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11話 不憫体質マリー

今日はマリー様に呼ばれて、リード様とお出かけです。


「奥様、奥様はもう使用人ではないのですから、こちらのお召し物にお着替えください。ねえ、リード様」

「そうだな」

先ほどからマリー様のもとより派遣された侍女たちにあれやこれやされています。

でも、あなたたち、ロドリゲスから何か言われてきているでしょう。

奥様、奥様って、言うとき口元がひくついてますわよ!


「奥様はマリー様の呼び方です。私のことは今まで通り名前でお願いしますわ」

「ふふっ、わかりました。おめでとう、シーラ」

抱きしめてお祝いしてくれるのは、長年一緒に働いていたリディアです。

「ありがとう、でいいのかしら」

「そこはありがとうって言ってくれ」

ん、そうでしたわね。リード様そこにいたんでした。


…なんだかごめんなさい。


「お約束通り、無事に整いました」

ロドリゲスが車で迎えにきました。

「詳しいことは、マリー様からお伺いください」


マリー様の別邸に行くのかと思ってましたが、本邸でした。

レッセイ様、マリー様にべったりとくっついてますわね。ええ、べったりと。

仲直りされてよかったです。


「こちらの案は、ナメージコ領の片隅をリード様の管轄として、レッセイ様に収益の一部を上納する形になっております。リード様の身分を商人と言いますか、地主ということにさせていただきました。町民に貸し出している土地代が、収益として得られることになります」

「それでかまわない」

なにやら取り決めがされているようです。口出しは…しない方がよさそうですね。

ロドリゲスが考えたのなら、問題ないのでしょう。

仮にリード様に収入がなかったとしても、質素に生活する分にはなにも問題ありませんものね。

現在暮らしているお屋敷を、そのままいただけるようですし。


「ところで、シーラ」

「はい、奥様」

「わたくし、シーラには感謝してますのよ」

マリー様が頬を染めてはにかんでいらっしゃいます。

かわいらしくなりましたね、マリー様。

「シーラのことがきっかけで、旦那さまがわたくしのことを大事にしてくださるようになりましたの」


え~と、これは惚気なのかしら。

「惚気られてますの?」

リード様に耳打ちします。

「いや、牽制されているんだろう」

なぜに?

「おそらくレッセイが手を出した女全員にやってるぞ、アレ」

え、誰も羨ましいなんて思ってませんわよ。


周りの侍女たち、なぜか一斉に首を縦に振りました。

…みなさま、いつの間に他心通を獲得したのかしら。


「奥様、そんなにもレッセイ様を独り占めされたかったのでしたら、使用人を全員男性にしてしまえばよろしいのに」

まあ、冗談ですけど。


「シーラ、貴女、頭いいですわね」

え、冗談ですけど。

「でも、困ったわ」

「何がでございましょう」

「私、リード様やロドリゲスみたいな男性が近くに来すぎると鳥肌が立ってしまいますの」

ほらって…本当ですわね。

「こんなにくっついても大丈夫な人は旦那様しかいないのです」

マリー様がお可哀想になってきました。

なんですか?その不憫な体質は。

みんなマリー様に暖かい眼差しを送っております。


「わたくしには旦那さまだけなんですわ」

「マリーや」


おおう、ラブシーンがはじまりましたぞ。




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