12話 男の娘
「それにしても、マリー様のために何かいい方法はないでしょうか」
侍女のシャーレが検討を始めました。
なんだかみんな、マリー様の幸せを願う空気になっています。
そうですわねえ。あ、
「そういえば、母の残した資料に『男の娘』という記述がありました」
「それはなんですの?」
「なんでも、男の方が女の子の格好をすることをいうらしいですわ」
「まあ」
聞いていた男性陣が2つに分かれました。
あら?ロドリゲスはジリジリと退がっていくグループですわね。
ほほ〜ん?
「それでしたら、マリー様も鳥肌にならなくてすむかもしれませんね」
妙案だとばかりに、リディアも感心しています。
「試しにロドリゲスにやってもらいますか?」
意趣返しですわよ。私をからかうからです。
「それはいい案ですわ」
シャーレが手を叩いて賛成しました。
「い、いえ、私ははじめて平民として生活なさるリード様の補佐について行きますから。」
かなりの引きつり顔です。
「これから先マリー様の近くでお勤めされる方で、マリー様が大丈夫かを試される方がいいのではないでしょうか」
すごい汗で必死に回避しようとしています。
溜飲が下がりました。もういいですわよ、ふふ。
それにしても
「ロドリゲス、リード様の陣営に来られるのですか?初耳ですわ」
「今決まりましたから」
あ、あらそう。なんか、ごめんなさいね。
ところで、私たち囲まれてません?
フ〜フ〜、ハア、ハア
囲まれてますわよ、何やら鼻息の荒い男性陣に。
「ご命令とあれば仕方ありません」
顔が近いですよ。
「生活がかかってますからね、仕方ありません」
鼻息がかかってますよ。
「ええ、もうそれは仕方ありません」
ってあなたたち、女装したいだけでしょう〜?!
「ま、まあいいのではないかしら」
まさか立候補がいるとは思わなかったです。
「余っているメイド服はありましたかしら」
探して参ります、とリディアがメイド長と連れ立っていきました。
「ありましたよ」
着せてみると
「カーマインとナベリはいいのでなくて?」
違和感ありませんね。美少女です。
ちょこっと内股でって上手すぎませんか。
残りのムキムキたちは…似合いませんわね。
「どうでしょう、マリー様」
「なんて可愛らしいのかしら。ほら、鳥肌も立ちませんわ」
目をキラキラさせてカーマインたちに近づきます。
「これなら旦那さまが目移りすることもありませんものね」
満足そうで、ようございました。
レッセイ様が目移りしたら、それはそれで別の何かが勃発しそうですが。
首を傾げながらムキジーを見上げたマリー様が
「元々、彼らには鳥肌は立っていませんでしたし」
なんておっしゃるからムキジーたち、一瞬で髪が白くなりました。
「彼らは今まで通り男性の姿でかまいません」
って、マリー様。さわやかなイケメンタイプでなければ大丈夫のようですね。
貴族の殿方は、さわやか風の方が多いですものね。
「マリー様、使用人の扱いを決めてしまいましょう」
「そうですわね」
「では、私たちは一旦リード様のところに行って、今後の身の振り方を考えた方がよさそうですね」
話し合いで、それなりに年のいった使用人はマリー様のところに残り、妙齢の使用人はリード様が連れて帰ることになりました。
急に賑やかになりました。
けれど住むところがありませんね。
困りましたね、む〜ん。




