コミカライズ記念短編(魔王と仲直り?)
久しぶりに更新しました。
報告が遅くなりましたが、マンガBANGアプリにて連載中のガーゴイルコミカライズの一巻が5/26に発売しています。
各キャラとても魅力的に描いていただいていますので是非一度見ていただけたら幸いです。
書店などにお立ち寄りの際は是非よろしくお願いします(電子書籍、通販なども取り扱いしています)。
あと、報告だけなのもなんなので短編をば。
ベリアとのパイとパンの呪い騒動後のちょっとした後日談になります。
アルベルトとベリアの陰毛の呪い騒動。
無関係のクライフまで巻き込んだリドムドーラでの一件。
どうにかこうにか決着がついた(なお、解決はしていない、状況は悪化)。
これはアルベルトとベリアが再会した、その数日後の夜の出来事。
魔王コルルの居城であるリドムドーラの城にて。
「……ったく、ようやく解放されたぜ」
まぁ、限定的な休息時間ではあるのだが。
俺はベリアお抱えの錬金術師のマーレルと、パ〇パンの解呪法について研究する日々を送っていた。
出だしから何言っているのかと思うかもしれないが、いまだに俺自身にもよくわかっていないのでよしとする。
呪いの研究といっても俺に詳しいことはわかるわけもなく。
殆どマーレル主導なのだが。
ぶっちゃけ……付き合うの結構面倒くさい。
俺は誰よりも自由を愛する男。
命令をすっぽかして逃げたい気持ちもある。
でも、真面目にやらないとベリアが怒るからな。
言われるがまま、従順に、奴隷のように……まったく、いい人過ぎると損をするってのは本当かもしれない。
そんなことを考えて廊下を歩いていると。
「……お、あれは」
ピンク髪ツインテールの少女を発見。
魔王コルル、サキュバスクイーンでイモータルフォーのべリア配下の魔王の一人だ。
先日、城に侵入した際に俺と一戦交えたのは記憶に新しい。
「よう……コルル」
「っ!」
声を掛けてみると、ビクッと肩を震わせるコルル。
「なぁ、これから晩飯だろ、一緒にしょくど……っ」
話しかけてみるが、コルルは一瞬で姿を消す。
背後を振り向くことすらせず、転移魔法でどこかに飛んでいった。
「ち……またかよ」
ぽつん、と……マイボイスが虚しく空に響いた。
やれやれだ。
ここ数日、コルルの様子はこんな感じである。
俺と一対一の時は顔を合わすと逃亡。
他の誰かがいる時も常にベリアの傍から離れない。
今となってはコルル危害を加えるつもりもないのだが……。
拒絶されるとあまり気分はよくないわけで。
夕食を済ませたあと。
「なぁ……リーゼ」
「なに、アルベルト……急に部屋に呼び出して」
「俺の最近の悩み、聞いてくれないか?」
共に城で過ごす相棒であるハイエルフのリーゼ。
城の一室に呼び出し、コルルのことを相談する。
「なに、またリアさんになにかしたの?」
「いや、今回はベリア関係なくて、なんで俺の方からしたことが前提になってんだよ」
過去の罪はすべて白状したつもりだ。
もう隠しているものは何もない……つもり。
自覚している限りではな。
まぁ過去というのは予想もしないところで襲ってきたりするんだが……。
「つぅかリーゼはベリアのことリアって呼んでんのか?」
「だ、だって……本人がそう呼んでいいっていうから」
「ふぅん」
まぁクライフもベリアと普通に呼んでいるしな。
「ま……なんにせよ、仲が良さそうでなによりですねぇ、よかったですねぇ」
「な、なによ、その含みのある言い方」
「こっちはちょっと面倒だってのに……さ」
「???」
まぁいいや。
変にリーゼを困らせてもしょうがない。
早速、本題に入ることにしよう。
「で、アンタの悩みって何?」
「ああ、薄々……思っていたんだが」
「なに?」
なんだかんだでちゃんと聞いてくれるようだ。
「俺さ、コルルに嫌われているのかもしれない」
「お……驚いたわ」
「そうか」
口を大きく開けるリーゼ。
まあ、無理もない。
俺のように人の心に寄り添える存在だからこそ気づいたのかもしれない。
「う、薄々としか、思っていなかったなんて」
「…………」
あんれま。
「まぁ嫌われているというよりは、すごく怖がっているという感じだけど。でも……仕方ないでしょ」
「そりゃそうだけどな」
戦って、派手に負かして。
その後誘拐しようとしたり、貞操奪おうと襲いかかったり……それを繰り返したり。
まぁ軽いトラウマにもなるか。
「でもアンタ、そこまで人間関係とか気にするほうだっけ?」
「いや……そんなには」
「だよね」
嫌いな奴に嫌いと言われようが、割とどうでもいい。
割り切れるタイプだと思う。
「でも俺、不思議とアイツのこと嫌いじゃねえしな。避けられてるのはいい気がしないんだよ……意外か?」
「ふぅん」
よくわかんねえけど。
逃げてるアイツを見ているとうずき出すんだ。
なんだろ、この気持ち……ストーカーかな?
「できることなら、現状をどうにかしたい。危険人物という誤解を解きたいと思う」
「ご、誤解じゃないから無理だと思うけど」
一々、うるせえ女だな。
話が進まねえじゃねえか。
「そういうわけで、コルルに会いにいこうと思う。今の時間なら自室にいるだろうし、関係修復のために協力してくれ、リーゼ」
「な……なんで私が?」
「だって他に誰もいねえだろ」
俺の提案に戸惑うリーゼ。
同じ魔王で男のクライフだとコルルは警戒するだろう。
上司のベリアはそもそも俺が接触したくない。
「う、う~ん……」
「迷っているってことは、このままじゃよくないと思っているってことだ、行動あるのみだぜ」
「ま、まぁ……わかったわよ」
あまり乗り気な様子じゃないリーゼだったが。
それを若干、無理矢理な感じで部屋まで引っ張っていく。
そんなわけでコルルの部屋へ。
「ところでアンタ、このことリアさんにはちゃんと話したの? さっきいつもの温泉に飛んでいったけど」
「こういう時、男は黙って女を見送るもんさ」
「な、なんか格好いいこと言ってるけどシチュエーション違くない?」
言ったら止められるに決まってるからな。
ここは強引に行く。
「お願いだから、絶対無茶な真似はしないでよ」
「わかっているとも」
渋々といった感じでリーゼがコンコンと部屋をノックすると、中から声が返ってくる。
「誰? ……こんな時間に?」
「え……と、私です」
「この声、マリーちゃん?」
リーゼの声を聴いて、ゆっくりと部屋のドアが開く。
そのままコルルに促され、中に入っていくリーゼ。
なお、俺はコルルに気づかれないよう、完全に気配を消している。
「や、夜分遅くに失礼します」
「どうしたの?」
「ええと、ちょっとお話がありまして、今、大丈夫ですか?」
「まぁ……いいけどさ」
俺はドア越しに聞き耳を立てる。
「それで? 話ってなにかな?」
「そ、その……アルベルトのことなんですが」
「……………………明日でいいかな?」
一気にトーンダウンしたコルルボイス。
「なに、急に? ……も、もしかして、アイツに何か頼まれたの?」
「ええと、その……」
リーゼはあまり嘘が得意ではない。
背後に誰がいるのか、すぐコルルに看破されてしまう。
「その、アルベルトがコルル様と仲良くしたいみたいで」
「うええぇ」
姿を見ずともわかる。
コルルは部屋の中で思いっきり顔を顰めてそうだ。
「というか、マリーちゃん。よく、あんな奴と仲よくできるね」
「慣れ……ですかね」
「慣れたくはないなぁ、そこまでいきたくはないなぁ……というか、マリーちゃんさ、私がアイツに何されたか、知っているよね? 正直関わりたくないんだよね」
「それがその、本人はそうではないようで……」
「嫌だよ私は、本来ならこの城に入れるのも、視界に入れるだって嫌……言えばこじれるから無視しているだけで」
「で、でも……ぼそぼそ」
ここで突然、リーゼが俺に聞こえないように声のボリュームを落とす。
「頑なに拒否し続けると、アイツの場合、強引に突っ込んでくる可能性もありますよ」
「……う、み、妙に説得力がある」
「とりあえず、形だけでもアイツに付き合ってみてはどうです、いっそのこと、表面上だけでもいいので……」
「……」
女同士の内緒の話をしているようだ。
なにやら、中でコルルが葛藤しているようだが……。
「わ……わかったよ、ただし、アイツに決して部屋の中には入らないように伝えて」
「コルル様……ありがとうございますっ!」
話が終わったようで、リーゼがガチャリと扉を開けて出てくる。
「アルベルト、許可が取れたわよ」
「お、本当か! ……さすがだぜ、リーゼ」
「……ただし、そこから話すようにって」
「あ? まぁ……話ができるならいいけどよ」
さて、せっかくできた、コルルと親交を深める機会だ。
何を話そうかな?
「コルル、俺の声が聞こえるか? 聞こえるなら返事をしてくれ」
「……うん」
「いや、うんじゃなくて、聞こえているなら、しっかり聞こえていると言わないとわからないだろうが」
「へ、返事してるんだから……わかるでしょ」
明らかに会話に乗り気じゃないコルル。
だがまぁ……ここからだ。
「リーゼから、話は聞いているな」
「い、いちおう……」
かなり緊張気味のコルルボイス。
まずはこの緊張を解すことから始めよう。
「いいかコルル……俺はな、未知こそが恐怖であると思う」
「な……なんか、ガーゴイルらしくない。急に難しいこと語りだした」
「らしくない、か……だとしたらお前はまだ俺のことをよくわかっていないということだ」
「え……付き合いのある私も普通にらしくないと思うんだけど」
ちょっと黙っててくれるかな、リーゼさん。
話がこじれるので。
「と、とにかくだ。あれだ、俺が言いたいのは何かというと、お前が見た俺は俺の一部に過ぎないということだ……もっと俺は話が通じる相手だということを知ってもらいたくてここにきた」
「い、いや……別に知りたくもないんですが」
「駄目だ! それはよくないぞっ!」
「「うるさっ!」」
興奮した俺の声に、耳を塞ぐリーゼ。
「逃げていてもいいことなどない! わだかまりを失くすため、腹を割って話すことは重要だ。俺とべリアを見るがいい」
こんがらがって、とんでもない事態になってしまっただろう。
「問題が起きてからでは遅い、必要以上に仲良くしようとは言わないが、このままでは大きな災いが降りかかるかもしれない」
「……君という名の?」
「…………」
うわ……本当にめっちゃ警戒されてんな、俺。
ガードかてえ。
「なぁコルル、俺の何が怖いんだ? 戦闘で負けたことを気にしているのか? 勝負は時の運だ。一回の敗戦を必要以上に気にしてどうする? 次戦えば、もしかしたら……ということも……ある、かも? いや……ねぇな」
「どちらにせよ、君みたいな全距離パワー型と……二度と戦いたくないよ」
吐き捨てるようなコルルの声。
「なら、なんだ? ハッキリ言ってくれ、俺がテンプテーションにかかって城でお前に襲い掛かったことがショックだったか?」
「…………」
無回答。
想像するに全部ひっくるめて、総合的にというところか。
「だけどアレはお前にも責任があるだろう? それにもし、結果、ベリアの助けが間に合わずに子供が生まれたとしても、俺は責任をとるつもりだったんだぞ」
「ま……まったく聞きたくないフォローだった」
「子供の名前はアルベルトとコルル……二人の名前を合わせてアルル、いやルが四つあるからルーシーというのもいいな」
きっと可愛い女の子に育つだろう。
「ち、ちなみに興味本位で聞くけど、男だったら?」
「男? ……アルコールでいいよ、めんどくせえ」
「「あ、愛情の差が酷いっ!」」
リーゼとコルルの声がはもる。
世間の荒波に負けずに強く生きていけ。
「つぅか、ああもう……じれってえな」
「アルベルト?」
こんな顔も見えない場所で話してもしょうがねえ。
そもそも会話って、こういうもんじゃねえだろ。
このままだとコルルの気持ちがわかんねえ。
「コルル、埒が明かねえから、入るぞっ!」
「ちょっ!」
「ひっ!」
部屋への突入を制止しようとするリーゼ。
彼女の手をスルーして強引に扉を開ける。
俺の姿を見た途端、あとずさるコルル。
「な、なんで入ってくるんだよっ!」
「こんなんじゃいつまで経ってもお互いのことがわかんねえしな」
「わ、わわわ、わかんなくていいっ! あっちイケっ!」
「そんな心配すんなよ、ビビんなくても、なにもしねえって……」
怯えるコルルに安心するように言う。
よほど焦っているのか。
転移魔法が発動していない。
「俺は本当に何もしない、深呼吸して、まずはちゃんと俺を見ろ、しっかりと俺の姿を目に焼き付け……ん?」
コルルに接近していると。
窓の向こうから強烈な魔力反応、すぐそこには。
「無性に嫌な予感がしたから戻れば……また貴様は」
「うげ、なんでべリアが!」
まさかのタイミングでべリアが飛び込んでくる。
そのままコルルの部屋から強引に引っ張られる俺。
「まったく……ただでさえ大変な時に、余計な手間を増やさないでくれる? 自分の立場、理解してる?」
ため息を吐き、べリアが呟く。
「もちろんだとも、ゆえにコルルと親交を少しでも深めようと……」
「それで、こうなったら何の意味もないだろうっ!」
べリアに睨みつけられる俺。
仲直りをする機会は得られず。
ズルズルとべリアに腕を引っ張られて、強制的に連行されていく俺だった。
かなり勢いで書きました。
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