっと休めとサインを出しているのかもしれない。

 ガーゴイル戦では、久々に全力を出して闘ったのだ、その時のダメージが残っている可能性もある。

 

 ここ数年特に忙しかったし、じっくりと休養しよう。

 



――――――――――五日後―――――――――――


 

 朝昼夜、規則正しく食べている。

 睡眠もバッチリとっている。


 体は毎日お風呂に入って清潔にしている。

 仕事の量も最近は控えめだ……


 体に負荷がかかる行為は極力減らしている。



 ……なのに。




「なんでぇ?」



……どうして抜けるの?



 普段誰かと一緒にお風呂に入るわけじゃない……だけど。

 無くても社会的に困るわけじゃない……だけど。

 場所が場所だから誰にも気づかれはしない……だけど。


 なんだか少し不安になってきた。

 

 私の体に何がおきているのだろうか。



―――――――――××日後―――――――――――




「…………」



 だめだ、やっぱり抜け毛が止まらない。

 日に日に抜ける本数が増えてきている。


 このままだと、近い内に全部無くなってしまうのではないだろうか?


 そんな恐怖をここ最近感じている。

 できる限りのことはしたけれど、効果がない。



 最早、自分一人で解決できる問題じゃないのかもしれない。

 

 単純な体の異常でないとすると……



 そうなると、まさか……呪い?

 確かにそういう呪いがある……だが。


(いや……まさかそんなはずはないか)


 こんなことをして一体誰に何の得があるというのか。

 仮に呪いだとしても、何故こんなことをしたのか、術者の目的がさっぱりわからない。

 

 何でこんなことになったのか……


 誰かに恨まれるような事でもしただろうか。

 これでもイモータルフォー(死なずの四人)、長く生きてきたし、恨まれる心あたりなら山程ある。


 でも、これは術者の意図が全く読めない。

 私に恥辱を与えるのが目的だとしたら大成功だろうけど。


(なんて地味で酷い嫌がらせ……)

 

 これ以上の悩み事は本当に勘弁して欲しい。

 呪いかどうかは調べてみないとわからないけど。


 城の錬金術師のマーレルに相談してみようか?

 彼女なら何かわかるかもしれない。




「マーレル、少しいい?」

「これはベリア様……いかがなさいましたか」


「えっと、その……」


 中々言葉にすることができない。

 私はマーレルに話そうとするも……躊躇してしまう。



 相談……するの? 


 仮にもイモータルフォー(死なずの四人)と呼ばれ、多くの魔族を統率する立場にいる私が……


『調べてくれ』と。

『最近下の毛が抜けて困っています』と。

 


「…………」


「どうしました? ベリア様」


 眼前には私を心配そうな瞳で見つめてくるマーレル。

 


「……なんでもない。呼び止めて悪かったわ」


(そんなこと……言えるわけがない)


 



 トボトボと城の廊下を歩く。


「ベリア様、前を見ずに歩くと危ないですよ」


 城仕えのメイドとすれ違う。

 いけない、考え事をしていたら視野が狭くなっていた。

 

 壁にぶつかりそうだったようだ。

 


「ベリア様落ちましたよ、拾っておきますね」


「え、あっ、駄目!」


 思わず反射的にメイドに叫んでしまった。


「えっ、ハンカチを拾っては駄目なのでしょうか?」


「…………」


 何をやっているんだろう私は……


(ああ、駄目だ……)


 このままでは取り返しのつかないことになりそうな気がする。

 

 羞恥に耐え、勇気を出してマーレルに聞いてみるべきかもしれない。

  



 もし呪いだとしたら、その時は草の根分けても犯人を探し出してやる。

 


 

すみません、ちょっと設定変更させてもらいます。

ベリアの髪の毛を金色から銀色に。

最近金髪エルフばかりなのでイロイロとかぶりますので


それにしても、我ながらなんつう話を書いてるんだろう。

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